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竜の軌跡  作者: 糸田シエン
都市防衛イベント編
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首都防衛イベント─転生─

 圧倒的な熱量を取り込んだデインイル。その姿は、まさに燃え盛る燃炭のようだ。

 燃炭魔人とは言い得て妙である。奴という存在そのものがその名を現している。


「休んでる場合じゃない、か」

 まだスタミナは不十分だが、ワガママは言ってられない。二本の剣を確りと構え、駆け出すタイミングを計る。

影を往く者(シャドウウォーカー)

 シャドウがスキルを使い陽炎のように姿を消す。

 それを合図に、私は全力で気を練り上げ駆け出した。


 一歩進むごとに温度が上がっていく感覚を無視し、剣を握る手に力を込める。

 鉄でさえも溶けてしまいそうな熱量だが、私の剣は大丈夫だという自身がある。

 この剣はリアちゃんが鍛えた、持ち主と共に成長し続ける剣。たまたま手にした物ではあったが、それでも私の得物はこれ以外にはありえない。

 だからこそ。


「相手がなんであろうと、ただ斬るのみ······!」

 デインイルにその刃を叩き付ける。右腕に防がれたそれは、肌を斬り裂く。さほど深くはないが、デインイルにダメージを与えることが出来る。

「ムゥン!」

 力任せに振るわれる左腕を受け流し、がら空きの胴を斬り裂く。

「三斬華!」

 相手が体制を立て直す前に、流れるように連撃を繰り出す。


「ブレイズ・ボム!」

 デインイルの周囲が爆発した。咄嗟の防御もやや間に合わず、私の体は吹き飛ばされる。

「ぐぅっ······!?」

 ゴロゴロと転がりながらなんとか体制を整える。

 火傷で体中が痛む。腕なんかは燃えているのではと錯覚するほどだ。あの僅かな攻防でこの火傷なのだ。デインイルがどれほどの熱を発しているかは分かるだろう。


 雪はデインイルの発する熱に耐えられないのか、近付けない。

「継続ダメージなんて卑怯······」

 シャドウが一人愚痴る。

 イザヤナギはデインイルと斬り結んでいる。

「拙者の剣が通らぬ!」

 そんな叫びが聞こえるので、状況は芳しくない。それに、デインイルの熱に耐えられないのか、イザヤナギの剣が溶け始めている。

 キノは、何かを必死に考えているようだった。


 焼け爛れた手にポーションを掛ける。激痛が走るが、傷は癒えていく。しかし、これもあまり意味のない行為だろう。また至近距離で斬り結べば、同じように火傷を負う。

 武器や防具はリアちゃんが作った物だからか、熱を持っても変形や燃えたりはしていない。


 キノの魔法が直撃したあと、デインイルへと肉薄する。私を視認したデインイルは、傷を付けた私の剣を警戒しているのか苛烈に攻め立ててきた。

「なんなのだその剣は!? 何故傷を付けられる!? 何故原始的な恐怖を抱かせる!? それにその剣から感じる我らの邪神様と真逆の清い神気はなんだ!?」

「知らないっての、そんなのッ!」

 拳を、蹴りを、タックルを避け、いなし続ける。

 デインイルの力が強くて、受け流しても体が持っていかれる。立て直す前にまたデインイルが攻撃してくる。そんなことを何度繰り返しただろうか。


「ぬぅ、鬱陶しい!」

 攻撃が力任せの大振りになってくる。もし当たればただでは済まない。最悪HPがゼロになるだろう。だが、これでいい。

 古代武芸という流派は、柔の剣と剛の剣両方の極致とも言えるものだ。相手の攻撃は全て柔の剣で受け流し、避ける。カウンターや隙を見ては剛の剣で叩き伏せる。これが基本だ。


 だからこそ、今の状況はありがたいものなのだ。攻撃の軌跡を見切りやすく、また意図的に隙を作らせることも出来る。相手を自らの土俵に引きずり込んだわけだ。

 いつもと変わらない。そう。


 ただ、斬ればいい。


「ぬぅおぉぉぉぉおおおお!」

 降り下ろされる拳をいなす。このまま攻撃を。

「爆ぜろ!」

 地面に当たった拳が爆発を起こし、予想外の爆発に、私の体は宙を舞う。

「まずっ──!?」

「ゼィヤアアアアッ!」

「ガッ······フ!?」

 再び振りかぶって振り下ろされた拳が、私の腹部に直撃し、浮いていた私の体を地面に叩き付けた。


「アサヒ!」

 名前を呼ばれた。それが誰の声なのか判別できない。朧気な視界の中で、HPゲージが消失一歩手前のまま明滅していた。


「グッ、苦戦したが、邪魔者は排除した。ならば後は我が魔法にて焼き尽くしてやる」


 ······焼き尽くす? ナニを?

 そんなものは決まっている。キノ達を、騎士達を、冒険者達を。

 そして、市民達を。


 勝てなくたっていい。死に戻りをするのもいい。イベントで活躍することなんて本当にどうでもいい。だけど。


 誰かが死ぬのは許容出来ない。この世界の人々は、特に。

 私達プレイヤーは死んでも僅かなペナルティで復活できる。だがこの世界の人々はそうはいかない。


 なら私のすることは足掻くことだ。邪神軍の奴等になんて。

「好きに······させる、ものか······!」

 剣を杖代わりにして立ち上がる。何度か崩れ落ちそうになるが、なんとか堪えた。視界も聴覚も、いつの間にか晴れていた。


「······貴様、まだ立つか」

 声色から、驚愕が伺える。

「死んでも、喰らい付く······!」

 真っ直ぐにデインイルを見据える。


 一撃でもいい。あと一度だけ、剣を振るうために力を振り絞る。

 デインイルが地面を蹴って接近してくる。私はそれに合わせて、剣を振るうだけだ。


(······あ)

 だが、私の腕は剣を握る力しか残されていなかった。

 デインイルの拳が地面スレスレから胴に向けて跳ね上がってくる。私はただそれを眺めていた。


「無茶するのね、貴女」

 女性の声が聞こえるのと同時に、デインイルの体が真横に吹き飛んだ。

「一応、間に合ってよかった」

 その女性はが言った。

 デインイルは剣の柄で殴ったようで、剣を納刀した。

 その剣は私の剣よりも確実に業物で、身に纏う部分鎧も見たことのない金属で出来ている。


「誰だ、また邪魔をするのは」

「邪魔だなんて、心外よ。私はこの子に用があっただけ。ただその前に邪魔な炭があったから退かしたわけ」

「なんだと······!?」

 デインイルの発する熱量が上がる。

「それに、弱いものいじめは趣味じゃないもの。せめてあと300はレベルを上げてから出直してきなさい」

 私は絶句した。この女性は一体何者なのだろうか。


「全く、お前よりも強い奴の方が少ないだろうが」

 頭上から降り掛かる声に上を向くと、そこには黒い竜がいた。

 黒い鱗は漆のような光沢を持ち、漆黒とでも言うべき威容を放つ。広げられた翼が羽ばたく度に風が吹き抜ける。その威圧感たるや、まさに空が墜ちてくるようだった。

 そして地面を揺らしながら着地した。

「遅かったわね、クロード」

「お前と一緒にするな、レイ」

 一人と一匹がそんな会話をする。


「さて、アサヒというのはお前で合っているな?」

 クロードと呼ばれた黒竜の言葉に頷いた。

「我らが主である神の竜より預かり物だ」

 私の少し上に、キラキラと光を放つ物が現れる。そしてゆっくりと、キラキラと光を放つ物が落ちてくる。

 私はそれを両手で受け止める。それは一枚の鱗だった。銀色の、神々しい気配のする鱗だ。


 直感的にこれがリアちゃんの、神竜の鱗だということが分かった。

 何故このタイミングで鱗を渡されたのか? 理由は分からないが、これの使い方は理解できた。理屈なんかは必要なく、ただどう使うのかが分かったのだ。


「再臨せよ、朽ち滅びようとする者。闇を祓い光の加護をここに与える。忌むべきモノを無明に還し、黄泉の腕を討ち祓う。廻り廻って在るべき姿へ──神の奇跡を体現せよ! リザレクション!」

 体の傷が癒えていく。HPも気付けは全回復していた。

「これはオマケね」

 レイと呼ばれた女性がウィンクをしながら言った。


「ありがとうございます」

 鱗を胸に抱える。

 この鱗は、リアちゃんが私にくれた転生アイテム。名は使徒の証《竜》だ。一体どんな種族になるのかは想像出来ない。ただ、このアイテムを使えばもう後戻りは出来なくなる。ヒューマンではなくなり、新たな種族になる。

『使徒の証《竜》を使用しますか?』

 というウィンドウに、迷わず『はい』を選んだ。


 あぁ、それでも構わない。けど、このアイテムを私にくれたリアちゃんのためにも、これだけはどうしても誓っておきたい。


「······不敗を。神竜の名に賭けて、私は永遠の不敗をここに誓う!」

 この誓いに意味はない。だが、抱いた鱗から暖かい何かが流れん込んできた気がした。


 目の前に現れる新たなウィンドウ。

『ヒューマンから竜人(ドラゴニュート)《銀竜種》《眷族(使徒)》へと転生しました』


 体が作り替えられる不快感に口角を上げる。

 ここからが。


「第二ラウンドの始まりよ!」

ようやくここまで来たか、という気分。

今回のイベント編が終わればメインストーリーの再開になります。そしてそこからが全体の後半という扱いです。

つまり、まだストーリーは半分しか進んでいなかったということなのさ!ナ,ナンダッテー!?

書ききれるといいですね(爆)



と、いうわけでFGOのイベ頑張ります。え、違う?

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