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竜の軌跡  作者: 糸田シエン
ウイマール公国・公都編
33/81

VRMMORPG

 私の名前は雉野江 麻弥。中学三年生だ。夏休み手前だが、私はもう進学先が決まっている。県内でも有数の進学校で、学校や模試の成績から、試験を免除されているのだ。


 そんな私の横でだらけているのが、幼馴染みの三洞 風子。読みは「ふうこ」ではなく「かざね」である。ゲーム廃人だが、勉強やスポーツでもなんでもこなす天才型だ。ただ、持久力がないため運動には向かない。


「やぁやぁ麻弥さんや」

「風子、ふざけるのは止めてよ」

「いいじゃないか。炭酸飲む?」

「飲まない。久々に学校来たと思ったら、居眠りばっかり」

「いいじゃないか。授業がつまらないんだから。それよりさ、麻弥。何をそんなに落ち込んでいるんだよ」

「……ばれてたか」

「フハハ、何年一緒にいると錯覚していた? いや、錯覚はおかしいな。何年一緒にいると思ってる?」


 幼稚園からだから、もう十年以上か。やはり、親友を誤魔化すことはできないようだ。


「ほら、私には生き別れの兄がいるって話、覚えてる?」

「あぁ、もちろん。いつか会いたいってずっと言ってたもんな」

「でも、もう叶わない」

 それがどこかもどかしくて、もやもやする。


「南鱈 麻人、だったっけ」

「うん……」

 孤児院の出で、最期は同じ孤児院の友人に刺されて死んだという、異父兄。若くして死んだ、見たこともない兄。葬式は、孤児院と仕事の関係者のみで静かに行われたとか。遺骨は孤児院の院長が立てたお墓に入っているらしい。


「で、だ。麻弥、たまには気分転換も必要だと思わないか?」

「それはそうだけど……」

「ほら、この前出たVRMMOの、『Dusk Fantasy Online』。一緒にやろう。今ならβテストからトッププレイヤーであるこのあたしの付きっきりの指導付きだよ?」

「う、うーん……。でも、さ。VR機もソフトもないし……」

「綾乃に相談してみたらどうだ?」


 綾乃、というのは私の妹だ。中学一年にして、ゲーム廃人。ついでに付け加えるなら、プログラミングの天才だ。この前とか、ペンタゴンにハッキングしたとか自慢してきた。……それって犯罪だよね?


「綾乃かぁ……。まぁ、聞いてみるだけなら」

「じゃあ、綾乃が持ってたら、麻弥はDFOをプレイすること。いいね?」

「え、あ、うん」

「よし、言質取ったぞー!」


 騒がしい親友を眺めながら、私は軽くため息をつく。

 そもそも、ゲームなんてほとんどしたことがない。VRだろうがTVだろうが、あまり進んでやろうとしたことはない。そんなことに時間を使うくらいなら、勉強に当てていた。でないと、風子に置いていかれるような気がして。


 ともかく、帰ったら妹の部屋に行かないと。

 私はもう一度、ため息をついた。


 放課後、自宅に帰るとすぐに妹の部屋に向かう。妹はパソコンに向かって、キーボードを叩いていた。


「綾乃」

「うにゃ? なぁにお姉ちゃん?」

「綾乃ってさ、VR機とDFOのソフト、まだ持ってない……よね?」

「待ってました!」


 綾乃は突然立ち上がると、クローゼットを開いて中から箱を取り出した。

「はい、お姉ちゃん。ハードとソフトだよ」

「……え? もしかして、はめられた?」

 まさか、妹と風子が共謀して……?


「わたしが風子ちゃんに頼んだの。お姉ちゃん、最近元気なかったから……」

 う、やっぱり気付いてたか……(本人は気付いていないが、顔に出やすい)。

「でもさ、いつ買ったの?」

「んにゃ、買ってないよ。ゲームのメインプログラムと、ハッキング防止用の防壁の構築をバイトで手伝ったから、その報酬だよ」


 我が妹ながら、驚く。まだ中学生だよね?


「設定とかは予めしてあるからさ、インしてキャラ作るだけだし」

「へぇ……。でもさ、私ゲームとかしないし……」

「そう言うと思って、オススメスキルとかまとめといたよ。プレイスタイルにも関わってくるから、スキル選びとステ振りには気を付けてね」

「作り直しとかは?」

「出来るよ」

「なら一回作ってみる。ダメならもう一回作ればいいだけだし」

「分かった。向こうで待ってるね」


 一旦部屋に戻り、部屋着に着替えてVR機を箱から出し、ソフトを入れ、電源を入れる。VR機をセットし、ベッドに横になると、呟く。幻想に誘う魔法の言葉を。


「ダイブ・スタート!」

麻弥のVRMMO編は、しばらく続きます。どこで区切るかによって、話数は変わってきますが。

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