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桜前線が間に合わない

4月1日


拓馬達一同は、芳恵の提案で春らしくお花見をしようとちょっと離れた大きい公園へと向かっていた。

メンバーは拓馬、芳恵、隆、名波、一花の五人である。いつものメンバーに芳恵が加わった五人ですね。


「芳恵」

「はい、隆くん」

「これわざとだよな? 俺たちはこのまま行って雪だらけの桜も咲いてない公園で楽しく弁当を食べないといけないわけじゃないよな? なんか他に考えてるんだよな?」


途中で芳恵がプランを立てたことを知った隆が芳恵に問い詰めていた。


「いやー、まさか北海道に桜前線が追いついてないとは知らなかったんだ。ごめんなちゃい☆」

「貴様・・・。北海道生まれの北海道育ちの人間なら花見はゴールデンウィークにするもんだって知ってるだろ・・・」


隆も言ってますが、北海道は一番桜前線が来るのが遅いため、本州などではこの時期に行われる花見も、北海道では一ヶ月ほど遅い時期に行うのが常識なのです。逆にこの時期に行おうとしても、雪どけの水で地面はグチャグチャ、桜は咲いてないし、寒い、という状態の中で何をしにきたかもわからない花見になってしまう。

ちなみに北海道以外の地域によっては入学式や卒業式に桜が咲き乱れている風景が時々テレビで写っていることもありますが、北海道では代わりに白い雪が舞っていることのほうが多いです。『卒業式は吹雪でした』なんてことはよくあることです。


「まぁまぁ。別にいいじゃん。拓馬のお姉さんだってわざとじゃないんだし、ピクニックだと思って楽しめばいいじゃん」

「お前は昔のこいつを知らないからそんなことが言えるんだって。こいつが中学のころなんか、修学旅行でふぐっ!」

「アハハハ! 隆くーん。ちょっとおしゃべりが過ぎるんじゃないかなぁ?」


隆の口に芳恵のアイアンクローが決まったー!! 頬の内側の肉がくっつきそうになってます。


「いへぇ!はがへ!わがっががは!おういわわいはは!!」(訳:いてぇ!離せ!わかったから!もう言わないから!!)

「え? 日本語ってわかる?」

「はくはー!!」(訳:拓馬ー!!)

「もうそのへんにしておけ。周りに迷惑かかってるからさ」


そう。拓馬達がいるのは、向かっていた公園の最寄り駅の構内なのだ。行き交う人達が何事かとこちらを見ながら通過していっていた。

やっとのことで芳恵の拘束から逃れられた隆が頬を押さえながら言う。


「じゃあどうするんだよ。このまま行ったところで結果は目に見えてるぞ?」

「だからごめんって言ってるじゃん! 隆のケチ!」

「お前のごめんは誠意が感じられないんだよ」

「てへっ☆」

「もう帰れ」

「静かにしなさい! それよりこれからどうするよ」

「このへんで別の場所探すっていったって、ここらへんよくわかんねーしなー」


芳恵が連れていくはずだった公園の近辺は、拓馬達が普段来るような場所ではないために、土地勘というものが全くなかった。


「あ、じゃあ私聞いてみようか?」


名波が手を挙げた。


「聞くって誰に?」

「ウチの人達」

「まぁ・・・聞いてみるしかないか。よし。やってみなさい」

「おっけー」


そう言って、少し離れて電話をしに行く名波。

そんな名波を見て、状況をよくわかっていない芳恵が拓馬に聞きに来る。


「ねぇ。どういうこと?」


その言葉に隣に立っていた一花も耳を傾ける。


「名波の家ってすげーお金持ちなんだよ。で、家政婦とかもいるんだけど、その人たちに聞いてみるってことだと思う」

「名波ちゃんすげーな!」

「黒木さんってお嬢様だったのね・・・」

「名波は隠してるつもりはないみたいだけど、俺と隆も初めて名波の家に行ったときはめっちゃ驚いたもん」


名波の素性に驚いた二人が口を開けてほげーっと名波を見ていると、視線に気づいた名波がこちらを向いてニコッと笑みを返した。

その笑顔に芳恵は心を撃ち抜かれた。

最初に見た段階で若干心を奪われるかどうかの瀬戸際に立っていたのだが、今の笑顔で完全に崖下まで真っ逆さまに落ちていきました。


「私、女の子同士でもイケる気がしてきた」

「人の彼女に手を出すな。この変態が」

「変態と呼ばれてもいい!」

「いや、姉が変態と呼ばれることに俺が耐えられないんだが」


姉弟そろって変態じゃないですか。

そんなことをしていると、名波が電話を終えてこちらに戻ってきた。


「ごめんごめん。でね、さすがにこのへんだとお花見できるような公園は無いってさ」

「ほら見ろ」

「でもお弁当食べれそうな場所はあるみたいだからそこ行こうかと思ってるんだけど・・・いい?」

「「もちろん!」」


変態姉弟が声を張り上げた。


「じゃあそこに向かってレッツゴー!」

「「オー!!」」


元気よく名波について行く変態姉弟の後ろ姿を見ていた隆と一花。


「私、黒木さんといると影薄いのかしら?」

「いや、芳恵の影が濃すぎて、名波のことしか見てないから、委員長が薄く見えるだけだろ」

「前から言おうと思ってたんだけどいい?」

「ん?」

「私、委員長じゃないんだけど」

「・・・え?」

「だから、私は一度も委員長になったことないってば」

「マジでか。名波が自信満々に言ってたからずっと委員長って呼んでた」

「まぁ最近だとあだ名みたいになってきてるからいいんだけどね」

「じゃあこれからも委員長ってことで」

「もうそれでいいわよ」

「じゃ、置いて行かれないうちに行きますか」


駆け足で名波たちの元へと向かう隆と一花であった。



そんなこんなでこのあとお花見(?)を楽しんだ拓馬御一行なのでした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


芳恵は昔はやんちゃでした。

委員長と呼ばれる人の大半は雰囲気ですよね。


次回もお楽しみに!

そして次回は99話!

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