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テスト日和

素晴らしい快晴に恵まれてとてもハッピーになりそうな今日は、年に一回の大イベント『学年末テスト』が行われます。

意気揚々と教科書片手に登校している生徒も見られます。吹雪じゃなくてよかったですね。雪で教科書がべちゃべちゃになるところでした。

友達同士で暗記してきたところを確認しながら問題を出し合っている生徒も見られます。吹雪じゃなくてよかったですね。吹雪だったら会話どころじゃないですもんね。

そんな学年末テストの空気で一杯になっている通学路を拓馬と隆、それに名波の3人で歩いていた。


「はい。次なー。拓馬。井伊直弼が暗殺された事件は?」

「桜田門外の変!」

「はい正解。それは何年? はい名波」

「えーと・・・1860年!」

「はい正解ー」


隆先生による一問一答が歩きながら行われていました。

隆はほとんど暗記しているらしく、教科書も何も見ないで次々と問題を出している。科目ランダム・習った時期ランダムで繰り出されてくる問題に悪戦苦闘しながらも、なんとか食いついていこうと頑張っている拓馬と名波であった。


「つぎー。植物が光合成をすることができるのはなんででしょうか? はい名波」

「葉緑体があるから!」

「それって簡単な問題じゃん! えこひいきだ!」

「先生に文句を言うとは何事かね。ではワイマール憲法は何年? はい名波」

「拓馬じゃないの!? えっと・・・1880年!」

「はい残念ー。正解は1919年でした。はい、おでこ出しなさい」

「世界史は苦手なんだってば・・・いてっ!」


この一問一答には罰ゲームがあって、間違えると隆のデコピンが待っています。隆は名波だろうが拓馬だろうが、自分の指が砕けるまで全力でデコピンをするので、二人はさらに必死になっていた。


「あーいてー。そろそろやめね? 指痛くなってきた」

「私もおでこ痛いー」

「超真っ赤だぞ。隆のデコピン痛いもんな」

「内出血とかしてないといいんだけど」

「おでこが指に負けたら問題だろ。もっとデコを鍛えるんだな」

「鍛え方がわからんがな」


熱くなったおでこをさすりながら拓馬と隆の前を歩く名波が、そういえばと話し始める。


「もうすぐ卒業式だけど、どうする?」

「どうするって・・・何を?」

「何をって・・・あれ? 話さなかったっけ?」

「どーせ隆には言ってて俺だけ聞いてないパターンだろ?」

「いや、今回は俺も何も聞いてない」

「じゃあ言ってなかったのか。うーん、どうしよっかなー」

「だから何をだよ」

「ほら、私が冬休み前にお世話になった先輩いるでしょ? あのままお礼とか何もしてないから、卒業おめでとー!って感じでなんかしたほうがいいかなぁって思って」

「生徒会長はともかく、あのバカ先輩はちょっと嫌いだわー」

「俺はほとんど面識ないから覚えてすら無いかもしれないぞ?」


遠まわしに反対意見を差し出す拓馬と隆。特に面識があるわけでもない先輩にお祝いすると言っても、名前すら曖昧なので無理にする必要は無いと考えている二人でした。

そんな会話をしていると、拓馬と隆の後ろから『ふひっ』っと変な笑い声が聞こえた。

驚いた二人が後ろを見てみると、そこには有紀の姿があった。


「呼んだ?」

「あ、有紀ちゃんおはよー」

「おはよー」

「呼んでないけどな」

「いやいや、私のこと探そうとしてましたよー。だってこの名波ちゃんレーダーに引っかかりましたからねー」


そう言って自分の頭の上を指さす有紀。どうやら見えないアンテナがあるようです。


「有紀ちゃんそんなの付いてたのー?」

「名波ちゃんは知らなかったんだね。実は私サイボーグで名波ちゃんを守るためだけに生きているのさ」

「名波に変なことを吹き込むな。馬鹿だからなんでも信じちまうだろうが」

「それは酷い! そこまで馬鹿じゃありませんー」

「・・・やっぱり付き合ってるんだね」

「「えっ?」」


急に暗くなった有紀に驚いた隆と名波が足を止めてそちらを見る。

ショボーンという文字が見えそうなくらいしょんぼりしている有紀に名波が声をかける。


「付き合ってるけど、それがどうかしたの?」


『こいつ馬鹿ー! ホントに無神経な奴だ!』と拓馬と隆は思った。

有紀の気持ちに全く気づいていない名波はどこまでも純粋だった。

声をかけられた有紀は見るからに落ち込んでいた。


「た、竹中? 名波が悪いことしたな」

「・・・あ、あ、あ・・・相沢君のバカーーーー!!!」


名波に向かって馬鹿なんて言えない有紀は、隆に向かって叫んで学校へと走っていった。

置いて行かれた三人は、呆然と有紀の背中を見送った。


「あっ」

「どうした?」

「私、わかった。もしかして有紀ちゃんって隆の事が好きだったのかなぁ。だとしたら悪いことしちゃったのかなぁ?」 

「よし。今日のテストを頑張りますか」


どこまでも純粋な名波でした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


これで被害者が出揃いました。


次回もお楽しみに!

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