ついにバレた
「隆ー。年明ける前にボード行かね?」
「滑り収めか。いいな」
今日は拓馬の家に隆が遊びに来ました。居間にあるスーパーファミコンで遊んでます。
拓馬の部屋にテレビが無いので、ゲームをするときは居間のテレビを使ってます。
現在、母親は仕事、姉はバイト、弟は冬期講習でそれぞれ家を出ていて、家には拓馬と隆だけしかいません。
「じゃあいつ行く? って言ってもあと3日しかないけど」
「もう明日でいいんじゃね?」
「だな。大掃除とかすんの?」
「うちはお年玉稼ぎに希と望が頑張るから俺はやらない。どうせ金額変わらないし」
相沢家の『大掃除の頑張りでお年玉の金額が変動するシステム』の仕組みを知ってしまった隆は、高校に進学してからの大掃除は自分の部屋の中だけしかしていない。
「へー。なら俺ん家の大掃除手伝ってくれよ」
「何が悲しくて人の家の大掃除手伝わないといけねぇんだよ」
木下家は母親が休みの日に掃除してくれてはいるが、大掃除となると誰もしようとしない。
なので大掃除とまではいかないものの、小掃除と称していつもやらないようなところの掃除を拓馬がやったりする予定だ。
「隆のケチー。ん? ケータイ鳴ってるぞ」
背後のテーブルに置いてある隆のケータイがブーブーと音を立てていた。
「ケータイ? なんだろ? おつかいか? ・・・名波だ」
「名波?」
「・・・お前のほうにもメールしたみたいだぞ」
「へ? あ、そういえば部屋に置きっぱなしだった」
自分の部屋に置いてあるケータイを確認しに行った拓馬を見送ると、隆は名波からのメール内容を確認した。
『件名:拓馬から返信来ない 本文:ひまー』
「件名より本文が短いとは何事か」
思わずツッコミしてしまうどうでもいい内容のメールに簡単に返信した。
『件名:なし 本文:寝てろ』
送り終えると同時に拓馬が居間に戻ってきた。
「名波が暇だってよ」
「同じような内容のメールだったんだな。あのかまってちゃんめ」
「どうする? 呼ぶか?」
「任せるよ。俺はもう『寝てろ』って返信したから。それにここは拓馬の家だしな」
「じゃあ呼ぶか」
『件名:照れ屋の隆より 本文:暇だったら拓馬くんの家に来てもいいわよ』
もちろんメールの内容は隆には見せません。
そんなわけで名波が拓馬の家に来ることになりました。
「今日は~明日の~準備期間~♪」
今年最後の冬期講習が終わり、いつもよりもご機嫌な俊哉が、ヘッドホンから流れてくるユリの所属するアイドルグループ『ディスカッション』の新曲『明日の準備』を口ずさみながら下校していた。
これだけ気分が良いと、何か良いことがありそうな気がしていた。
そして美少女は唐突に現れた。
『うおっ! なんだあの子! 超カワイイ!』
自宅であるマンションの入口まで来ると、エントランス内に可愛い女の子が立っていた。
ダウンを着込んでショートパンツから出ている黒タイツの足。高校生だとは思うが、可愛い子は雰囲気も可愛い。何を着ていても可愛いというやつだ。
マンションの中に入るには、入口の数字で暗証番号を入力するか、部屋番号を押してインターホンを鳴らし部屋の人間に開けてもらう必要がある。
俊哉は横目でその子を見ながら、通り過ぎると暗証番号を入力してマンション内へと入った。
その直後に美少女が番号を押してインターホンを鳴らしていた。
「あ、私ー。来たよー」
そう言うとすぐにロックが外れる音がしてマンション内に入ってくる。
『うわぁ。声も超カワイイし。もしかしたらユリちゃんと同じくらいかも』
自分が崇拝しているユリと今さっき会った美少女を頭の中で比べた。
リアルで見た分だけ美少女の方が上を行っている気がしたが、すれ違っただけの関係だということを思い出し、脳内天秤で下がっていたユリのことを下から押し上げて強引に上にした。
そんなことを考えながら上に行くためのエレベーターに乗り込み、我が家がある4階を押す。
「あー! 待ってー!」
扉が閉まる直前で声が聞こえてきたので、条件反射で開閉ボタンの『開』を押して扉を開ける。
するとさっきの美少女がエレベーター内に駆け込んできた。そして顔を上げてこちらを見ると、とても爽やかな笑顔を見せた。
「ありがと」
その瞬間、俊哉の心の中で銃声が鳴り響いた。
『ヤッベー! これはヤバイ! ユリちゃん超えたわ! 完全に超えたわ!』
今の動作一つで崇拝すべきユリ超えを確信した俊哉は思わずボーッとしてしまい、彼女を見つめてしまった。
「ん? 大丈夫?」
なかなか返事をしない俊哉を不思議に思ったのか、美少女が聞いてきたので、それに極めて冷静を装って返事をした。
「あ、いえ。何階ですか?」
「4階お願いします」
自分と同じ階に用があるということでそのまま扉を閉める。
この狭い空間を一緒に共有出来ている喜びを味わった。
幸せな時間ほど早くすぎてしまうもので、あっという間に4階に到着した。
『開』ボタンを押して彼女を先に出す。その時にも笑顔で会釈をされた。また銃声が鳴った。
そして彼女のあとを追うように自分の家の玄関へと向かう。
『ん? あの子もこっちなのか? でもこっちってもう俺の家しか・・・』
美少女は俊哉の家の前に立つと、インターホンを鳴らした。
すると待っていたかのように玄関が開き、中から兄である拓馬が出てきた。
「やっほー」
「おう。よく来たな。まぁ上がれよ」
「お邪魔しまーす」
「って拓馬っ!!」
思わず大声をあげると、美少女の肩越しに拓馬の驚いた顔と『あ、やべっ』という顔を足して2で割ったような顔が見えた。
そして俊哉は驚愕半分嬉しさ半分という、非常に微妙な表情をしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。
俊哉回です。
果たしてどうなることやら。
次回もお楽しみに!