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お一人様一個まで

拓馬がスーパーに着くと、夕食の買出しに来た奥様達であふれかえっていた。夕方のタイムセールを狙ってきた奥様が大半である。

その中に混じって、拓馬も入口にあるカゴを手に取り買い物を始める。

カートを使うと、ついつい買いすぎてしまうので、カゴを手に持って店内を練り歩く。

母親からのメモを見ながら次々と商品をカゴに入れていく。

ひき肉、玉ねぎ、パン粉・・・

材料を見るからに、今日の夜はハンバーグを作れということらしい。

そして夜ごはんとは関係ないものも書いている。


「あれ? 拓馬?」


ふいに声をかけられて声がした方を見ると、そこには相沢家の母親と双子の(のぞみ)(のぞむ)がいた。


「こんばんわー」

「こんばんわ。拓馬も買い物?」

「うん。ハンバーグの材料買いに来たんだ」


ハンバーグという単語を聞いた希が過剰反応を示す。


「お母さん! うちもハンバーグがいい!」

「そうねぇ。じゃあハンバーグにしようか」

「わーい! ハンバーグッ! ハンバーグッ!」


希は望の手を引いて、精肉コーナーへと駆け出していった。


「拓馬はまだなんか買うの?」

「あとはラップと洗剤かな」

「あ、ラップならお一人様一個で安かったわよ」

「え、お一人様一個なの!? 参ったなぁ・・・」

「どうかしたの?」

「実はラップ二個買ってこいって言われてるんだよねぇ」


拓馬の母親は買うときに一気に買って、買いだめをしておくのだ。今回はラップのストックが切れてしまい、チラシを見て特売なのを知って二個買うようにメモに書いていたのだが、『お一人様一個まで』の文字を見逃していたようだった。


「あらま。じゃあうちの子どっちか貸そうか?」


そう言って、拓馬は懸命にひき肉選びをしている双子に目を向けた。

そして拓馬は考える。どちらを選ぶのがいいのか。

実際はどちらを選んでも対して変わらないのだが、なんとなく選んでみた。

明るく元気な希か、それとも大人しい望か。

考えたのはいいが本当にどちらでも良くなってきて、結局は気分で決めた。


「希。洗剤買うからちょっと付き合え」

「えー。なんで私なのさー」

「ハンバーグになったのは誰のおかげだと思ってるんだ」

「わかったよー。じゃあ望くん。行ってくるね」

「いってらっしゃい。変なことされたら大声で叫ぶんだよ」

「何もしねーよ」


希が望にしばしの別れを告げると、軽いくちづけを交わして手を振って別れた。

希がパーティに加わった。


「よし。あとはラップと洗剤だな」

「拓馬って、なんで買い物してるの?」

「なんでって・・・誰も買い物行けないからな」

「ふーん。偉いねー」

「別に普通だろ。そういや隆は?」

「タカ兄は家で本読んでた」

「ホント引きこもるの好きだよなー」

「ホントだよねー。タカ兄も一緒に来ればお菓子買ってもらえたのにー」


どうやら希が買い物に付いてきたのは、お菓子を買ってもらえるからだったらしい。

多分望は、希に付いてきただけだろう。


「隆は食べたいお菓子があれば自分で買うからな。高校生は親に買ってもらわなくても自分で買えるんだよ」

「うわー。高校生ズルイな」

「これが大人の財力なのだよ」


そんなことを話しながら、目的の洗剤とラップとハンバーグの材料を購入し、相沢母と望と待ち合わせをしている場所へと向かう。

すでに買い物を済ませていたみたいで、先に到着していた。


「おまたせー。いやー、助かりましたわ」

「望くん、ただいまー!」

「希ちゃん、おかえりー」


双子は熱い抱擁を交わしている。


「うちの子なんかが役に立つならいつでも貸すわよ」

「いや自分ちの子どもをなんだと思ってるんだよ」

「もちろんスーパーの人員確保するためだけの存在よ?」

「酷い母親だな」


そんな軽口を言ってから、スーパーで相沢一家と別れて家へと戻った。


「ただいまー」

「ん。おかえりー」


玄関を開けると、居間で俊哉がせんべいを食べながらテレビを見ていた。


「あれ? 勉強は?」

「拓馬まで母さんみたいなこと言うなよ。さっきやめたところだって。今日は朝からずっと勉強してたんだから、夜くらいは休憩させてくれよ」

「そっか。じゃあ息抜きにハンバーグでも作るか?」

「それは拓馬の仕事だろ。俺の仕事は受験勉強なの」

「俺も一応高校生なんだけどな」

「そういやなんでハンバーグなの?」

「母さんから託されたメモの材料見ると、ハンバーグっぽかったからさ」

「でも仕事行く前に『今日の夜はメンチカツよ!』って言ってたぞ?」

「そっちか! もう、母さんもメニューぐらい書いていけよなー」

「もう逆にハンバーグでいいんじゃね? ハンバーグって聞いたらハンバーグ食べたくなってきたわ」


母親からメンチカツ、俊哉からはハンバーグ。

それぞれの意見を聞いた上で、拓馬は自分も話してるうちにハンバーグが食べたくなってきたのでハンバーグを作り始めた。


その後、母親が帰宅して、拓馬が作ったハンバーグを見て『メンチカツの気分だったのにー』と文句を行っていたのはまた別の話である。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


欲しいものがお一人様一個までとかで、レジが混んでると萎えます。


次回もお楽しみに!

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