事件解決
なんかいつもより書いた気がする。
それと、今回はリア視点ではありません。あるプレイヤーの視点となっています。
炎が、水が、光が、雷が、万象が躍り狂う。箱からひっくり返して散らばった宝石達のように。夜空を彩る数多の流星のように。
精霊達の絢爛舞踏。その場にいた全てが魅せられ、囚われる。幻のような光景に、音すら忘れ去られる。
その世界の中心には、一人の女性が佇むのみ。虹の髪を靡かせて、漆のような瞳がこの場を射抜く。
見せ付けるように。思い知らせるように。優雅に、畏怖を覚えさせるように、振る舞う。
人々は知る。自分達は精霊のことをほとんど分かっていなかったと。
人々は理解する。文字通り格が違うと。
故に畏れる。
精霊達の王、シュセナヴィア・リリンフォートに。
*
「さぁ、私の研究発表のために集まってくれてありがとう。これからあなた達が目撃するのは既存の認識を一新させるものだ。私の研究の完成形であり、魔力を生み出す永久機関のようなものだ」
舞台の上で興奮ぎみに話す男は、なおも続ける。
「それは夢物語であった。だが、誰しも夢想したハズだ。普段使う魔石が交換不要だったなら、どれだけ楽だろうと。危険が伴う魔石入手が必要なければ、どれだけの人が助かるだろうと。だが、これからはそんなことは気にしなくてもいい! 私はそれだけのことを成し遂げたのだ!」
だが、男とは裏腹に、ボク達の心は冷めていた。プレイヤーであるボク、ナハトと、クエストのために一時的にパーティーを組んでいるシェラは、なまじ現代知識があるために、永久機関と呼ばれるものには何か大きなデメリットがあるだろうと踏んでいた。
原子力発電所なんかも、それに近いものがあると思う。小コストで高エネルギーが得られる反面、炉心が破損したりすると汚染物質を撒き散らす。
うまい話には裏がある、と言うがまさにそうではないかと思ったわけだ。
「さぁ、ご覧あれ!」
男が箱状のものから布を取る。
「あれ、何もいないじゃない」
シェラはそう言っているが、なまじ精霊視の魔眼をもっているばかりに見えてしまった。あれはさながら牢獄だ。精霊から魔力を奪い取るための。
まったく、反吐が出る。精霊を扱う者として、許せることではない。あれでは奴隷と変わらない。いや、奴隷よりも酷い。
「中にいるのは精霊! 下級の精霊からでも、これだけの魔力が得られるのだ!」
三メートル級の火柱が上がる。
『やれ、あの子を解放しろ!』
仲のいい精霊に命じる。我慢は不可能だった。風の精霊が集まってきて、力を貸してくれる。
「ぐぉお!? なんだこれは、誰だこれは!?」
精霊が囚われていた装置を破壊した。
「精霊はエネルギー源なんかじゃない······!」
シェラの言う通りだ。
舞台の真下へと移動する。
「精霊は各々自我を持つ。精霊魔法を使う場合は精霊の意思を大切にしなければならない。だから、従えさせるのではなく自主的に動いてもらえるようにお願いするのが正しい精霊魔法の使い方だと」
これは以前精霊魔法をよく使うエルフのNPCに直接聞いたことだ。そのエルフも、「空気がキモい」と言って街を出ていってしまった。
「き、貴様ッ! 私の邪魔をするのかぁ!?」
「そんなふざけた研究成果なんてぶち壊してやるんだから!」
「もちつけシェラ。ボクも我慢してるんだから」
「いや、ぶっぱしたくせによく言うよね」
「貴様ら、私を虚仮にする気か! えぇい許さん! 炎よ、槍となりと我が敵を穿て! ファイヤーランス!」
男の魔法がボクに迫る。
『さぁ、君の思うがままに行動するといい』
助け出したばかりの精霊に、魔力を与えながら言う。
ボク達は炎に包まれた。
「は、ふはは! なんだ大したことのない、大人しくしておけば命だけは助けてやったものの!」
悪役みたいな台詞を吐きながら、男は高笑いをしている。見物客達は、男を冷たい目で見ている。
炎が集まる。男の魔法にさらに火力を加えながら巨大な球体となる。大きさは約五メートル。
「な、ななななんだそれは!?」
「これが精霊の力だよ。下級の精霊でも、これだけの力を出してくれるんだ」
上級精霊にもなれば、恐らく淡路島ぐらいは更地に出来るだろう。
炎球が男を掠めて地面に着弾し、破裂する。男はその爆風に煽られて無様に転がった。
「よくやってくれました、渡界人の方」
声だけが響いた。この声は、シュセナヴィア・リリンフォート······?
舞台の上から浮遊したまま降りてきた彼女は、前に会った時と違い髪が虹色に輝いていた。
「私は精霊王。精霊達の主として、ここに宣言します。人間達よ、精霊を蔑ろにするなら私達精霊は赦しません。次は、この街を灰塵と化しますから」
笑顔で脅迫。なんと恐ろしい。
「では、渡界人の方には報酬を与えましょう。では、次は平和に会合することを願っています」
精霊達が活性化する。
数多の色に光輝き、乱舞する。
光が止んだ時には、舞台には誰も残っていなかった。
その後、男は衛兵に捕らわれ、事件は解決した。
*
「いや、なんか凄かったね」
シェラの言葉に同意する。
「報酬確認しない?」
「そうだね」
クエスト完了画面の報酬欄に刻まれていたのは、『精霊魂』。ついでアイテム詳細を見る。
◆◇◆◇
精霊魂
精霊の魂が封じられた宝玉。使うと何かが起こる。レベルが50に達するまで使用不可能。
◆◇◆◇
「精霊魂?」
「あぁ、そっちもか」
シェラも同じアイテムだったようだ。
「私はまだレベル38だから使えないかな」
「ボクは52だから使えるみたい。使ってみよう」
精霊魂を使用する。
ピロリン♪
ウィンドウが開いた。
【種族:精霊種・エルフとなりました】
【スキル:精霊魔法が精霊使役へと変化しました】
【精霊王の加護(小)を与えられました。精霊との信頼度に上昇補正がかかります】
「何が起きたの?」
しばらく放心していたが、シェラの言葉でようやく気が付いた。
「えっと······なんだか、種族が変わったみたい」
「······ハァ!?」
これはまた、物凄い報酬だった。
精霊種・エルフとは
通常のエルフよりも精霊に近い存在である。そのため精霊との親和性も高い。
とまぁ、こんな感じになりました
次は今回の時間に、リアが何をしていたかを書ければいいな、なんて思ってます。
あ、あとナハトはボクっ娘です。




