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ストーキング オン ストーキング

学業という学生の仕事が終わり、意気揚々と帰っている生徒の群れの中で、たった一人だけ浮かない顔をしている生徒がいた。

もちろん変態の拓馬である。


「あーぁ。学校の授業が24時間授業ならいいのになー」

「それだと寝る時間が無いだろ」


隣を歩くのは拓馬の大親友でお馴染みの隆。いつものように適当に拓馬との会話のキャッチボールに付き合う。

拓馬は学校が終わるといつもこんな感じである。

理由はもちろん・・・


「一日中黒木の黒タイツを履いた足を見ていたい!」

「大声で言うな。気持ち悪いだろ」


とのこと。


「隆くーん。そこは気持ち悪いじゃなくて迷惑になるーとかだろ?」

「いや、気持ち悪いし。お前が変態発言するときは、大抵赤の他人のフリしてるから俺は迷惑じゃないし。良かったな、こんなにお前のことを心配してくれる友達はいないぞ?」

「おぉ! さすが隆くん! そうやって遠まわしに人のことをバカにするのは良くないぞ☆」


なんやかんやと盛り上がっている二人の後ろから一つの影が見ていた。


「私の名前が出てきたから誰かと思って追いかけてみたら、またあいつら・・・」


電柱の影からストーキングするように見ているのは、我らがアイドル黒木名波でした。

実はその後ろには数人があとを付けていたりするのは、また別の話。


「うーん・・・この距離じゃ何話してるのか聞こえない・・・」


若干遠い距離感を保っている名波は、二人の会話が聞こえていないことに少し苛立ちを覚えていた。

そんなイライラを解決する方法は簡単である。二人の会話に混ざればいいのだ。

しかし名波もそんなことは分かっていた。それができないからイライラしているのだ。

もしもこのまま二人の会話に混ざってしまえば、今日の休み時間の時のように弄ばれるのは目に見えている。

しかし気になる。どうしようもないパラドックスに名波は困り果てていた。

しゃがんだ体勢で隠れている電柱から身を現し、次の電柱へと移動しようとした。

その時!

前を歩いていた二人が突然後ろを振り返って全力疾走でこちらに向かってきた。

突然の事態に驚いた名波は身動き一つ出来ずに、立ち上がろうとした中腰の姿勢のままで固まってしまった。

全力疾走してきた二人は名波の脇の下から手を突っ込み、持ち上げるようにして立ち上がらせた。


「ちょ、ちょっと! どこ触ってるのよ!」

「はいストーカー逮捕ー」

「はいはい大人しくしてねー」


隆、拓馬の順でそれぞれ警官の真似をしながらニヤリと笑う。

名波のストーキングはバレバレでした。

二人は名波が電柱から出てきたところを捕獲する算段を立てながら歩いていたのです。


「君ねー。ストーカーは立派な犯罪だよ?」

「現行犯だから言い訳はできないからな」

「私ストーカーなんかじゃないし!」

「みんな最初はそうやって言うんだよ」

「本人たちに了承を得ないであとを付けているのはストーキングではないと? 困りましたな、相沢警部」

「そうですね。本人に自覚が無いのは困りますな、木下警部」


互いを警部と呼び合う二人。

木下警部は携帯を取り出して、無線で何かと話しているフリをする。その間も名波を拘束している手を放すことは無い。


「ちょっと!いい加減に離してよ!あんたらがどこ触ってるかわかってるの?」

「二の腕」

「脇」


拓馬、隆の順で答える。


「そうじゃないでしょ!女子高生のからだをさわってんのよ!この状態だけ見たら逮捕されるのはどっちよ!」


名波を左右両側から、『宇宙人確保』というような感じで持ち上げているため、どうみても名波が怪しい二人組に連れて行かれそうになっている状態だった。

しかし当の本人たちは全くあんなことやそんなことをするつもりはないので、恥ずかしさややらしさなどを垣間見せることすらなかった。しかも名波が暴れすぎているせいで周りを歩く生徒たちも『仲良しな三人組だ』と呟きながら通り過ぎていく。


「これだから素人は困るよ」

「・・・どういうことよ」


空いている手で頭をかきながら拓馬が言う。


「俺たちはお前をストーキングしている奴らがいるから、こうしてお前のところに走ってきてやったんだぞ」

「え?」


名波はここで初めて自分がストーキングされていたことを知った。

実は三人が通っている学校には『黒木名波ファンクラブ』なるものが設立していた。その話は別の機会にゆっくりと。

そして今回ストーキングをしていたのは、その中でも熱狂的な名波ファンのメンバーであった。


「もしかしてお前気づいてなかったのか?」

「う、うん」

「そうか。少しは感謝する気になったか?」


まさか自分がストーキングされていたとは露知らず、二人をストーキングしていたとは・・・

二人に助けられて少し見直した名波。


「黒木。木下。二人ともありがと。ちょっと二人の印象が変わったわ」


そう微笑んでお礼を言う名波。

二人も少し微笑んで、名波の腕を掴んだまま、からだの周りをぐるりと回転してからだを前後180度回転させた。

なんでぐるりと回ったのか分からない名波。

そしてさっきの微笑みよりも少し悪意のこもった微笑みを見せる拓馬と隆。

そして名波のからだをグイっと持ち上げてゆっくりと前進。

徐々に上がっていくスピード。


「え、ちょっと、どこ行くの?」


なんとなく分かっていながらも名波が二人に問う。

しかし返事は返ってこず、スピードがまた少し上がる。

美少女と呼ばれる名波のからだは見た目通り軽いので、男子高校生二人なら簡単に運べてしまう重さだった。


「ぎゃぁぁぁあああ!!」


さらに笑顔になり、小走りだったスピードを駆け足のスピードまで上げる。

もちろん向かっているのはファンクラブのストーキング部隊の皆様のところ。

ストーキング部隊のみなさんは、二人の微笑みに恐怖を感じてすでに退避を始めていて、集団で固まって逃げている。

それを追っている二人と、半泣きの状態で二人に持ち上げられている名波。足が宙に浮かび上がるくらいまで持ち上げられているのでどうしようもない。


「「アハハハハハハハハ!!!!」」


ついに笑い出した二人。しかしスピードを緩めることはなく、辺りには名波の悲鳴と二人の悪魔のような笑い声が響きわたっていた。


その追いかけっこは二人の足に名波の宙に浮いた足が絡みついて、三人が派手に転倒するまで繰り広げられたとかなんとか。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


順調です。

黒木名波ファンクラブについてはまたの機会に。


次回もお楽しみに!

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