VRMMORPG
私の名前は雉野江 麻弥。中学三年生だ。夏休み手前だが、私はもう進学先が決まっている。県内でも有数の進学校で、学校や模試の成績から、試験を免除されているのだ。
そんな私の横でだらけているのが、幼馴染みの三洞 風子。読みは「ふうこ」ではなく「かざね」である。ゲーム廃人だが、勉強やスポーツでもなんでもこなす天才型だ。ただ、持久力がないため運動には向かない。
「やぁやぁ麻弥さんや」
「風子、ふざけるのは止めてよ」
「いいじゃないか。炭酸飲む?」
「飲まない。久々に学校来たと思ったら、居眠りばっかり」
「いいじゃないか。授業がつまらないんだから。それよりさ、麻弥。何をそんなに落ち込んでいるんだよ」
「……ばれてたか」
「フハハ、何年一緒にいると錯覚していた? いや、錯覚はおかしいな。何年一緒にいると思ってる?」
幼稚園からだから、もう十年以上か。やはり、親友を誤魔化すことはできないようだ。
「ほら、私には生き別れの兄がいるって話、覚えてる?」
「あぁ、もちろん。いつか会いたいってずっと言ってたもんな」
「でも、もう叶わない」
それがどこかもどかしくて、もやもやする。
「南鱈 麻人、だったっけ」
「うん……」
孤児院の出で、最期は同じ孤児院の友人に刺されて死んだという、異父兄。若くして死んだ、見たこともない兄。葬式は、孤児院と仕事の関係者のみで静かに行われたとか。遺骨は孤児院の院長が立てたお墓に入っているらしい。
「で、だ。麻弥、たまには気分転換も必要だと思わないか?」
「それはそうだけど……」
「ほら、この前出たVRMMOの、『Dusk Fantasy Online』。一緒にやろう。今ならβテストからトッププレイヤーであるこのあたしの付きっきりの指導付きだよ?」
「う、うーん……。でも、さ。VR機もソフトもないし……」
「綾乃に相談してみたらどうだ?」
綾乃、というのは私の妹だ。中学一年にして、ゲーム廃人。ついでに付け加えるなら、プログラミングの天才だ。この前とか、ペンタゴンにハッキングしたとか自慢してきた。……それって犯罪だよね?
「綾乃かぁ……。まぁ、聞いてみるだけなら」
「じゃあ、綾乃が持ってたら、麻弥はDFOをプレイすること。いいね?」
「え、あ、うん」
「よし、言質取ったぞー!」
騒がしい親友を眺めながら、私は軽くため息をつく。
そもそも、ゲームなんてほとんどしたことがない。VRだろうがTVだろうが、あまり進んでやろうとしたことはない。そんなことに時間を使うくらいなら、勉強に当てていた。でないと、風子に置いていかれるような気がして。
ともかく、帰ったら妹の部屋に行かないと。
私はもう一度、ため息をついた。
放課後、自宅に帰るとすぐに妹の部屋に向かう。妹はパソコンに向かって、キーボードを叩いていた。
「綾乃」
「うにゃ? なぁにお姉ちゃん?」
「綾乃ってさ、VR機とDFOのソフト、まだ持ってない……よね?」
「待ってました!」
綾乃は突然立ち上がると、クローゼットを開いて中から箱を取り出した。
「はい、お姉ちゃん。ハードとソフトだよ」
「……え? もしかして、はめられた?」
まさか、妹と風子が共謀して……?
「わたしが風子ちゃんに頼んだの。お姉ちゃん、最近元気なかったから……」
う、やっぱり気付いてたか……(本人は気付いていないが、顔に出やすい)。
「でもさ、いつ買ったの?」
「んにゃ、買ってないよ。ゲームのメインプログラムと、ハッキング防止用の防壁の構築をバイトで手伝ったから、その報酬だよ」
我が妹ながら、驚く。まだ中学生だよね?
「設定とかは予めしてあるからさ、インしてキャラ作るだけだし」
「へぇ……。でもさ、私ゲームとかしないし……」
「そう言うと思って、オススメスキルとかまとめといたよ。プレイスタイルにも関わってくるから、スキル選びとステ振りには気を付けてね」
「作り直しとかは?」
「出来るよ」
「なら一回作ってみる。ダメならもう一回作ればいいだけだし」
「分かった。向こうで待ってるね」
一旦部屋に戻り、部屋着に着替えてVR機を箱から出し、ソフトを入れ、電源を入れる。VR機をセットし、ベッドに横になると、呟く。幻想に誘う魔法の言葉を。
「ダイブ・スタート!」
麻弥のVRMMO編は、しばらく続きます。どこで区切るかによって、話数は変わってきますが。




