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終業式とラブレター

今年最後の登校日。

終業式も終わり、あとは帰るだけだった。

明日からの休みに備えて、友達と打ち合わせをしている生徒もいて、全員が明日から始まる冬休みを楽しみに待ち望んでいた。

その中で一人浮かない顔をしている人間がいた。

美少女の名波である。

そんな名波の後ろ姿を自分たちの席から見ていた拓馬と隆がヒソヒソ話を始める。


「なぁ。黒木、変じゃね?」

「たしかに変だな。またストーカーか?」

「まさか。よし行ってみるか」


二人は席を立ち、名波の元へと歩き出す。

真後ろまで来たところで、名波が何か紙のようなものを読んでいるのに気づく二人。そっと後ろからのぞき込んでみる。


『黒木名波様 話したいことがあるので放課後西階段の水飲み場まで来てください』


「ラブレターか」

「ひゃぁっ!」


真後ろから急に声をかけられた名波は、驚いて変な声を出した。

何事かと教室中の生徒達の視線を集める形になるが、いつもの三人がはしゃいでいるだけだとわかると、途端に興味を無くしたかのように視線を外していく。

振り向いて二人がのぞき込んでいたことに気づいた名波は、慌てて机の中に紙をしまい込んだ。

しかしその一瞬前に捜査官・隆が先手を打っており、机の中に入っていた紙は全て机の上にぶちまけられていた。その数、およそ12枚。モテモテですね。


「うわっ。なんだこの枚数」

「ちょっと! 勝手に見ないでよ!」

「さすが学校一のモテモテ美少女は格が違うな」

「もうバカにしないでよ・・・」

「ん? なんか不服なのか?」


明らかにテンションダウンしていて、いつもよりも食いつきが悪い名波を変に思った隆が、ラブレターを一枚手にとって読みながら訪ねた。拓馬も一枚読んでいる。

はぁ、とため息をついて、二人からラブレターを取り上げて話し始めた。


「あのね。こんなにもらうのは嬉しいことなんだろうけど、一気に返事できるわけないじゃん? だから困ってるんだ」

「それはごもっともだ。じゃあ行かなきゃいいんじゃね?」

「でも勇気を振り絞ってラブレターを渡してくれたって考えると行った方がいいと思うんだよね・・・はぁ」

「お前ホント真面目だな」

「これが普通じゃないの?」

「まず普通はこんなにラブレターもらわないけどな」

「ラブレターなんて初めてもらったもん。今までこんなことなかったのに・・・」


意外に思うかもしれませんが、この黒木名波は美少女と言われながらもラブレターはおろか、告白の類を一切されたことがありませんでした。

それには二つ理由がありました。

一つは単純に『高嶺の花に告白なんて出来ないから見ているだけで十分』と思っていて告白をしてこない場合。これに関してはかなりの数がいます。

そしてもう一つは『告白しようとするといつも誰かに機会を逃される』という場合。もちろんファンクラブの仕業ですね。

今回のような大量のラブレターが送られてきた背景には、ファンクラブの解散が関係していましたが、三人が知ることはまず無いでしょう。


「ふむ。で、お前はどうしたいんだ?」

「できるなら一人一人に返事しに行きたいかな」

「OKしに行くのか? とんだビッチだな」

「もうからかわないでよ。もちろん振るに決まってるでしょ」

「なんで? もしかしたらいい男いるかもよ?」

「だって二人のこと好きだから彼氏なんていらないもん」


まさかの告白にきょとんとする拓馬と隆。何も話さなくなった二人に気づいた名波は、ハッとしてポロリと言ってしまった言葉を思い出した。

そして顔を赤くしてうつむきながら訂正した。


「・・・・・・あ、いや、やっぱり今のナシ」

「はい。ちょっと待とうか」

「相沢さん。俺たちさりげなく今告白されたんですけど気のせいですかね?」

「いや、気のせいじゃないと思うぞ。俺もバッチリ聞いた」

「そ、そーゆー意味じゃないってば!」

「じゃあどういう意味なんだよー」

「その、と、友達として好きってこと!」

「ラブでなくてライクだと言いたいわけか」

「その通りです・・・」


顔を真っ赤にして抵抗している名波を見ていた二人も恥ずかしくなってきてしまい、それ以上の追撃はしなかった。というよりもできなかった。

変な空気になってしまったのを振り払うかのように、拓馬が極力明るい声で元の話題に戻した。


「ま、まぁとりあえず今はこのラブレターをなんとかしないとな」

「そうそう! これをなんとかしないと私も帰れないし」

「うーん・・・それなら俺にいい手があるぞ」

「「えっ!?」」


さすが隆さん。さっそく何かいい案を思いついたみたいです。

そう言った隆は名波の隣の席に座ってさりげなく聞き耳をたてていた有紀に声をかけた。


「竹中」

「へ? なんか用ですか?」


そして有紀に顔を近づけて小さい声で言った。


「話は聞いてたと思うから説明はしないぞ」

「別に私も好きって言われたいなんて思ってないからね!」

「はいはい。わかったから」


それだけ言って顔を離して最初の距離で会話を続ける。


「いきなりで悪いんだけど、あのバカ先輩の電話番号教えてくれないか?」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると大変喜びます。


隆の妙案とは?


次回もお楽しみに!

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