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ハッキリキッパリ

「・・・・・・」

「拓馬?」


一花からの猛烈なアプローチを受け始めて、早2日。

拓馬は疲れていた。

一緒に登校している隆の言葉に返事をする気力が無いほど疲れていた。

そんな拓馬を見て、さすがの隆も参っていた。


「はぁ・・・お前考えすぎだ。前はもうちょっと単純なやつだったろ」

「・・・隆にはわかんないんだよ。市原からしてみれば、俺にまとわりついてるだけかもしれないけど。俺からしてみれば、どうでも良いときに何回も声をかけられてるんだぞ? 酷い話だと思わないか?」

「ひどいのはお前の記憶力だけどな」

「うるさい! 隆まで俺の敵になるのかよ!」

「何言ってんだ。俺はいつでもお前の味方だ」

「そっか・・・ごめん」

「だいたい、なんでそんなに疲れるんだよ。普通に挨拶したり話したりしてるだけだろ?」

「そうなんだけどさ。なんかすごい疲れるんだよね」

「最初はあんなに穏やかだったのにな」

「・・・そうだよ」

「は?」

「そうだよ! 俺なんで今まで気づかなかったんだろ! だって今までの俺ってさ、もっとハッキリきっぱり言いたいこと言ってたよな!」


いきなり興奮したように話し始める拓馬。その話を聞いて、隆は少し安堵していた。

マシンガンのように話した拓馬は、ものすごい笑顔で隆に言った。


「俺、今日で終わりにしてくるわ!」







「市原。おはよう」

「えっ? あ、えーと・・・おはよう、木下君」


教室に到着した拓馬は、まっ先に一花の元へと向かった。

いつもなら自分から話しかけても、拓馬が一花のことを覚えていないはずなのに、いきなり話しかけられた一花はとても驚いていました。

それでも驚いていたことを悟られたくないのか、落ち着いてますよーというような声を出す。


「も、もしかして私のこと覚えてくれたの?」

「覚えたというよりも思い出した」

「思い出した?」

「俺さ、市原のこと苦手だわ」

「あんなに仲良く話してくれたのに?」

「仲良く話してたかもしれないけど、すごい疲れた」

「疲れた?」


ところどころで変な表現をする拓馬に首をかしげながら一花は拓馬の話を聞いていた。


「言いたいこと言っちゃうタイプだから言わせてもらうけど、市原ってなんで俺につきまとってくるの?」

「それは仲良くなりたいからで」

「俺と仲良くなりたいなら黒タイツ履いてこい」

「それは無理」

「じゃあこれ以上の努力は無駄だよ。俺、黒タイツ履いてる人以外は興味ないもん。だから市原のことを覚えられないし」


拓馬の記憶力だが、実のところは『興味がある』か『興味がない』のどちらかに分類されています。

拓馬の興味が惹かれるのは、黒タイツを履いている女子なので、それ以外の女子に関しては覚えることができないのです。頭の奥底で黒タイツを履いていない女子の記憶が消されているんでしょう。


「黒木さんはどうなの?」

「名波はいつものように黒タイツ履いてるだろ。とにかくだ。俺は黒タイツを履いていない女子とは仲良くするつもりはない!」


教室の中で声高らかに変態宣言をした拓馬。それを聞いていた教室内の女子達はドン引きしていた。


「だったら私とはもう仲良くしてくれないの?」

「そうだ。だけど黒タイツを履いてきてくれるんなら話は別だ。ってわけで、先生来るから」


言いたいことだけ言って、一花の席から離れて自分の席へと向かう拓馬。

しかし席から離れたのは良かったが、自分の席が一花の前の席なのを思い出して、申し訳なさそうに戻ってきて自分の席へと腰掛ける。

その日、いつもよりも晴れ晴れとした気持ちで一日を過ごした拓馬であった。



しかし翌日。



「木下君!」


拓馬が席に座ってカバンから教科書を出していると、後ろから一花の声が聞こえた。

誰かと思って後ろを振り返る拓馬。


「おぉぉぉおおおおおっ!!」

「ど、どう? 初めて履いたから恥ずかしいんだけど」

「いい! 素晴らしい! 名波の次だけどすごい良い!!」

「あ、ありがとう。そこまで絶賛してくれると私も嬉しいわ。・・・ちょっと複雑だけど」


一花は黒タイツを履いてきたのです。あそこまで言われて凹むのかと思ったら、恋する乙女は強かったらしく、黒タイツを履いて登校してきた。それを朝一番で拓馬に見せてきたのである。


「市原! 写真撮っても良いかっ?」

「良くないわよ!」

「そうか。でも良く似合ってるぞ!!」


とても良い笑顔で言われた一花は、再度拓馬に恋をしてしまいました。

そんな二人の様子を離れたところから見ていた名波と隆は複雑そうな顔をしていた。


「ねぇ隆?」

「やめろ。それ以上は言うな」

「・・・拓馬キモイね」

「だから言うなって。俺も同じこと思ってるんだから」

「拓馬ってあれで幸せなのかな?」

「なんだかんだで最高の形で収まったからいいんじゃねぇの?」


そう。誰の力も借りずに拓馬は3段階のうちの『最高ライン』に達することができたのである。

やったね拓馬。すごいぞ拓馬!!

それでも黒タイツ大好きの変態と化している拓馬は、とても気持ち悪いのであった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると大変喜びます。


拓馬の完全復活です。


次回もお楽しみに!

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