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男と男の約束

放課後。

名波には理由を説明せずに、望が待っている駅へと向かう。


「ねえねえ、いい加減教えてよー」

「さんざんヒント挙げただろ。それで満足しろよ」

「全然わかんないよー。『男か女かわからない』って全然ヒントじゃないもーん」


隆の隣を歩く名波は格別にやかましかった。そんな名波を見ていた拓馬が一言。


「今日の黒木さんはご機嫌ですね」

「そ、そんなことないよ?」

「なんか今動揺した?」

「ど、動揺なんてするわけないじゃないですかー。ちょっとドモりぐせがあるだけですよー」

「初めて聞いたぞ?」

「だって初めて言ったもん」

「ふん。どうせ嘘だろ。拓馬も相手にすんな。なんかめんどくさい」

「うわーひどーい」


隣でワイワイと言い続ける名波の対応がついにめんどくさくなり、無視することを貫こうとしていた。

無視をすれば今度は名波がブーブーと文句を垂れ流すので、さらにめんどくさい状況が続いていた。


「タカ兄!」


駅の近くまで来ると、正面の道から望が見えた。こちらに気づいた望は、手を振りながら走ってきた。


「よう。約束通り連れてきたぞ」

「ありがと。そんなにイチャイチャしてると、後ろから刺されるよ?」

「誰にだよ。ってゆーかイチャイチャしてないから」

「ご謙遜を」

「私に会いたいって言ってるのって、まさか望くんなの?」


まさかの尋ね人に驚く名波。望が訪ねてきたのも驚いたが、双子を単体で見るのが何故か新鮮で驚いていた。桜と遥は常に二人一組で行動しているため、双子という生き物はセットで行動するのが普通だと思っていた。


「あ、名波さん。こんにちわ。今日はお願いがあってタカ兄に頼んだんです」

「お願い?」

「はい。希ちゃんの胸を見てもらえませんか?」


言葉の意味が分からずにポカーンと口を開けて固まる名波。次第に頭で理解ができるようになってきたらしく、ゆっくりと顔を赤くして驚いた顔に変化していった。そして隣に立っていた隆にビンタした。

隆の頬に手首のスナップが良く効いたビンタがすごい音を立てて炸裂した。

その衝撃で思わず膝を付く隆。


「いってぇっ!!」

「はっ! ご、ごめんっ。つい・・・」

「ついじゃねぇよ・・・なんで俺が殴られないといけねぇんだ?」

「望くんが変なこと言い出すからからだが反射的に反応しちゃって」

「望殴れよ」

「年下を殴るわけには・・・」

「拓馬もいたろ」

「木下はちょっと遠かったから」


頬を押さえながら拓馬の方を見る隆。そこにいた拓馬は名波から3歩ほど離れた位置にいた。有効射程範囲外に立っていた。

望が話した瞬間、拓馬は望の純粋さ故の変態さに戦慄を覚えて2歩ほど後ろに下がった。それが良い方向に働いた。ラッキー回避だった。


「だからって殴るのはダメだろ」

「だからごめんって言ってるじゃん!」

「なんで逆ギレしてるんだよ」


そんな二人を見ながら、望が拓馬に話しかける。


「拓馬。あの二人ってホントに付き合ってないの?」

「らしいぞ」

「でも多分名波さんはタカ兄のこと好きだよね」

「は? なわけないだろ」

「え? 見ててわかんないの?」

「黒木って前からあんな感じだぞ? 俺らって付き合うとかの概念無いし」

「へぇ・・・」


三人の不思議な関係にあまり納得言ってない様子の望。

拓馬のほうへとからだを向けて、望の質問はさらに続く。


「拓馬は名波さんは好きじゃないの?」

「は? なんで?」

「なんでって、前から言ってるじゃん。『俺の好みは黒タイツの似合う女子だ!』って」

「あー、えーと・・・言われてみればそうだな」

「はぁ? ホントに拓馬達ってどういう関係なのさ」

「だから何回も言ってるだろ? ただの友達だって」


そう答えた拓馬と望は、口喧嘩している二人へと視線を戻すと絶句した。

目の前では、隆が名波に雪道にもかかわらず土下座させていた。


「・・・あれでも付き合ってるように見えるか?」

「あー・・・見えない」

「だろ? 真面目ちゃんの黒木とドSの隆はあんまりカップルっぽくないんだよな。かといって俺と黒木が似合うかと言われればそうでもないんだよな。多分三人だからお似合いなんだよ。この絶妙なバランスが大事なんじゃないかなと俺は思うわけよ」

「何カッコイイこと言った気になってるのさ。拓馬は名波さんのこと好きなんでしょ?」

「だから違うって」

「タカ兄には言わないよ?」

「・・・・・・・・・わかる?」

「見えないけど、話聞いてたらそんな気がしてきた」

「・・・望。これは内緒だからな?」

「わかってるよ。この絶妙なバランスを崩したくないんでしょ?」

「さすが望だ。あとでうまい棒を買ってやろう」

「肉まんで勘弁してあげる」

「10倍の値段じゃねぇか!」

「絶妙なバランスと120円ならどっちを取るのかな?」

「くっ・・・絶対に言うなよ?」

「口が硬いことで有名なんだから安心してよ」


まさかの事実をいとも簡単に納得してしまう、おそるべき小学5年生の望。

そして『こんなことを考えていたのか! この変態紳士!』状態の拓馬。

男と男の約束は120円の肉まん一つで固く封じられることになった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると赤飯とか炊くかもしれません。


ついに拓馬がぶっちゃけました。

この設定は初期設定なのですが、読み返してみると思いあたる節がちらほら。

好きになったのは、迷子事件ぐらいからだと作者は睨んでます。


次回もお楽しみに!

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