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むかしむかしの黒歴史

むかしむかし。今からちょうど7年前ぐらいの話です。

とある北海道の中学校に木下芳恵という女の子がいました。

芳恵ちゃんは、昔からお転婆娘として近所ではちょっとした有名人でした。

ある時は近くの牧場に忍び込んで、牛にまたがりロデオごっこをして怒られてました。

またある時は夜の学校に弟の拓馬と、その友達の隆と三人で侵入して警備員のおじさんと追いかけっこをしたりもしました。

そんな茶目っ気たっぷりで人間台風のような女の子だった芳恵ちゃんは、学校で一番遠出する行事である、修学旅行へと来ていました。

芳恵ちゃんの学校は、中学二年生の時に東北観光と称して、初日は青森で一泊、二日目は秋田で一泊する2泊3日の修学旅行でした。

そしてこの芳恵ちゃんがとある事件を起こした2日目の夜の話をお話したいと思います。


秋田市内で色々とクラス単位で観光をしたり、美味しいものを食べたり、集合写真を撮ったりと、修学旅行らしい修学旅行をしていました。

芳恵ちゃんの学校は、生徒だけのグループで観光することは無いので、主にクラス単位で行動することが多かったのです。

そんな中、自由に動き回れないことに少しフラストレーションが溜まりつつあった芳恵ちゃん。

芳恵ちゃんはこの時期によく見られている、ある病気に掛かってしまっていて、普段よりもちょっと変わった行動をすることが多くなっていました。

時々疼く左目。よく聞こえる幻聴。誰も居ないのに誰かと話している。

普段から変な芳恵ちゃんは絶好調に変人度が急上昇していました。

最近の芳恵ちゃんは、その病気のせいで少し偏った妄想をしてしまうことが多々ありました。

その妄想というのが、自分が少し気になっている男の子に告白されるという妄想でした。自分が好きなら相手も好き。こんな方程式が成り立っていたのです。

そして修学旅行の二日目の夜の出来事です。

芳恵ちゃんは、その意中の男の子からなかなか告白されないことに腹が立ち、監視している先生たちの目を掻い潜ってその男の子の部屋へと侵入しようとしました。

無事に侵入に成功し、静かにドアを開けて静かに閉めます。

ちょうど玄関にあたる場所で息をひそめると、奥から声が聞こえてきました。

どうやら明かりを消した状態で、修学旅行ではお馴染みの夜のお話をしているようです。

内容が気になった芳恵ちゃんは、奥の部屋との間にある襖に耳を付けると、中の会話の盗み聞きを始めました。


「・・・だろ? 俺知ってるんだからなー」

「なんで知ってるんだよー」

「ヘヘヘ。俺言っちゃった」

「マジかよー。もうお前にはぜってー言わねえからな」

「そんなこと言うなよー」

「いいじゃねぇかよー。俺とお前の仲だろ?」


どうやら好きな子の話をしているようです。

この時に話題の中心になっていた男の子が芳恵ちゃんの意中の男の子だったのです。

そして会話は進んでいきます。


「お前もいい加減に告っちまえばいいのに」

「そうそう。どう考えたってあっちもお前のこと好きだって」

「そうなのかなぁ?」

「いけるいける。もし無理だったら俺たちが抱きしめてやるよ」

「男に慰められて嬉しいもんかよ」

「俺、あいつのアドレス知ってるぜ」

「おっ! じゃあ告白タイムだな!」

「バカ! 声がでけーよ!」


まさかの告白タイムへと移行することになり、芳恵ちゃんはポケットに入れていたケータイを取り出してワクワクしていました。

部屋の奥では電話をし始めたようで、静まり返っています。天使がうんぬん。

しかし、いくら待っても芳恵ちゃんのケータイが鳴りません。

すると、部屋の奥で動きがありました。


「あ、もしもし。○○さん?」


電話が繋がったようで、男の子の声が聞こえました。

その時に呼ばれた電話の向こうの子の名前が芳恵ちゃんではありませんでした。

芳恵ちゃんはケータイと襖を交互に見やり、ただボーッとしていました。


「マジで!? あ、ホント? あ、こちらこそよろしくお願いします! うん。また明日! おやすみね!」


どうやら縁談成立したようです。

部屋の奥からは、男の子を褒め称えるルームメイトの声が聞こえてきます。

その声を聞いて芳恵ちゃんは我に返ってきました。

その時、芳恵ちゃんの耳に、聞こえてくるはずもない声が聞こえてきました。


『突撃っ!!』

「了解っ!!」


本能の赴くままとはよく言ったもので、芳恵ちゃんはその声に言われるがままに襖を思い切り開け放ち、その男の子へと突撃を開始しました。

もちろん盗み聞きされていたとは知らない男の子達は、先生が来たのかと思って慌てて布団に潜り込もうとしていました。しかし突入してきたのが、先生よりも危ないハリケーンレディだったのに気づくと、必死に抵抗を始めました。


「この浮気ものっ!」

「やめろよっ! 俺浮気なんてしてねーよ!」

「嘘つき! 私のことは遊びだったのね!」

「遊んだこともねーよっ!」

「コラ! 何やってるの!」


ギャーギャーと騒いでいる声を聞きつけた先生が部屋の中に踏み入って来ました。

暴れている芳恵ちゃんと死ぬ気で抵抗していた男の子は別室へと連れて行かれて、先生に事情を聞かれました。

もちろん芳恵ちゃんが10対0で悪いので、男の子はすぐに無罪で釈放されました。

結局、その日は先生と一緒の部屋で寝ることとなり、芳恵ちゃんの修学旅行は失恋まみれの旅行となりました。



その時の騒ぎは代々継がれていくこととなり、その中学校では修学旅行で告白することがなくなったとか。


そして芳恵はその時の病気にかかっていた期間を『黒歴史』として封印することを心に誓ったのであった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


今回は閑話です。

やりたかっただけです。


次回もお楽しみに!

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