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日直と違和感

相沢家訪問までの閑話感覚でお読みください。

「なんか悪いな」

「別にいいって。どうせいつも暇だし」

「そうそう。こっちから押しかけるんだから遠慮したらダメだよ」

「お前は少しは遠慮して双子を連れて来ないでくれ」

「それは無理なお願いね」


名波のストーカー事件があった次の日。

登校後、教室で隆が拓馬と話しているところに、名波が登校してきて三人で話している。

そこで思い出したかのように隆が放課後の予定を急遽変更してしまったことを詫びていた。

二人はさして気にした様子もなく、むしろ休みの日にゆっくり訪問できることを楽しみにしているようだった。


「いやー、それにしても久々にあの二人に会えるとなると、ちょっとドキドキしてきたわ」

「なんでだよ」

「いや、色々と身構えていかないといけないからさ。武者震い的なドキドキな」

「身構える?」


イタズラ好きの相沢家の双子を知らない名波が首を傾げる。拓馬がそれはお楽しみさ、というと名波は少し頬を膨らませた。可愛いですね。しかし隆が拓馬のフォローをするとすぐに機嫌を良くしていた。


「あ、やべ。今日、日直だ。日誌もらってくるわ」


拓馬が日直のことを思い出し、職員室へと日誌を取りに向かった。

拓馬達のクラスの日直の仕事は、朝に職員室で担任の先生から日誌を受け取ることから始まる。

各授業の様子を日誌に書いて、授業で使った黒板を綺麗に黒板消しで消して、授業の始まりと終わりの号令をやって、一日の最後に『今日のまとめ』みたいな感じで200字程度の感想文を書いて担任に日誌と提出というのが主な仕事となっている。

他のクラスはもっと楽らしいが、拓馬達のクラスは先生がやる気満々なので日直の『仕事』ということで厳しいないようになっている。しかも日直の仕事は一人でこなさなければならない。なんでも『大人になってから社会で責任感をもって仕事に励むようになるための練習』だそうだ。

もしもサボっていたり忘れようものなら、何回もちゃんと日直の仕事をこなすまでは当番が終わらないという地獄の当番となっている。


「今日あいつ日直だったのか」

「そうだよ。覚えててあげなよ。親友なんでしょ?」

「ってことはお前は覚えてたのか?」

「まぁね。ちょっと前に有紀ちゃんが当番だったから、たまたま覚えてただけだけどね」


たいして気にした様子もなく、隆は一時間目の授業の準備を始めたところで拓馬が戻ってきた。

その少しあとに担任が入ってきて、拓馬の挨拶で朝のホームルームが始まった。




放課後。


隆は日直と掃除当番のコンボで遅くなる拓馬を置いて教室を出た。今日は特に名波がうるさく言ってこなかったので、静かに帰った。

夕方になって少し冷え込んできた帰り道を夕日を背に一人で歩く。

雪も降っていなくて、空は綺麗な夕焼けのオレンジ色で染められていた。

冬の空は空気が澄んでいて夕焼けがとても映えるので、隆は冬が好きだった。

暦上はまだ11月で秋なのかもしれないが、今年の北海道は例年よりも早く雪が積もっていて、12月にさしかかろうとしている今日には、もう雪が積もっていた。

公園なんかはすでに雪で遊具が隠れるぐらいまで積もっていて、隆の中では最速の雪の積もり具合だった。温暖化はどこに行ったのだろうか?


「なんか一人で帰るの久しぶりだな」


思ったことを口に出してみて気がついたが、本当に久しぶりだった。

ここ1週間は3人で帰ることが多かったし、拓馬が居なくても名波がいることがあったりして、一人で帰る機会がなかった。

そんな隆はいつもより静かな帰り道をサクサクと歩いていた。

家に帰っても何もすることがないので、駅までの途中にあるコンビニになんとなく立ち寄ると、なんとなく漫画雑誌を読んでみたりもした。

久しぶりに読むと全く展開が分からず、自分の知らないキャラクターばかりが出ていてちんぷんかんぷんだった。

諦めて店内をブラブラとするが、特にめぼしいものは無く、コンビニを後にして駅までの道を歩いた。

歩きながらふと考えた。いつもなら拓馬とバカやって賑やかだったのが、この秋から突然現れた名波によってさらに賑やかになった。それによって隆の日常は『賑やか=普通』になっていた。別に悪いことではないのだが、急に一人になって静かになると違和感しか残っていないのがとてもつまらなかった。


「こんなことなら学校で拓馬のこと待ってれば良かったかな」


今から戻ろうかとも思ったが、さすがにもどるのはめんどくさい距離まで来てしまっているし、スレ違いになっても困る。

今日は大人しく帰ろうか、と考えたがなんとなくいつもと違うことをして、この気分を誤魔化したかった。


「よし。駅で拓馬のこと待つか」


そう決めた隆は駅に着くと、暖房の効いた待合室に入ってベンチで座って、近くにあった旅行会社のパンフレットを読みながら拓馬の到着を待った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると大変感謝いたします。


というわけで、隆の帰り道です。

次回はついにやってきた拓馬のターンです。この話を載せるまで長かった・・・


というわけで次回もお楽しみに!

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