とある少年の独り言
俺たちの話をしたい。
まあ、くだらないとも思えるかもしれないが、明日にはこの町を発つ俺たちとしてはほんの少しでも話してすっきりさせときたいんだ。
お、聞いてくれんの?
ありがたいや。んじゃ、話すな。
まずな、俺には家族が沢山いる。つっても、血が繋がってんのは二人だけ。母さんと双子の兄貴。
ほかは拾われてきたのが二人もいる。別に孤児院をやってるわけじゃねえんだけど。
ん、父親?
父親は、いない。つっても死に別れたとかじゃなくて、母さんを捨てたんだ。まあ、そんな野郎ならいないほうがましだし、いいんだけど。
父親はどうやらそこそこ良いとこの奴だったらしくて、母さんと一夜の関係を結んでそれっきりみてえ。まあ、詳しくしんないけどな。
でも、母さんの家系が結構な位だったらしくて、未婚の娘が父親の知らない子供を孕んだって、追い出されたみたいだ。
うん?また予想なのかって?
まあ、母さんに聞いても話し反らされるだけだしな。でも、俺たちに礼儀作法とか教えたり、時々家に来て服とか置いて行くおっさんのこと考えたら、まあけっこう妥当なとこだぜ。たぶん。
でな、その来るおっさんが、まあ二人いんだけど。
一人はラスって男だ。そうだな、年恰好は四十か五十ぐらい、か?なんつーか、優しそうだったんだけどよ、腹黒いんだよな。ザ・狸親父っみてーな?まあ、そんな奴。
もう一人は二十代後半ぐらいの男なんだけど、そいつのことはけっこう好きだった。そりゃあ口は悪かったけど、いい奴だったし。母さんとの関係聞いても、父親のこときいてもラスみてえにはぐらかさなかったからな。自分の口からは言えないって、おれたちのことを見ながら言ってくれる人だった。
母さんはすっげえ美人なんだ。それは、胸を晴れる。
あん?お前母親似だろうって?
そうだけど、文句ある?まあ、兄貴の方は父親似で、そこだけは羨ましい。十三にもなって女に間違えられるなんて、どんな冗談だよ。
まあ、そんなこんなで母さんは俺たち四人を女で一つで育ててくれた。
どうやって?
おい、下卑た想像すんなよ。別に普通だよ。母さんは腕っ節も良かったし、酒場で用心棒したり、とっきどき遺跡関係の仕事も請け負ってたみてえだけど。
え?母親に会わせろ?
そりゃあ、無理。別に会わせんのが嫌なんじゃない。
まあ、俺たちが出て行く理由なんだけど。
母さん、昨日死んだんだ。
ほら、昨日大雨で崖崩れがあったろ?あれに巻き込まれて、な。体は泥とか判別もつかなくて、服装とかで判断したんだ。
俺たちの事、引き取ってやるって話もあったんだけど、ガキだけやっていく事にしたんだ。
奴隷にしてやろうって奴がいないわけじゃないしな。
うん?ああ、金な。
母さんが結構貯めといてくれたんだ。それを持っていく。もし無くなっても、昔みたいに旅芸人して稼ぐ気だしな。
お、もう迎えが来たみたいだし行くわ。ん、最後に質問?
何だよ。
どこに行くか?
あー・・・・・前に母さんが父親のことでぽろっと零した事があんだ。そこに行ってみるつもり。
何でかって?
さあ、俺たちにもわかんねえ。
でも、強いて言うなら、けじめをつけるため、かな?
そこで、けじめをつけて、今度こそ、家族だけで生きてくつもり。
・・・・んじゃあな、じいさん。飯とか時々分けてくれてあんがと。だけど、もう俺たち行くは。
また、いつか、けじめがついたら帰ってくる。
それまでは、またいつか。
双子の片方の独り言。まあ、ぱっと見だけで、本心ってわかりませんよね。