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女性幹部の作戦~ミッションスタート~

こうして一日奴隷として名波に従うことになった隆と拓馬。

そんな事態になっているとは露知らず、『黒木名波ファンクラブ』の女性幹部である竹中有紀(たけなか ゆき)は、例の作戦を実行に移そうとしていた。

作戦の概要はこうだ。


第一段階(ファーストステップ)

名波が一人のところを狙い、幹部である有紀自らが話しかけに行く。

そして名波を有紀の家に招待する。


第二段階(セカンドステップ)

うまく家に連れ込むことができたら自分の性癖を暴露する。

そこでショックを受けるであろう名波に有紀が愛の告白。


第三段階(サードステップ)

同情心から名波は有紀と交際を始める。

しばらくしないうちに有紀が『あの二人苦手だからあんまり関わりたくない』と名波に告げる。


最終段階(ファイナルステップ)

その後名波は有紀のお願いということもあり、二人を避けるようになる。

もともと二人のほうからはあまり近づかないので、名波がからかわれることもない。

そして女同士であるため男が近寄ることもない。さらに名波は笑顔を取り戻し万々歳!


有紀は少し地味な印象を受ける長い黒髪を、うなじ辺りで両側に二つにくくり前に垂らしている。

本体である黒縁のメガネをクイっと持ち上げながら、作戦の概要が書かれた紙を自分の席で読み返して、ニヤニヤとしそうな表情筋を必死で押さえつける有紀。

ファンクラブの会員達も賛同してくれたので、いつもより100倍の勇気を持っていた。

昨日、家に帰ると会長から『やはりあの作戦は危険が大きい』という内容のメールが送られてきたが、今の有紀にはどんな優秀なブレーキもただの『ひのきのぼう』と化していた。

そのぐらい自信がある作戦だった。

先程の作戦概要を見てもらうとわかる通り、この竹中有紀は友達としてではなく、一人の人間として黒木名波を愛している。

同じクラスになってから色々と裏で手を回し、席替えの度に名波の隣になるように工作をしていた。

そんな努力のおかげもあってか、今ではファンクラブの幹部にまで上り詰めてしまった。愛ゆえの結果であった。

そしてついに名波に自分の想いを伝える『オペレーション・リリィ』(命名・有紀)を遂行することが決まった。

少しドキドキしてはいるものの、作戦が失敗する様が思い浮かばない有紀。

いつもよりも少し早起きして鼻パックもしたし、自分なら必ず成功できる。むしろ他の人に成功して欲しくない。


「よーし。朝のホームルーム始めるぞー。席につけー」


そう考えていると、担任の先生がガラガラとドアを開けて入ってきたので、慌てて紙を机の中にしまう。


「有紀ちゃんおはよ」

「お、おはようございます」


笑顔で左隣の席に座る美少女が自分に挨拶をしてくれた。

今日の作戦の成功率が少し上がった気がした。




そして放課後。

ついに約7時間の沈黙を打ち破って、女性幹部竹中有紀が行動を開始する。

一日の授業が終わると隣の席の名波に声をかける。


「ねぇ、名波ちゃん。よかったら今日うちに来ない?」


昨日の夜から自室にある大きな熊の人形を相手に何度も練習していた言葉だ。完璧だった。


「え? 有紀ちゃんち? うーん・・・今日はちょっと用事があるんだよねぇ・・・」

「用事?」


エマージェンシー!エマージェンシー!

まさかの予定有りに内心戸惑う有紀。


「うん。今日はこのあと木下と相沢に色々と奢ってもらうんだ」


ここでも邪魔をしてくる木下・相沢ペア。

少しくじけそうになりながらも、なんとか心の状態を整え直す。

しかしあの二人と用事があったとは考えもしなかったので、言葉が出てこない。嫌な汗が背中を一筋流れた。


「もしかしてあの二人と付き合ってるの?」

「へ?」


やっと声を出したと思ったら変なことを聞いてしまい、頭の中で後悔する有紀。

その質問に名波はキョトンとしている。


「おい、黒木。人を待たせておいて自分はおしゃべりか」

「うるさいわね。今日は私がメインなんだから私に合わせなさいよ」


教室の後ろから歩いてきた隆が名波に声をかける。その隣に拓馬の姿はない。


「あれ? 木下は?」

「あいつはトイレに走っていった」


そんな会話を聞きながら有紀は頭の中で作戦の練り直しをしていた。


「行くんならさっさと行くぞ」

「今有紀ちゃんと話してるんだから待っててよ」

「じゃあ竹中も連れていくか?」


まさかの隆からのお誘いに、作戦の練り直しをしていた有紀が顔を上げる。

願ったり叶ったりの大チャンスである。これならまだ作戦成功はありえる。

そう考えた有紀は、できるだけ嬉しそうにしないように注意しながら言う。


「・・・私も行っていいの?」

「まぁ黒木がいいならだけどな」

「あんたと違って心が狭くないのよ。じゃあ有紀ちゃんも行こっか」


笑顔で誘う名波。その顔に一瞬だけ固まる有紀。トイレから戻ってきて一人増えたことに驚きながらも、その相手が黒タイツを履いていたので即座にOKをする拓馬。

そして誰にも気づかれないようにニヤリと口角を上げる隆であった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると前転して喜びます。


ついにやってきた女性幹部の一世一代をかけたこの作戦!

果たして結末はいかに!

そして隆の謎の笑みの理由とは?


というわけで次回もお楽しみに!

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