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二回目の尾行 2

拓馬と一花のあとを追いかけるように、書店を出た隆と名波。

どうして拓馬が黙っていた?

どうして委員長と?

悶々とする気持ちを押さえながら隆は尾行を続けていた。

今までなんでも腹を割って話してきた仲なのに、ここにきてもたれたことが地味にショックだった。


「隆? 大丈夫?」


心配そうに横から顔色を伺う名波。

ポーカーフェイスには自信があるので、顔には出していないので悟られないと思い誤魔化す。


「大丈夫だ」

「あんまりなら帰ろうか?」

「だから大丈夫だって。ここまで来たら最後まで尾行してやる」


どこか意固地になっている隆であった。

そんな隆を見ていた名波が何かを決意したかのように、ケータイをカバンから取り出してポチポチと操作をし始めた。


「おい」

「・・・・・・」

「拓馬に連絡してるのか?」

「・・・・・・」

「おい。無視すんな」


名波からケータイを奪い取ろうと隆が手を伸ばしたが、名波は両手でケータイを持って迫り来る手をかわす。

そして隆にキッと鋭く視線を向けて言う。


「バカじゃないの?」

「誰がバカだ」

「誰って隆しかいないじゃん。どう考えても隆しかいないじゃん。そんなに気になるなら拓馬に直接聞いてみたらいいじゃん」

「でも拓馬が隠してるんだったら無理に聞く必要は」

「そこがバカだって言ってるのっ。隆はもっと自分から色々聞いてもいいと思うよ」


面と向かった名波にハッキリと言われて、隆は黙る。


「だってそれが友達なんでしょ?」

「・・・そっか」

「そうだよ。隆らしくないよ? いつもの隆だったら『拓馬め。俺に隠し事とはいい度胸だ』とか言って邪魔してそうだもん」

「俺、そんなキャラか?」

「そんなボケいらないよ!」


最近、名波のツッコミスキルが上がってきたように思えますね。

そんな名波の言葉に励まされたのか、いつもの調子に戻りつつある隆が名波のほうを向いて、ありがとなと小さく言う。


「・・・さてと。名波の言葉じゃないけど、腹も減ってきたことだし、そろそろ邪魔しに行くか」

「それでこそ隆だね」

「お前の彼氏は酷いやつだな」

「隆の彼女だってそれを応援してるんだから同罪だよ」


互いに顔を見てフッと小さく笑うと、目の前を歩く拓馬と一花に向けて歩き始めた。

そんなに離れていなかった距離を早歩きで詰めると、そのまま追い越した。

そして二人で同時にクルリと振り返る。

突然目の前に現れた二人の友達に少し驚いた様子の拓馬。


「あれ? 隆? なんでここにいんの?」

「それはこっちのセリフだ」

「こっちのセリフ?」

「お前いつから委員長と付き合ってたんだよ」


隆の言葉に心底嫌そうな顔をする拓馬。それとは反対にニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている一花。


「隆」

「なんだよ」

「俺が市原と付き合ってるように見えるか?」

「すごい見える」

「・・・はぁ。マジでか」


ガックリと肩を落とす拓馬。その横にいた一花が話に割って入る。


「実は相沢君たちには黙ってたんだけど、私と木下君は付き合ってるの! キャー言っちゃった!」

「あることないこと言って盛り上がるなっ!」

「・・・どういうことだ?」

「どうもこうも俺と市原は付き合ってないの!」

「木下君ってば恥ずかしがり屋なんだからー」

「恥ずかしがってねーよ。市原が変なこと言うからややこしくなるんだろうが」

「ちぇっ。もうすこし冗談に付き合ってくれてもいいのになー」


口を尖らせてブーブー言っているハイテンションの一花を放っておいて、拓馬が隆と名波に説明をする。


「別に隠すつもりはなかったんだけど、市原とアドレス交換をしたんだよ。一応友達になりましょう的な事言ったわけだし。で、市原から卒業式の日にメールが来て・・・」



その時のメール再現


『木下君。市原です。今度デートしませんか?』

『嫌です』

『冷たいなぁ。じゃあ今度の土曜日にデートしませんか?』

『じゃあってなんだよ。あんまり変わってないじゃん』

その後同じような『デートしませんか?』のメールが約5通。

『わかったよ! もうデートしてやるから呪いみたいなメールやめろ』

『わーい。やったー! じゃあ今度の土曜日に札幌駅の近くで待ち合わせね』

『了解』




「って感じのやりとりがあって、土曜日は隆も名波もデートだから暇だなーって思って、今日に至るわけなんだけど、市原のやつが寝坊したとかで遅れてきやがったんだよ」

「なかなか眠れなかったんだもん。それで気がついたら寝坊してて・・・」

「そう考えたら俺よく寝れたな」

「私も快眠だった」

「すごい神経の持ち主ね・・・」


快眠宣言をする二人に一花がつっこんだ。恋する乙女は夜も眠れず色々考えてしまうのです。それで寝坊してしまうのならば仕方ない。


「で、なんで隆と名波はここにいるんだ?」

「それは隆がねぇ」

「言ったら別れる」

「じゃあ言えませーん」

「なんなんだよ」


隆のほうをニヤニヤと見ている名波に、不思議そうな顔をする拓馬。


「俺たちこれからどっか食べに行くんだけど、拓馬と委員長も・・・」


隆が誘おうとしたときに、拓馬の隣に立つ一花からものすごい殺気があふれ出たのを感知した。


「いや、やっぱり名波とのデートを邪魔されたくないしお前らは来るな」

「なんでー? 拓馬達も誘ったらいいじゃん」

「バカ。殺されるぞ」

「二人でコソコソなんだよ。言われなくたって邪魔しないから大丈夫だよ。二人の初デートなんだからな」

「そうだ。それでいい。じゃあ委員長と仲良くな」


そう言って手を振って離れると、互いに違う方向へと歩きだした。


「せっかくだから拓馬と委員長も誘えばよかったのにー」

「お前はまだまだ子どもだな。あのまま一緒に行動してたら、俺たち委員長に殺されてたぞ?」

「何言ってるの?」


スッキリした顔の隆とハテナを浮かべる名波は仲良く札幌の街へと消えていった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


いいカップルだ。


次回もお楽しみに!

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