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双子と双子

相沢家の昼ご飯を食べた隆達は、全員でリビングから隆の部屋に移動していた。

隆に拓馬が昼ご飯の感想を話している。


「隆の母さんどうしたん?」

「あれは冗談で言ってるのかと思ってたら、ホントに出してくるとは・・・」


今日の昼ご飯のメニューは赤飯と甘酢団子とマカロニサラダだった。というか母親は宣言通りに赤飯を炊いたのだ。食事中に名波が『これって夜ごはんじゃないよね?』と隆に耳打ちしていたぐらい、気合が入った昼ご飯だった。

ホントはもう一品あったらしいのだが、隆がキッチンに突撃して全力で阻止した。


「もうお昼からあんなに食べるとは思わなかった」

「だよなー。眠たくなってきたもん」


ベッドの上に座って腕を伸ばしながら欠伸をする拓馬。隆は自分の机の椅子に座っていて、三姉妹は部屋の真ん中にあるテーブルを囲むように座っている。相沢家の双子は自分たちの部屋に戻っている。

五人でとりあえず隆の部屋に来たのはいいが、特にすることがなかった。当初の目的であった双子にはもう会えたが、そのあとのことを全く考えていなかったために全員がダラダラし始めている。

あ、拓馬くんが布団に入って寝始めました。


「ねぇ、なんかしようよー」


名波が隆を見ると、桜と遥も同様に隆に視線をやった。3つの視線を受け止めた隆は、何かないかと部屋の中を見回した。しかし隆の部屋には遊び道具になるような物は何も無い。というよりも必要最低限の物以外はほとんど無い。

勉強机。ちゃぶ台的なテーブル。ベッド。参考書とか知識を増やすために買った本が入っている小さい本棚。そのぐらいだった。あとしいて言うなら、クローゼットの中に服とか色々と入っているが、この年齢で手に入れてはならないものであり、名波達に見せるわけにはいかない物も入っている、クローゼットは開けたくない。

つまるところ物も目的も何もなかった。

そんな暇な空気をぶち破ってノックも無しに部屋に入ってきたのは、相沢家の双子だった。


「「どうもこんにちわー!」」

「どうした?」

「暇だったから突撃してみましたー!」


元気に言う希。そんな希を見て遥が桜に耳打ちをする。それを聞いた桜はウンウンと首を縦に小さく振る。

名波は突然の奇襲に一瞬驚いていたが、二人を見分けるために双子を凝視しているようだった。


「そんなに見つめられたら恥ずかしいので、あんまり見ないでください」


心底恥ずかしそうに顔を背ける望。その望の前に立ちはだかる希が名波に一言。


「私の望くんなので諦めてください!」

「あ、ゴメンね。望くんは希ちゃんのものって知ってるから大丈夫だよ」

「そんなにわかりますぅ?」


からだをクネクネとさせて恥ずかしがる希。

名波の横でクスクスと笑っている桜と遥。隆はその二人に声をかけた。


「もしかしてわかるのか?」

「はい。全然違いますからね」

「あのね、笑ったら可愛いほうが希ちゃんでしょ?」

「え? 何言ってるの?」

「あの二人、今入れ替わってるぞ」

「あーっ! タカ兄、言わないでよ!」

「うそー! 全然わかんなかった!」


そう。希と望は服装を入れ替えた状態で隆の部屋に入ってきたのだ。

桜と遥は何故か見分けがつくらしく、入ってきた瞬間から入れ替わっていたことに気づいていた。

双子は双子を見分けることができるらしい。双子パワーはまだまだ未知数だ。

今この中で希と望を見分けられないのは、寝ている拓馬を除けば名波だけだった。


「なーんだ。バレバレか」

「でも家族以外で一発でバレたのってこれが初めてだよ?」

「言われてみればそうかも」


望に言われて、希が今までの記憶を辿ってみるが、検索結果は0件だった。まさに快挙である。

そんな快挙を成し遂げた二人に希がグイッと近づいて笑顔で言う。


「ねぇねぇ! 桜ちゃんと遥ちゃんは入れ替わって遊んだりしないの?」

「えーと・・・私たちはちょっとやらないかなー?」

「えーなんで? 楽しいよ?」

「だって・・・はずかしいもん・・・」


そう答えて恥ずかしそうに俯く遥。希達との『楽しい』の感覚が違う桜は、年下双子からの攻撃をやんわりと断った。


「じゃあ名波ちゃんやる?」

「こらお前ら。いい加減にしろ。困ってるじゃねぇか」

「でもタカ兄も見てみたいでしょ?」

「お前らと一緒にすんな。ってゆーか二人とも似たような服着てるからなんとなく想像出来るだろ」

「・・・確かに!」

「今更かよ!」

「希ちゃんを責めないで!」

「責めてねーよ!」


希の前に立ちはだかる望にツッコミを入れる隆。なんやかんやで仲良し兄弟ですね。

そんな隆達のやりとりを見ていた名波が笑う。


「・・・なんだよ」

「ごめんごめん! ちょっと面白くて」

「どこが面白かったんだ?」


隆同様、希と望も首を傾げる。そんな三人を見て、名波がまた笑い出す。


「アレだよね。相沢も希ちゃんも望くんもやっぱり似てるよね」

「「「どこが?」」」

「ほらっ! なんか雰囲気とか凄い似てるもん」


互いに顔を見合わせる相沢三人衆。




その後、夕方になるまでワイワイガヤガヤとしゃべりまくった。

途中で隆が買ったお菓子とかも食べた。拓馬が起きた頃にはすでにお菓子がなくなっていたのは言うまでもない。



「「「「お邪魔しました」」」」

「おう。また来いよ」

「今度は桜ちゃん達も着せ替えごっこやろうね!」

「またタカ兄に怒られるよ?」


アハハハハと笑い、駅まで送っていくという隆が名波、桜、遥、拓馬の四人と家を出た。


「それにしてもお前はホントに寝てたな」

「いやーせっかくの二人の時間を邪魔しちゃ悪いかなって思ってさ」

「何を馬鹿なことを・・・別にただの友達じゃん。お前も友達なんだから参加しろよ。なぁ? 黒・・・き?」


呆れた顔で答えた隆が名波のほうを見ると、うつむいた名波がその場で足を止めていた。

双子は不思議そうな顔で名波のを見ている。


「・・・え? ちょ、マジで? 黒木さん?」

「マジでか! 俺の隆を狙ってるんですか!?」

「俺のってなんだよ! って、黒木さん? 大丈夫ですか?」


まさかの展開に驚く拓馬と隆。

隆が完全に意識をやられている名波に声をかける。目の前まで歩み寄って、名波の肩に触れようと手を伸ばす。

触れる寸前まで来たところで、名波の意識が戻ったらしく、伸びてくる手に気がついて慌ててその手を振り払った。

その時に顔を上げた名波は、寒さのせいではなく、確実に照れと羞恥心で赤くなっているような顔だった。湯気が出ていてもおかしくないぐらい赤かった。


「わぁぁぁぁあああああああああああああっ!!!!!」

「おい黒木!」

「「お姉ちゃん!」」


猛烈な叫び声と共に、滑りやすいであろう雪道を全力で駆けていった。

名波の急な行動に慌てて追いかける四人。桜が急な方向転換に失敗してその場にすっ転ぶ。それに気を取られた遥も転びそうになるが、抜群の運動能力を駆使して片手をついて体勢を立て直した。さらにその美しいバランスの取り方に見とれた拓馬が転びそうになる。その時に隆の腕を掴んでバランスを取ろうとして、隆ごと背中から転倒。

結局遥以外が全員倒れてしまい、走り去った名波を見失ってしまった。

道路の真ん中で散り散りに倒れている3人と立っている一人。非常にシュールな光景であった。



「写真撮っとく?」

「そうだね。あとでタカ兄に聞いてみよう」


そんなシュールな光景を家の中から希と望が見ていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけるとトランザムできるかもしれません。


次回から少し話が動くはずです。

まぁ見方によっての問題ですが。


次回もお楽しみに!

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