1/81
プロローグ.1
少年は孤児だった。産まれてから数週間で捨てられ、孤児院で育てられた。名前は孤児院の人に付けられた。
両親の残したものは生年月日だけだったが、少年はそれを大切にしていた。自分を捨てた親だったが、それでも何か一つでも残してくれたけとを嬉しく思った。
中学卒業と共に就職し、必死に働いた。それに、恋人も出来た。
給料はほとんど使わず、必要な分以外は全て貯金していた。
現状に不満など一切なかった。
ある日、孤児院にいた親友と再開した。この時互いに19歳。少年は就職と同時に孤児院を出たため、会うのは4年ぶりだった。
それから何度か会い、食事をしたりしていた。
その日は雨だった。
家に帰ろうと歩いていると、背後から刺されたのだ。
しかも、犯人は親友だった。
彼は少年が貴重品や大切な物を持ち歩く習慣を知っていた。つまりは金目当ての犯行だった。
親に捨てられ、親友に裏切られた少年は、薄れ行く意識の中で神に祈った。
ーーーー次はいい人生になりますように。