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天狗の仕業じゃ

一年の学業の終了を意味している終了式。

特に変わったことをするわけでもなく、終業式や始業式と同じように長すぎる校長先生の話を聞くだけの行事である。校長先生も、こーゆー場での話が短いだけでかなりの支持率向上になるのではないか?全国の校長先生はぜひご検討ください。

そんな校長先生の長い長い拷問のような話が終わり、校歌も歌い終わり、終了式が終わって、体育館を出て教室へと向かっていた隆の元に、拓馬がテコテコと小走りで近づいてきた。


「列、崩したら先生のヒステリックが再発するぞ」

「大丈夫。バレないように来たから」

「で、どうした?」

「いや、教室戻ってからでもいいかなーって思ったんだけど、我慢できなくなっちゃってさ」

「なんだよ気持ち悪いな」

「気持ち悪いってなんだよ。まぁ俊哉のことなんだけど、あいつ合格したんだよ」

「おー、アイドルパワーはすげーな」

「そこでお願いがあるんだけどさ。なんだと思う?」

「は? そんなのわかるか」

「実はさ・・・名波に祝福してもらいたいとか言ってるんだよ」

「はぁ? めんどくさいやつだなー」


心底めんどくさいと言ったような表情を作る隆。

拓馬の話によると、みごと受験に合格することが出来た俊哉は、少し天狗になっている様子で、家族からのご褒美をおねだりしていた。

とはいえ、芳恵からはユリの直筆っぽいサイン色紙とDVD、母親からは新しいパソコンをそれぞれもらったのだが、拓馬はそんなものを用意しているわけでもなく、ただ『おめでとー』と言っただけである。

それが原因なのかはわからないが、『拓馬がなにもくれないんなら、黒木さんにお祝いしてもらいたい』とかほざいているのである。


「ってわけで、彼氏である隆に了承というか許可をもらいに来たわけですな」

「許可も何も名波なら速攻でOK出すだろうよ」

「まぁそうなんだけどね。一応だわよ」

「だわよってなんだよ」

「ってわけで、今日ウチ来ない?」




そんなこんなで放課後。

了承を得た名波と一緒に木下家へとやってきた。

そして玄関を開ける。するとそこにはとても上機嫌の俊哉が待ち構えていた。


「黒木さん。いらっしゃいませ」

「い、いらっしゃいました」

「ただいまー」

「うわっ、俊哉キモッ」


俊哉は何故か制服を着ていて、ご丁寧に名波の分だけスリッパを出している。そんな俊哉の絶品のスマイルに隆が文句をつけた。


「あ、俊哉君。合格おめでとう」

「ありがとうございます! 我々の世界ではご褒美です!」

「いや、普通にご褒美だろ」

「いちいち隆はうるさいんだよ。早く拓馬の部屋にでも行ってろよ」

「よしわかった。ほれ、名波も行くぞ」

「いやいやいやいや、黒木さんは置いていきなさい」

「君は何を言っているのかね? 名波を他の男なんかと二人きりにするはずがないだろ」

「忘れてた・・・隆と黒木さんって付き合ってたんだっけ・・・」


苦しそうに言いながら胸を押さえて苦しそうにする俊哉。中二病の名残ですかね。


「あ、そうだ。名波。俊哉の部屋見に行くか?」

「それはいかんっ!」

「そういえば俺も最近俊哉の部屋見てないな」

「だろ? だったらなおさら見てみようぜ」

「だからダメだって! それだけは許されない行為だ! 警察呼びますよ!」

「私も見てみたいなー」


俊哉への名波スマイルが決まったー。こうかはばつぐんだ。

最近の名波は少し隆に似てきたようで少し黒い部分も持ち合わせるようになってきました。それでもまだまだ純白の純情娘です。。

俊哉は名波スマイルに撃ち抜かれて床に倒れたが、すぐに起き上がり名波の手を取ろうと差し伸べた。しかしすぐに隆からのチョップにたたき落とされる。


「もうしかたないなー。黒木さんに言われたらもう断れないし。ちょっとだけだぞ。見るだけだからな」


俊哉は分かっていないようですが、このノリは『押すなよ~』の流れですね。


俊哉を先頭にして部屋まで来ると、俊哉がゴクリと喉を鳴らした。よほど緊張するようです。

そしてドアを開けた。そこにはユリグッズで部屋が埋めつくされていた。


「わー・・・」

「すっご・・・」

「じゃあもう終わりなー」

「俊哉」


感嘆の声を上げた二人を見て、ドアを閉めようとしていた俊哉に拓馬が声をかけた。


「何?」

「どうやってこんなに集めたんだよ」

「「あっ」」


拓馬が言って初めて気づいたようだが、俊哉はまだ中学生である。それで部屋を埋め尽くすようなユリグッズを買い集めるのは、中学生の財力ではとうてい無理である。


「あー・・・拓馬にも言って無かったのか・・・ってことは言わないほうがいのか?」


なにやらブツブツと呟いている俊哉。


「もしかして万引きとかしてるんじゃないだろうな?」

「するわけないじゃん」

「じゃあどうやって集めたんだよ」

「どうだっていいだろ。そんなことより今日はユリちゃんの生放送がネットであるから今日はもうおしまい! さぁ散った散った」

「おい俊哉!」

「ただいまー!」


その時、玄関が開く音がして母親が帰宅してきた。


「俊哉ー! ユリちゃんの放送始まったー? って隆じゃん!」

「母さん?」

「拓馬も! 今日ってもしかして・・・終了式?」


拓馬御一行がいることに驚いた母親はどうにもテンパっていた。そんな母親を見た俊哉が頭をかく。


「ユリちゃんって・・・どういうことだよ」

「母さんのバカ。母さんもユリちゃんのファンなんだよ。本人は隠してるみたいだけどな」

「じゃあもしかしてこのグッズって・・・」

「母さんと俺で集めてんだよ」


『カエルの子はカエル』と言う言葉がありますが、『カエルの親もカエル』ということみたいです。

何も知らなかった拓馬はその場で呆然としていた。

そして木下家の三人が色々しているうちに、俊哉の部屋の中に入り込んた隆と名波は、ちょっとしたアイドル博物館となっている俊哉の部屋でグッズ鑑賞をしながら楽しんでいましたとさ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると大変嬉しく思います。


あっという間に終了式です。

俊哉も合格決まってよかったね!


次回もお楽しみに!

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