プロローグ.2
ウルカヌ霊峰と呼ばれる秘境に、その竜はいた。白銀の鱗に覆われた体に、全てを見通すような黄金の瞳は、神々しさすら感じさせる。
その正面に、一人の女性が浮いていた。服装はいたってシンプルな黒のワンピース。同じく黒い髪は、雑に纏めてあるにも関わらず、その美しさは一切揺るがない。
「よぉ、まだ生きてたのかローザンハビラ」
「残念ながらな。で、なんの用だオリナー」
「いや何、面白い物を拾ってな」
そう言って、オリナーと呼ばれた女性は空間を裂き、中に腕を突っ込んだ。
「えーっと待てよ、確かこの辺りに……あった」
ドヤ顔で取り出したのは、一人の少女だった。見た目から、10には届かない年齢であることは間違いない。
「ただの人間の小娘じゃないか」
「まぁ、よく『その眼』で見てみなって」
ローザンハビラは目を細める。
彼の眼にはいくつかの魔眼が宿っている。その中の一つ、"真実の眼"を使う。この眼には、言葉の真偽を見抜くだけでなく、対象のステータスや潜在能力まで見ることが出来るのだ。
そしてそれによって見えてきたステータスはこれだ。
◆◇◆◇
名前:ーーーー
性別:女
種族:人間
Lv:1
HP:19(SSS)
MP:8(SSS)
Str:4(SSS)
Vit:2(SSS)
Agi:3(SSS)
Int:50(SSS)
Min:13(SSS)
Luc:35
称号
【才能の塊】
【努力の天才】
【転生者】
スキル
・なし
◆◇◆◇
「ほぅ、確かに面白い。だがお前がこの娘を見せに来ただけではあるまい。オリナー、この娘を連れてきた理由はなんだ?」
「……、……お前の後継者にするためだよ、ローザンハビラ。お前ももう歳だ。そのくせ後継者の用意もしない。だから、ただのお節介だよ。少しは神としての自覚を持て」
「その言葉、そっくりそのまま返すぞ」
「うるさい」
「だが、ありがたい」
急に感謝され、むず痒い気分になったオリナーだったが、少女を地面に寝かせると、やがて悲しそうな顔で口を開く。
「なぁ、ローザンハビラ。あとどれぐらい保ちそうだ?」
「ふむ……保ってあと7年といったところか。だが、この娘なら5年で我を越えるだろうな」
「……そうか……」
オリナーは背を向ける。
「じゃあな、ローザンハビラ。今まで楽しかったぜ」
空間が歪み、オリナーの姿が消える。その場所から、一粒の雫が落ちていった。
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