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立場逆転

黒木家の圧倒的迫力から落ち着きを取り戻し始めた拓馬と隆。そんな二人が来てくれたことがよほど嬉しかったらしく、名波はお土産でもらった、3つで105円のヨーグルトの3つ目をパクパクと食べていた。


「お前、そんなに一気に食べて大丈夫なのかよ・・・」

「だってもうほとんど治りかけだよ? あとはたくさん食べて体力つけないと」

「だからって一気に食べればいいってもんじゃねぇだろよ」


そんな二人のやりとりを拓馬はニヤニヤと見ていた。

拓馬は実際のところ、名波は隆の事が好きになったと思っている。きっと土曜日に遊びに行った時、自分が寝ているうちに何かあったのだろうと踏んでいる。前までは、少し嫉妬気味なことも考えはしたが、実際にこの状況になってみると、すごく楽しかった。なんかワクワクドキドキした。

そして隆は隆で、名波が自分に気があるのではないかと思い始めていた。どう考えても最近の名波の反応はおかしかった。決定的だったのは、迷子直前のあのリアクションだ。あれはもうどうしようもないですね。

今日ここに来たのは、それを確認するためでもあった。


「ところで黒木。なんで迷子になったとき、全力で走っていったんだ?」

「!?」


なんの前触れも無く、拓馬が聞いた。その唐突で確信を突いた質問に隆は、首が折れるのではないかというスピードで拓馬に顔を向けた。その時に目が合って拓馬は『俺に任せとけ』みたいなアイコンタクトを送っていた。


「あれは、その・・・」

「もしかして隆のこと好きになっちゃったとか?」

「!?!」


隆は驚愕した。拓馬の質問はコロコロPKをど真ん中に蹴っているようなものだった。きっと止められてしまう。そう思うしかなかった。


「いやいや、それはないわー」

「!?」


さらに隆は驚愕した。それに対する名波の答えは『ないわー』だった。


「じゃあなんで顔真っ赤にして照れてたんだよ」

「あれは、友達と遊ぶのが楽しかったのに、もう終わっちゃうんだなーって考えてたら恥ずかしくなってきちゃったの! 恥ずかしいから言わせないでよっ」


かけ布団を掴んで顔を隠す名波。それを笑いながら指さす拓馬。開いた口が塞がらない隆。


「完全に隆の勘違いっだったな」

「っつ! あれはお前が先に言い出したんだろうが!」

「え? なんの話?」

「実はな、隆が」

「バカ! 言うな! 俺が残念な男に聞こえるだろうが!」


必死に喋らすまいと拓馬を押さえ込む隆。

しかし、ヒョロ男の隆が不意打ち以外でやせマッチョの拓馬に勝てるはずもなく、あっさりと隆は押さえ込まれてしまった。

日頃の仕返しをすべく、拓馬は事の概要を名波に話した。


「へぇ~。あの時、私のことそんな風に見てたんだ~」

「黒木さん? なんでそんなに楽しそうなんですか?」


拓馬が話終わる頃には、押さえ込まれたまますっかり抵抗する気を無くした隆に、名波が意地悪そうな顔で近寄る。名波的には、意地悪時の隆を想像しながら話している。


「相沢って好きな人とか居ないの?」

「はぁ? いるわけねーだろ」

「友達もいないもんな」

「相沢も友達いないんだ。私と一緒だね」

「まぁそんなに友達なんてたくさんいても必要ないからな」

「じゃあ私と相沢は友達じゃないの?」

「それは・・・ちだろ」


すごい小さな声で隆がつぶやく。今の隆は羞恥心で死ねるのでは無いかというぐらい恥ずかしかった。

そんな隆に名波が偉そうな口調で聞く。


「えぇ? 聞こえませんな?」

「と、友達だろ! 俺と黒木は友達だろ! これでいいんだろ!」

「じゃあキスしてみる?」


まさかの名波の提案に顔を真っ赤にする隆。それを聞いていた拓馬も顔を真っ赤にした。

学校一の美少女名波からキスの提案があるとは思っていなかった二人。それで顔が赤くなるなんて、隆も拓馬もまだまだ高校生ですね。


「は? いや、それはまずいだろ」

「そうだって黒木。ちょっと暴走しすぎだぞ。落ち着け」

「私は別に二人とならキスぐらい出来るわよ。だって外国では挨拶みたいなもんじゃない」


拓馬が押さえ込んでいる隆の耳に小さい声で話しかける。


『なんか今日の黒木変じゃね?』

『だよな。暴走しすぎだと思う。まだ熱あるんじゃないか?』


そんな名波に、さすがの二人も困惑気味だった。

二人の気持ちを知ってか知らずか、暴走名波は止まることをしなかった。


「ねぇ、じゃあ木下でいいからキスしてよー」

「その言い方だと、俺はおまけみたいな感じに聞こえるぞ! だからダメっ!」

「振られたから、相沢がキスしてよー」

「だからやめろって!」


懸命に顔を隠して、名波のキスから逃れようとした。しかしいくら経っても近づいてこないことに気がついた隆は恐る恐る目を開いてみた。するとそこには、笑いを堪えている名波の姿があった。


「・・・なんてね。私がそう気安くキスするわけないじゃん」


名波に一本取られた隆は顔を真っ赤にしてプルプルとうつむいている。よほど悔しかったのでしょう。


「今まで私がやられていたことを身を持って知ったかー!」


指を突きつけて『やったどー!』と胸を張っている。拓馬も横で笑い始めた。

いつもの仕返しが出来てちょっと満足な名波ちゃんでした。

でもちょっとやりすぎではないですかね?

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


前からやってみたかった「小悪魔名波」をやってみました。


次回もお楽しみに!

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