図書委員さんの恋1
決まって水曜日と木曜日、実話恋愛小説を読んではグスングスンと泣きながら、本を片手に仕事をこなす図書委員がいた。名前は十六夜紗香、高校二年生。
彼女が読んでいる本は決まって片恋だったり、悲恋だったり、身分違いの恋だったり……と涙を誘うような話ばかり。
涙を流しながら、仕事をするものだから水曜日と木曜日に図書室に通っている常連さんは、必ずと言って良い程にポケットティッシュを常備して、図書室にやって来るのだ。
だから、水曜日と木曜日の日に借りていく本は、彼女が泣きながら読んでいる本が借りられて行く事が多いのだ、……男女性別問わずに。
そのため、水曜日と木曜日に図書室に来る人達は、皆と言って良い程にほとんどが顔見知りだ。
だから、彼女の泣き声が聞こえたと同時に、紗香の一番近い席にいる人が彼女にティッシュを渡すのが、水曜日と木曜日の常連さん達の暗黙のルール。
そんなルールが作られているなんて、本を読んでは感動している張本人である彼女は到底気付いてはいないのだが。
グスングスンと涙を流しながら、本片手に手早く図書委員としての仕事を片していき、涙声で図書室にいる生徒に声をかける。
「図書室閉館の時間ですよー、借りたい本があったら早めにお願いします」
と、彼女がそう声をかけると、三分くらいで図書室から生徒達はさっさと立ち去って行った。
紗香は、図書室に来た人数と今日貸し出しをした本の記録をとっていると、
「……すまない、寝落ちをしてしまって貴女の声に気付かなかった。貴女の手を煩わせて申し訳ないのだが、まだ本の貸し出しはしているだろうか? 無理ならまた明日来るが……」
と、半分眠っているような表情をしながら言う生徒に、紗香は嫌な顔一つせず、にこりと微笑んだ後、
「構いませんよ、次回からは気を付けて下さいね。集計が終わる前だったら、貸し出しは出来ますので」
彼女は素早く、生徒の手から貸し出しカードを受け取り、彼が持つ本を貸し出し中設定に切り換えた。
その後、集計した図書室に来た人数の数を書き換え、彼が借りた本も集計に加えた後、眠そうな表情をする男子生徒に紗香は声をかける。
「終わりましたよ」
「ああ、ありがとう」
その男子生徒の強面の顔付きが、柔らかい優しい微笑みに代わった後、彼は紗香の頭をポンポンと数回撫でた後、
「遅くまでご苦労様、気を付けて帰れよ。俺が送れれば良かったのだが、生憎仕事が残っていてな、安全な道を通って帰るのだぞ」
と、男子生徒は片手を上げた後にヒラヒラと、左右に動かしながら図書室から出て行った。
「……優しい人」
紗香は静かにそう呟いた。




