ユーマでイチャコラせんせーしょん!
なっぺの一次創作シリーズ!
ま、内容の面白さは保障出来ませんが。
ごくごく普通の、RPGみたいな世界観。しかし、勇者と魔王は戦いません。第一タイトルが(ry
「この作品の続きが見たい!」と思った方は、メッセなり感想なりをお願いいたします。
勇者。
人々から羨望と希望と、他にもいろんなものを託されている存在。
そしてコインに裏表があるように、勇者がいれば勇者が倒すべき存在……則ち、魔王もいる。場合によっては大魔王や大魔神になるかもしれないが、この場合は魔王としておこう。
そしてこの世界、フェアリスにも勇者と魔王がいた。勇者は魔王と戦い、自身やその仲間もろとも異次元に魔王を封印したというのが、伝説によって語り継がれる【勇魔伝説】の顛末だ。
勇魔伝説の記述が正しいのであれば、勇者と魔王との戦いから10000年後。世界はおおむね平和を謳歌している。
魔王によって生み出された生命体、魔物も生態系に組み込まれ、知性ある魔物の中には人間と共存する者も表れていた。
そんな世界の、小さな村にある一つの家。
「…………おはよう、母さん」
「あぁ、起きた? レオ」
レオ、と呼ばれた少年が朝食の席に着く。
「じゃあ、いただきます」
「はい、召し上がれ」
ごくごく普通の家庭の、ごくごく普通の朝食風景。ただ、この家庭にはただ一つだけ、普通ではない点があった。
「レオ、分かっていますね? 今日で貴方も15歳。旅立つ時です」
「……まぁ、そうだね」
母親が切り出した話に、何故だか気まずそうにするレオ。
「さぁ、玄関に武器と防具を用意しておきました。今日から貴方は、勇者となるのです。魔王を屈服させ、私たちを安心させて下さい」
そう、この家に住む家族、"シャーユ家"は過去活躍した勇者の直系。そしてレオは、10000年ぶりに生まれた、シャーユ家の男子なのだ。
しかし、当のレオの表情は曇ったまま。
「……やっぱり、もう少し後でもいいんじゃない?」
そう言いながら、食べ終えた食器を片付け始める。
母親はそんなレオを叱り付けるように話しつづける。
「いけません。この村の皆もいい加減、我慢出来なくなっているのですよ。早く魔王を――」
「わかった! わかったから……。はぁ」
とうとう観念したらしく、ため息をつくレオ。今ここに、勇者レオ・シャーユが誕生したのだった。
玄関にあった、先祖代々伝わる宝剣【エクスカリバー】と、使い古された鉄製のプロテクターを纏うレオ。エクスカリバーはレオの身長ほどもある巨大な剣。故に、動きづらくなるような全身鎧を付けることは無い。
「――って、伝説にあったんだっけ。まぁ、分からなくはないけど……」
正直不安だと思うレオだった。
そして、玄関から足を踏み出す。勇者レオによる、打倒魔王の旅が始まったのだ。
しかし、レオが向かったのは村の出口でもなければ、村長の家でも、よろず屋でも無い。隣にある家である。
その前まできたレオは、大きな声で中にいる人物に声をかける。
「マオーー!! 早く行くよー!」
その瞬間、家の2階から凄まじい音が鳴り始める。やがて、その音は下まで行き、玄関から飛び出してきた。
「レオ君お待たせー!」
現れたのは、レオと同年代らしき少女だ。二つに纏めた美しい金色の髪が、風に靡く。慌てて来たのだろう、洋服のボタンの一部が外れたままになっている。
「マオ、服」
「へ? ……あっ!う〜……。レオ君のえっち」
「いやいや。服ぐらいゆっくり着ればいいのに」
「レオ君を待たせたくなかったのー!」
そんな二人の会話を、村人がほほえましく眺めている。レオとマオの夫婦さながらの会話は、この村の一種の名物になっていた。
やがて服を直し、マオの準備が整う。
「じゃあ、今日は隣町に買い物に行こう。いくつか食材が切れてたんだ」
「うん! 私も買いたいものあるから大丈夫だよ。じゃあ、"99代目魔王"マオ・エボル、勇者レオ君にお付き合い致します!」
「……その勇者、って止めて欲しいなぁ。僕、勇者って柄じゃないし」
「え〜? 大丈夫だよぉ! レオ君はカッコイイから大丈夫! 私が保障します!」
「アハハハ……。ありがとう、マオ。じゃあ行こうか」
そう、何を隠そう、レオが勇者の直系の子孫であるように、マオは魔王の直系の子孫なのだ。
実は勇魔伝説にはこの村だけに伝わる続きがあり、その内容を要約すると……
『死ね勇者!』
『そっちこそ死ね魔王!』
『……っていうやり取りも飽きたのう』
『奇遇だな、俺もだ』
『どうせ時間はあるのだ。せっかく出会ったこの運命。決着付ける前に、一杯やらぬか?』
『おっ、なかなかいいじゃねぇか。やるか』
といった具合に酒盛りになり、気づけば無二の親友になっていたという、あまりにバカバカしい結末だ。この村にしか伝説が伝わっていないのは、この村が勇者と魔王の最終決戦となった場所の近くにあるのと、「こんなバカバカしい結末広められるか」という意地が関係しているとか何とか。
「あ、レオ君見てみてー!」
マオが走って行ったのは、村から少し行った先にある丘。そこからは、雄大な自然が隅々まで広がっていた。
しかしレオはそんなマオには目もくれず、全く違うことを考えていた。
知っての通り、マオはレオに懐いている。それはもう懐いている。
もともと家が隣同士だったことや、先祖の影響で家族ぐるみの付き合いがあったこと、村に同年代の子供があまりいなかったことから、彼らが仲良くなるのは至極当然だと言えよう。
やがてその関係は次第に発達し、マオはレオに恋心を持つようになっていた。
それを知ってか知らずか、周囲の大人たちが二人をくっつけようと様々な画策を始めたのだ。
トイレで鉢合わせ、お風呂で鉢合わせ、寝所で鉢合わせ、etc……。
そしてとうとう二人は15歳。この世界ではもう立派な大人である。酒などの嗜好品はまだまだではあるが、船の料金などはもう大人として扱われる。
つまりは、結婚も出来るということになる。朝、レオの母親が言っていたことはつまりそういうことなのだ。
簡単に言えば、「YOU犯っちゃいなYO!」。酷い大人たちである。
とはいえ、肝心のレオはと言えば――
「ほらマオ、あんまりはしゃぐと転んじゃうぞ」
マオに対する反応は異性というよりも、妹に対するそれに近い。小さい頃から共にいたことと、情報の少ない田舎に住んでいたためか、マオを異性と意識する機会があまり無かったのだ。
丘の上に立つ二人。この丘陵地帯を越えれば、街まではすぐとなっている。
「マオ、ここらへんでちょっと休憩しよう」
「……ねぇレオ君。私ね、大事な話があるの」
急にしおらしい声を出すマオ。レオの頭に、母親の声が過ぎる。
――YOU犯っちゃいなYO!――
「って、それは言われてない!」
「レオ君?」
「あ、あぁゴメンマオ。それで?」
改めて話を聞く体勢に戻るレオ。それに合わせて、マオも気を引き締める。
「ずっと……ずっとずっと前から、思ってたの。だけど、口に出すのが恥ずかしくって。それでね、もう私たち15歳でしょ? だから、言うね?」
マオの頬が桃色に色付き、心なしか呼吸が荒くなったように見える。それはレオに、マオのことを否でも応でも女性として意識させる。
レオの心臓は早鐘を打ち、かっかかっかと体温を上昇させていく。
そして、マオの口が再び開く――
「私……レオ君と、結――」
だがしかし。マオの言葉は掻き消された。二人のいる位置からほど近い位置にある場所から聞こえてきた爆発音と、悲鳴によって。
二人の顔が、"戦士"のそれになる。こんな穏やかな場所で爆発音と悲鳴が立て続けに起こるなど、ただ事ではない。
「いいよね、マオ」
「うん! 私だって、見過ごせないもん」
頷き合った二人は、悲鳴の元へと走り出した。
「だ、誰かぁ……助けてくれぇ……」
魔物が咆哮する。血に染まった眼に理性の光は無く、その叫びからはまるで知性を感じられない。
狼型の魔物、『ウルフ』。そこまで強大な存在ではないのだが、特に訓練をしていない一般人が一人で出会えば、十分な脅威になりうる。
ウルフは何やら不思議な言葉を紡ぎ始める。この世に等しく存在するエネルギー、アニマを使って発動する神秘の力、【源理術】だ。
アニマは流動しながら世界を漂っているが、それだけでは何の効果も持たない。だが、アニマには特定の波動に反応して効果を表すという性質があるのだ。
その波動を起こすための言葉が、『呪文』。呪文を唱えることでアニマに形を与える。それが源理術なのだ。
ウルフが火の源理術、『フレアム』を発動する。フレアムとは小さな火を放つ源理術であり、このレベルの源理術ならばさほど源理術に通じていないような存在でも使用が出来る。このウルフは源理術よりも爪と牙を主として戦う魔物であるために、フレアム自体の威力もたいしたことはない。せいぜい、服が焼けて火傷をするだけだ。
尤も、人間からすれば火傷だけでも重傷は確実。襲われた旅人の命運は尽きたように見えた。
「やぁぁぁぁぁっ!!!」
だがしかし、運命は旅人に味方した。巨大な剣を軽々と振るう剣士が、その剣でウルフのフレアムを弾き飛ばしたのだ。
「きゃー! レオ君カッコイイー!」
旅人の後ろから黄色い声援が飛ぶ。後ろには金色の髪を持つ少女――マオ――が立っていた。
レオはマオの声援に苦笑いをしながらも、エクスカリバーをしっかり握りしめる。
「ウルフか……。油断は出来ないな」
「レオ君なら楽勝だよー! レオ君頑張ってー!」
レオに向かって、ウルフが飛び掛かる。その牙で喉笛を喰いちぎろうというのだろう。だが、レオは大きく開いたウルフの口、その中に向かってエクスカリバーを突き刺す。
レオの身長ほどもある剣だ。突き刺されてしまえば、即死は免れない。ウルフもそれを理解しているのか、エクスカリバーの刃を噛むことで、突きを止める。
「こ……のっ!」
エクスカリバーを振り、ウルフを投げ飛ばす。ウルフは空中で体勢を整えて危なげなく着地する。
「むー、あのウルフめー……。こうなったら私が!」
マオが源理術を使ってレオを援護しようとすると、突然レオが慌てた様子で叫ぶ。
「わぁーっ!? マオ、大丈夫! 大丈夫だから!」
レオがマオの源理術を止めたことには理由がある。
マオは、魔王の血を引いている。魔王は魔物の頂点に君臨している存在であり、源理術の扱いにも優れていたと伝えられている。
だが、どういうわけだかマオは、威力こそ引き継いだものの、制御能力は引き継がなかったらしい。つまるところ、単純な破壊力が強すぎて周りの被害が洒落にならないのだ。具体的に言うなら、火系下級源理術であり、先程ウルフが使った『フレアム』をマオが使うと、辺り一面が焼け野原になる。
「グァウ!」
「おっと。……じゃあ行くよ」
レオがウルフの不意打ちを軽くいなし、再びエクスカリバーの剣先がウルフを捉える。
「彼は何を?」
戦いを見ていた旅人が、静かになったマオに聞く。
「レオ君の、いわゆる必殺技です」
レオの持つエクスカリバーに、空気中のアニマが集まっていく。ウルフもそれを敏感に感じ取っているらしく、なんとか隙を突いて逃げようとしているのだが、今のレオはそれを許さない。
数いる戦士の中でも、勇者だけが使える奥義。アニマを剣に圧縮し、飛躍的に破壊力を増大させる技。
一気に接近し、エクスカリバーを振りかぶる。最早、ウルフに逃げ場は無い。
「喰らえ! ブレイブスラッシュ!!!」
光り輝く刃が、ウルフを両断した。
「いやぁ強いね君。助かったよ」
「いえ、大事にならなくて何よりです」
街道に出た一同は改めて自己紹介をしつつ、隣町に向かっていた。どうやら旅人も同じ場所を目指していたようで、せっかくだからと一緒に行くことにしたのだ。
「でもさっすがレオ君だよね! カッコよかったよ〜! んもぅ〜、大好き!」
「わっ!? や、止めてよマオ! 恥ずかしいでしょ!」
会話が途切れた瞬間にイチャイチャし始めた二人を見て、旅人は思ったという。
リア充爆発しろ、と。
勇者と魔王の子孫が織り成す物語。それはやがて大きく動き出すことになるのだが、それはまだまだ先のお話。
もう結婚しちまえよチクショウ!←
……失礼しました。つい本音が。←
この作品の構想はそこそこ前からしてました。ぶっちゃけ、被りがないか心配だったけど、調べるのめんどいからいいや、と思いまして。よくある(であろう)題材だけに先に言っておきますが、ファンタジーな世界観のテンプレをなぞっている以外に、具体的な原案があるわけではありません。普通にオリジナルです。オリジナリティの無いオリジナル(笑)
大丈夫! この作品で描くのはレオとマオが結婚するまでの軌跡だから!←
ちなみに、名前には一応由来があったり。
レオの場合は、レオ・シャーユ→オレユーシャ→俺勇者といった具合のアナグラム。
マオは、名前はマオ→マオウ→魔王。苗字はLOVE→EVOL。どこぞの童貞パワーで浮くアニメです。
この二人が本格的に(多分)いちゃいちゃしだすのは、連載が始まってから!
この作品は、同時期に更新された一次創作作品の一つです。現在は短編小説ですが、一連の作品の中で連載希望の1番多い作品を連載に移行したいと考えています。
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ではではこの辺で!