有紀とチョコレート(有紀視点)
今作初の個人視点です。
今日はバレンタイン。恋する乙女の大切な日。
そして私、竹中有紀も恋する乙女の一人として、名波ちゃんにチョコを渡そうと思ってます!
って言っても、いつもあの二人がいるから名波ちゃんに話しかける機会があまりないんだよね。
しかもファンクラブも解散してからは、ますます話しかける機会が減ってるし・・・
だから今回は学校が始まる前、つまり登校してきたところをめがけて渡しに行きます!
今の時間は午前8時。
いつもならまだ登校してきてない時間なんだけど、張り切って30分も早く登校しちゃいました。
いやードキドキしますな。
さっき校門の前で気合も入れたし、栄養ドリンクも飲んできたし、準備オッケー!
あとは教室に入って名波ちゃん来たら速攻で渡すだけ。
少し緊張しながら教室のドアを開ける。
ガラガラ
「・・・・・・」
ガラガラガタン。
・・・あれ、なんで?
おかしいな。私名波ちゃんのこと考えすぎて頭おかしくなってるのかなぁ。
なんか教室の中に名波ちゃんの幻覚が見えた気が・・・いや、まさかね。だって名波ちゃんが来るのはいつも8時30分ぐらいだもん。それに合わせて毎日登校してる私が言うんだから間違いないって。うん。幻覚幻覚。
気を取り直して・・・
ガラガラ
「・・・・・・」
「あ、あれ? 有紀ちゃん? は、早いねー。おはよー」
「お、おはようございます」
やっぱりいたー!!!
なんでなんでだって今日ってただの平日でしょそれなのに早く来るってどういう神経してるのいや私が言える立場じゃないのはわかってるんだけどさそれでも一体なんで名波ちゃんがここにいるの・・・
「有紀ちゃん?」
「あ、名波ちゃんも早いねー。なんかあるの?」
「え、あ、ちょっとね」
ちょっとぉぉぉおおおお????
いや、待てよ? 今日はバレンタインデーだ。もしかして誰かにチョコあげるから早く来たってこと?
だとしたら、私のチョコ渡しづらいなぁ・・・
「有紀ちゃんはなんで早く来たの?」
「なんでって・・・」
頑張れ竹中有紀!!
勇気を出して言っちゃえば、渡せるかもしれないぞ!
「実は名波ちゃんにチョコレートをあげようと思って!」
「え? 私に?」
やっぱり驚いてるよね。だって私の方が驚いてるもん!
こんなにスムーズに事が進むなんて思わなかった。だっていつもならここで木下とか相沢とかが邪魔してくるのに・・・
「有紀ちゃんからもらえるなんて嬉しいなぁ。でも私有紀ちゃんにあげるチョコ持ってきてないんだよね」
「いいのいいの! だって私が勝手に持ってきて渡すだけなんだもん!」
もらってくれるだけで大満足です!
「そ、そう? じゃあもらっちゃおうかな。ありがとね」
その笑顔頂きましたー!!
やばい。鼻血出そう。
「えへへ。女の子同士だけど、こーゆーのってなんか照れるね」
「私名波ちゃんが大好きですっ!!!」
うぉおおおおおお!!!???
私何言ってるんだぁああ!!??
思わず告白しちゃったよぉおお!!??
うわぁ・・・すごいびっくりしてるし・・・
「あ、えと、それって友達としてってことだよね?」
ええい、このままつっこんでやる!
「いや、そのー・・・実は名波ちゃんのことが本気で好きです」
もう後には引けないな。ってゆーか私何してんだ?
「あー・・・そのごめんなさい。でいいのかな? 私好きな人いるし、それに有紀ちゃんは女の子だし」
「もし私が女の子じゃなかったら付き合ってたの!?」
「それでも付き合ってない、かな?」
「そっか・・・」
撃沈しちゃった。
こうなりゃヤケだ! 今まで聞きたかったこと全部聞いてやる!
「じゃあ、その、名波ちゃんの好きな人ってどっちなの?」
「ど、どっちって?」
「相沢君と木下君」
「拓馬と隆は二人とも大切な友達だよ」
「ホントに友達としか思ってないの?」
「うん・・・」
「じゃあもしも二人から迫られたらどうする?」
急に固まったようにうつむく名波ちゃん。もしかして聞いたらいけないことだったのかなぁ。
いや、でもここは聞いておきたい。
「私は・・・」
「お? 誰かいるのか? って黒木さん!? なんでこんな早くに来てるの!?」
クラスの男子が一人入ってきた。
名波ちゃんは適当にはぐらかすと自分の席に座ってしまった。
これじゃもう聞けないや。
でも名波ちゃんってどっちが好きなんだろう?
・・・ってゆーか私振られちゃったなぁ・・・
・・・でもでも! チョコ受け取ってもらったから良しとしよう!
そうだよ。私の名波ちゃんへの思いはこんなもんじゃ砕けないさ!
明日から名波ちゃんのことを見守ろう!
そうだ! ファンクラブも再結成しよう! そして名波ちゃんのことをまた陰ながら見守ることにしよう!
そうと決まれば忙しくなるぞー!!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。
さてはて、物語は加速する!のか?
次回もお楽しみに!