発育調査方法
「タカ兄? そろそろいい?」
隆が名波に深々と土下座をさせているところに、見かねた望が割って入った。
望の姿を見て、本来の目的を思い出した隆。
「あぁ。もういいや。満足した」
「名波さん? 大丈夫ですか?」
「うぅ・・・」
半泣きになっている名波に望が手を差しのべる。
「私の味方は望くんだけだよ・・・」
「おい、ちょっと待て。悪いのはお前だろっ。ビンタしたのはどっちだよ」
「タカ兄ももう勘弁してあげなよ。名波さんも誤ってるじゃん」
「わかったよ」
「望くんありがと」
「いえいえ。で、早速なんですけど、希ちゃんの胸を見てもらえますか?」
「・・・なんで?」
またビンタしそうになったが、相手は唯一の味方の望ということもあり、ギリギリのところで思いとどまった。思いとどまったが、お願いの意味が分からずに聞き返す名波。
「希ちゃんの発育状況を知りたいんです。でも僕じゃわからないので、名波さんにお願いしてみようかと思ったんです」
「いや、周りの女の子とか見てたらなんとなくわかるもんじゃないの?」
望の変態めいた発言に大人の意見というよりも、正論かつ現実味しかない言葉で返す名波。
その発言に驚愕の表情を浮かべる望。
「そうか。その手があったか!」
「「「は?」」」
「そうですよ。学校にはいっぱい女の子いますもんね。比べれますもんね。いやー全く気付かなかった! 名波さん! ありがとうございます! じゃあタカ兄! 僕帰るね!」
「お、おう。気をつけて帰れよ」
手を振りながら爽やかに去っていく望を、ポカーンと見ていた3人であった。
「あ、あれでよかったの?」
「あー・・・いいんじゃないか? 望も満足してたみたいだし」
「俺はますます望がわからなくなったよ」
「私も望くんがわからない」
「大丈夫だ。俺も全然わかってないから」
「じゃあ・・・このあとどうする?」
「どうするって・・・帰る?」
「だな。帰るか」
3人は仲良く電車で帰りましたとさ。
「希ちゃん・・・」
希の部屋がノックされたのでドアを開けてみると、そこには申し訳なさそうな顔をした望が立っていた。
二人は双子ということもあり、同じ部屋を使っている。なので本来ノックは必要ないのである
「望くん? ノックなんてしてどうしたの?」
「その、昨日は変なこと聞いてゴメンね」
「え? 別に怒ってないよ? 私の方こそビンタしちゃってゴメンね?」
「希ちゃん・・・!」
パァっと明るい笑顔になる望。
「でもいくら望くんでも、聞いていいことと聞いたらダメなことがあるんだから覚えといてよね」
「うん。今度からは他の子と比べて判断するから大丈夫」
「・・・他の子?」
ビキビキ。
望は聞いたことのない音が希から聞こえた。
「え、うん。教室とかで見て希ちゃんの胸の大きさを比べるから安心してて」
「望くん?」
「何?」
「そこに正座しなさい」
「え?」
「正座。足を折りたたんで座るの」
希の迫力に押されてフローリングに正座をする望。
希はどこからか取り出した広辞苑・国語辞典・教科書で一杯のカバンをそれぞれ絶妙なバランスで望の太ももの上に積み重ねた。
「あの、希ちゃん?・・・ヒィッ!」
声をかけて振り返った希の背後に鬼が見えた。
その後、希に説教された望が胸の話をすることは無くなった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。
キリ良く書いたら短くなっちゃいました。
ごめんなさい。
次回もお楽しみに!