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合いの手と恋愛

春休み。

それは学校の一年間の授業が終了したご褒美ともとれるような期間に存在している、2週間ぐらいの休業期間である。

夏休みや冬休みに比べると、とても短いものではあるが、ゴールデンウィークのような一週間の連休でも喜べるのだから、二週間という連休はすばらしいものである。

木下拓馬は、少し前まではたった二日休みの土日でさえ長いと感じていたが、最近ではいろいろなこと(主に市原一花のこと)があったために、この春休みがとても待ち遠しかった。

初日ということもあって、予定もなく用事もなく部屋でゴロリンチョしていたのだが、なにやら急にリビングが騒がしくなったので原因を探るために起き上がることにした。


「やっほぅい!」

「ユーリーちゃーん!!」

「「感じーるわー!」」


リビングに向かった拓馬は、部屋に入れば良かったと心の底から後悔するまでに時間はかからなかった。多分2秒ぐらい。

リビングでは、家の中なのにペンライトを両手いっぱいに持った我が弟・俊哉と、首にタオルを巻いてはしゃいでいる母親がテレビに向かってキャーキャー言っていた。

どうやら二人が大好きなアイドルのユリが所属しているグループ『ディスカッション』のライブがテレビ放送されているらしかった。春休み特番として、以前に行われたライブをテレビで一挙放送している。

二人はテレビに向かって合いの手を入れたり、ユリへの声援を送ったりと忙しそうで、拓馬の存在には全く気づいてない様子。

拓馬の母親は、以前、拓馬に俊哉と同じくユリのファンであることがバレてしまったので、隠す気が無くなったらしくはっちゃけている。

そんな二人の様子を見ながら冷蔵庫へと向かい、中からお茶を取り出してコップに注ぐ。

同じく部屋から出てきた芳恵が拓馬に話しかけた。


「あれを見て拓馬くんはどう思いますか?」

「どうっていわれても・・・楽しそうだなーって感じ」

「なんか気持ち悪くない?」

「まぁ落ち込んでたりするよりはマシかなぁってぐらいだけどね」

「ふーん」


芳恵にもお茶を渡し、二人で壁にもたれて俊哉と母親の様子を眺めていた。

そのうるささをBGMにして芳恵が拓馬に話しかける。


「そういえばさ。隆の彼女ってどんな子?」

「いきなりなんだよ。邪魔するなよー?」

「バカ。するわけないじゃん。どんな子なのかなーって思っただけよ」

「うーん・・・すごい可愛くてすごい真面目ですごい純粋な黒タイツの似合うお嬢様」

「なにその完璧超人。弱点とかないの?」

「弱点ー? うーん・・・あ、運動が苦手なところかな」

「守ってあげたくなるー的な感じか。ふざけてるわね」

「本人はいたって真面目なだけなんだけどね」


名波がステータスだけを挙げていけば、完璧な人間であることがわかってしまった拓馬。


「じゃあそんな子がいたんなら隆と取り合いにならなかったの?」

「ならんわ。でも俺も恋愛対象として好きにならなかったんだよなー」

「拓馬のタイプは?」

「黒タイツの似合う女子!」

「私は?」


そう言って芳恵は黒タイツを履いている足をクイっと上げて見せる。


「家族は論外!」

「つまらんばい。でもそれならその子って拓馬のタイプのどストライクだったんじゃないの?」

「まぁそうなんだけどさ。なんなんだろうね?」

「私に聞くなよ」

「そういう姉ちゃんはどうなんだよ」

「私は最近落ち着いちゃってダメだわ。もう男がバカな人間にしか見えなくて困っちゃってます」

「しばらくは落ち着いとけよ」

「なんで平々凡々と大学生活を過ごしております」


お茶を飲んでテレビに叫んでいる二人に目を向けていると、どうやらMCの時間になったらしく、俊哉と母親もおとなしくなって休憩時間へと移行していた。


「あ、姉ちゃんに拓馬。二人ともいたの?」

「結構前からね」

「俊哉ってさ。好きな子とか居ないの?」

「ユリちゃん」

「いや、それでもいいんだけどさ、あんただって別にカッコ悪いってわけじゃないんだから、好きな子の一人や二人ぐらい・・・」

「そんなこと言われたってユリちゃんが世界一だからなぁ」

「ほら、隆の彼女とかは?」

「おい、姉ちゃん」

「黒木さんか? あの人は別格だもん。ユリちゃんが世界一なら黒木さんは天下一って感じ」

「ごめん、よくわかんない」

「わかんなくてもいいよ。とりあえずはユリちゃんのことが大好きです」


ユリへの愛をしっかりと告白した俊哉は、またテレビの前に戻り、正座をしてMCを聞いていた。正座待機は基本ですね。

お腹が減ってきたので昼ご飯を作ってしまおうと思い、拓馬が料理をしようと台所に立った。


「はぁ。俊哉にも彼女とか出来ちゃうんだろうかね?」

「いずれ出来るんじゃない?」

「そうだよねー。あ、そういえば拓馬って今は好きな子とかいないの?」

「今は特になし」

「つまんないのー。拓馬だって顔はそれなりなんだからモテるんじゃないの?」

「まぁ告白されたことはあるっちゃあるけど、みんな結局外見ばっかりなんだよな」

「あー私もそんな感じ。『芳恵って顔は可愛いよね』ってよく言われる」

「姉ちゃんと一緒にしないでほしいな」

「なによそれー」

「アハハハ」


料理をしながら話している拓馬とそれを見ているだけの芳恵は、恋愛トークでもりあがっていた。

時々この二人が一緒になると恋愛トークで盛り上がってしまうんです。

そして今回は拓馬がネタ提供をする形になってしまったのです。


「ねぇ今日はなんかおもしろい話無いの?」

「あるある。最近女の子に猛烈アピールされてるんだ」

「マジで? ちょっと詳しく話しなさいよ」


と、一花のことを(さかな)にして楽しそうに話す拓馬と芳恵であった。

そんな会話もテレビの向こうのアイドルに声援を送っている俊哉と母親には届いていない。


木下家は平和である。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


春休みはのんびりとすすんでいきます。


次回もお楽しみに!

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