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恵方巻き

先に謝っておきます。

すみませんでした。

今日は節分です。

最近では恵方巻きを食べる習慣が各地にも広まってきて、いろんなところで恵方巻きが売られている。きっとこの時期が一番太巻が売れる日である。

それと同時に節分といえば豆まきである。本州のほうでは大豆を使うらしいが、北海道では落花生を使うのが主流となっています。

そんな毎年行われている節分というこの日に、はしゃいでいる三人の姿があった。


「さすが。完璧だな」

「さすが拓馬! めっちゃ美味しそう!」

「そう言ってもらえると作ってきたかいがあるってもんだな」


拓馬が早起きして作ってきた3本の巨大な恵方巻きを自分の机に並べると、名波と隆が褒め称えた。長さが30センチぐらいあります。

恵方巻きの具といえば、かんぴょう、しいたけ、玉子、キュウリなどが入った巻物だが、前の日に三人でお金を出し合ったためにちょっぴり豪華な内容となっている。

マグロ、イカ、キュウリ、サーモン、いくらが見えています。


「もう筋子をバラのとかめんどくさかったわ」

「あれってバラバラになるのか? 初めて知ったわ」

「え? 筋子っていくらの友達じゃないの?」

「お前ら揃いも揃って何言ってんだ? 筋子といくらって呼び方が違うだけだぞ。バラしたのがいくら、バラしてないのが筋子だ」

「「へぇー」」


筋子は拓馬の母親が一匹丸々買ってきた鮭のお腹の中にあったものを、バラバラにして醤油漬けのいくらに調理する代わりに少しだけ頂戴したので、名波と隆にとってはサプライズ的存在となっている。


「恵方巻きってどっか向いて食べるんでしょ?」

「そうそう。西のほうだっけ?」

「たしか北北東だっけか?」

「今年は東南東よ。毎年方角が変わるんだから、ちゃんとチェックしておいたらいいのに」


拓馬の後ろから聞こえた声に三人が目を向けると、後ろの席に一花がお弁当を広げてこちらを見ていた。

拓馬だけは机の下にある足を見ている。あの日以来、一花は黒タイツを履いてきています。


「さすが委員長だな。物知りー」

「たまたまニュースでやってたから覚えてただけよ」

「市原もこっちで食べるか?」

「もう三人でいっぱいいっぱいじゃないの。私は見ながら食べてるから大丈夫よ」

「って、白米だけの弁当って・・・」

「委員長・・・はっ! まさか!」


隆は気づいた。

『拓馬をオカズに食べているのか』と。

もうバレバレなので隠す気が無いみたいだが、一花は拓馬のことが大好きなのである。拓馬のために黒タイツを履いてきているぐらい好きなのである。そして『拓馬を見ているだけでご飯三杯はイケル!!』な人間なのです。

最近は隠していたので、ちゃんとしたお弁当を持ってきていたのだが、ここ最近は白米をお弁当箱一杯に敷き詰めて持ってきています。


「ほら、早く食べないと時間なくなっちゃうわよ」

「それもそうだな」

「早く食べよー。お腹減ったー」

「えーと・・・東南東って言ったらあっちか。ってマジかよ」


今年の恵方(ラッキーな方角)は、なんと拓馬の後ろの方角、つまり一花の席の方角だったのです。

というよりも、一花が嘘をついて自分の席の方角を教えたんですけどね。さらっと嘘をつくところを見ると恐ろしいクラス委員長です。


「もう、木下君。そんなに私のこと見つめないでよ」

「照れるのはこっちだ。どうせなら足見てたいわ」

「拓馬。食べてる間は無言だからな」

「わかってるよ。まさかこんなことになろうとは・・・」


三人はラップを外して太巻を取り出すと、両手で持って姿勢を正して東南東を向いた。

そして無言ので太巻にかぶりついた。

モグモグ。パシャパシャ。カツカツ。

無言で食べている三人を珍しそうに見ているクラスの人たち。その中の何人かはケータイのカメラだったり、デジカメで三人の様子を撮影している。もちろんその中に有紀も混じっていました。そして自分の目の前で大きな太巻にかぶりついている拓馬を見ながら、二段目の白米に突入した一花はもう大興奮。


「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」


本当に無言で食べています。拓馬だけは目を閉じて精神を集中させながら食べています。

しばらく恵方巻きを食べる音とシャッター音と白米をすくう箸の音だけが聞こえていたが、一番最初に拓馬が食べ終わった。


「よっしゃ食べ終わった!」


目の前の興奮している一花との勝負(?)に勝った拓馬は、一仕事終えたかのような満足感で一杯だった。

その一花は静かに目を伏せ、手を合わせてごちそうさまと呟いた。

少しすると隆も食べ終えて、ごちそうさまと両手を合わせた。


「うまかったな」

「おう。なんたって俺が作ったからな」

「名波は?」


そう言って隣の名波を見ると、残りあと少しの太巻にかぶりついたまま目を閉じてプルプルしていた。

慌てて心配し始める拓馬と隆。


「名波っ? どうした? 喉につまったのか?」

「おい、竹中。説明しろ」

「さっきまで普通に食べてたんだけど、急に動かなくなりました。多分お腹いっぱいになったのかも」

「そうなのか?」


有紀からの説明を聞いた隆が名波に尋ねると、コクコクと頭を縦に振った。


「なんだよ。じゃあ食べるのやめろよな」

「ぷはっ。・・・だって無言で食べきらないといけないって言うから、全部食べないと口から離したらいけないのかと思って」

「それとこれとはまた話が別だろ」

「どうしたのかと思った」

「これ大きすぎるよ。こんなの口に入れるだけで一杯になっちゃうし、飲み込むのも大変なんだからねー」


名波の言葉に思わず下をむいて無言になる拓馬と隆。クラス内の何人かも下を向いている。

男子高校生なんてこんなもんです。

急に静かになった二人に名波が声をかける。


「あれ? どうしたの? ねぇ? 隆? 拓馬?」


もう、名波には恵方巻きを学校で食べさせないようにしようと決めた二人であった。








「恥ずかしがってる木下君も好きだわ」

「やめろ」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とかあれば書いていただけると大興奮します。


一花さんマジ変態。

ちょっとこーゆーネタが苦手な人がいましたら文句言っていただいて構いません。


次回もお楽しみに!

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