ストーカーの正体
いつもの帰り道。
名波はいつもと同じように歩いていた。もちろん作戦通りだ。いつも通りでいいと隆に言われたので、極力周りをキョロキョロとしないように気を付けて歩いている。
校門を出てすぐぐらいから、またいつもの視線を感じるようになった。少し怖かったが二人がついていてくれるため、いつもよりは怖くなかった。
その二人だが、少し前に拓馬、少し後に隆が隠れながら歩いていた。ちなみに3人の知らないところでは、春樹と有紀が隆の更に後ろ、会員の一人が拓馬のもう少し前、会員の二人が名波の歩いている道の1本隣の左右の道にそれぞれ一人ずつが配置されている。会話の内容等は拓馬と隆の襟元に取り付けられた小型マイクから盗聴している。
なんやかんやでかなりの大がかりなことになってしまった。もちろん3人の知らないところでだが。
「あ、そうだ」
隆に言われていたとおりに、視線を感じたタイミングでポケットに入れておいた携帯で隆と拓馬にそれぞれメールを送る。メール自体はもともと作成しておいたので、手探りで操作して送信した。メールアドレスと電話番号はさっき教室で交換してました。
それを聞いていた会員の何人かとロッカーに隠れていた会員が羨ましく思っていたのは内緒です。
名波からのメールを受信した二人はそれぞれがいる場所からキョロキョロと辺りを見回して、怪しい人物が居ないかどうかを探す。しかし怪しい人物は特に見当たらない。
隆は考えた。
視線を感じているのに怪しい人物がいないとはどういうことか?
自分達は何か間違っているのではないか?
そう思った隆は少し思考を変えて考えてみた。
もしかして・・・男じゃない?
今までの名波から聞いた内容から『怪しい視線=変態=拓馬=男』と決めつけていたが、何も名波は男からだけではなく、有紀のように女性からの評判も良い。
その考えを拓馬にもメールで送った。そのすぐ後に拓馬からメールではなく、電話で返信があった。
「もしもし。なんで電話したんだよ。バレたらどうすんだ」
「こちら拓馬ー。犯人確保しましたー」
「はぁ?」
思わず変な声が出てしまった隆。まさかこんなにもあっさり捕まえてしまうとは。さすがの隆も想定外だった。
拓馬が名波にも連絡するということで、電話を切って拓馬の元へと急いだ。
途中、名波と合流して拓馬の元へと到着した。犯人の少女は名波と隆に顔を見られたくないのか、拓馬に手を掴まれたまま後ろを向いている。
「どこにいたんだ? ってゆーか捕まえるの早すぎね?」
「いや、隆からメール貰う前までは、ずっと男が犯人だと思ってたからさ。でも女かもって送られてきて辺りを見回してたら、制服はうちの学校の制服なのに、見たことがない黒タイツの美少女がいるではないですか。で、よく観察してたら、黒木のことをじっと見てるから現行犯逮捕したわけ」
「まさかこんなところで拓馬の変態が役に立つなんて・・・」
「・・・・・・」
「ん? 黒木?」
「・・・こんなところで何やってるの?」
少し怒気を含んだ声が名波から拓馬に発せられた。
「え? いや、その、さっき話したとおりじゃん。も、もしかして黒タイツ観察してたこと怒ってるんですか? それなら謝りますから・・・」
「何やってるのって聞いてるの! 桜っ!」
「「・・・桜?」」
名波の言葉に首を傾げる拓馬と隆。名波は拓馬が掴んでいた少女に歩み寄ると、肩を掴んでこちらを向かせた。その犯人の顔は、よく見ると名波の小さい頃を彷彿とさせる顔立ちだった。
隆はその顔を見て少し驚いた。
「もしかして妹か?」
「は? 妹?」
「うん。妹の双子の桜。ねぇ桜? 遥も近くに居るんでしょ?」
「お姉ちゃん・・・遥ー!」
桜が遥の名前を呼ぶとどこからともなく、遥が道路沿いの家の塀を飛び越えて参上した。
驚く拓馬と隆をよそに、名波は桜と遥を自分の目の前に並べる。
そして犯人と呼ばれた桜に、名波がなるべく優しい声で話しかける。
「何してるの?」
「その・・・何もしてないよ?」
「じゃあこんなところで何してるの?」
「えっと・・・歩いてただけ・・・です」
「本当に?」
「・・・・・・」
黙り込む桜。それを見ていた遥が口を開いた。
「あのね、桜と二人でお姉ちゃんのことを・・・その、監視してたの」
「「監視?」」
拓馬と隆がそろって聞く。
名波は合点がいったらしく頭をポリポリとかいている。
「おい黒木。どういうことだよ?」
「あのね、お姉ちゃんは悪くないの。私たちが勝手にやったことだから」
「私と遥の二人で決めたの。だからお姉ちゃんは関係ないの」
「そうじゃないだろ。お前らの姉ちゃんは悩んでたんだぞ? もしかしたらストーカーかもしれないって悩んでたんだぞ?」
「「うぅ・・・」」
「なぁ、俺にもわかるように説明してくれないか?」
隆はなんとなく察したらしいが、拓馬の頭では理解するのが難しすぎたのか、説明を要求している。
そんな拓馬に名波が説明する。
「多分、私に仲良しの友達が出来たって聞いたからだと思う」
「へ? そんだけ?」
「お前にとってはそんだけかもしれないが、この双子にとってはそんだけじゃなかったんだよ」
「前にご飯食べてるときに、相沢と木下の話をしたことがあって、私が『いじられてるけど、楽しいよ』って言ったら、『それじゃイジメじゃん』って二人が言ったことがあったから、多分それが原因だと思う」
「・・・そこまで家族に言う必要があったのか?」
「だって誰かに言いたかったんだもん」
「なんか他にも友達とかいるだろ」
「私友達いないよ? なんかみんなして美少女美少女って言うから、知らないうちに近寄りがたい人ってイメージが付いちゃってるみたいで、学校で仲良しの人は多いけど、休みの日に遊んだりするような友達はいないかな」
まさかのぼっち宣言に驚く拓馬と隆。そして友達認定されていなかったことにガックリとする有紀。
「で、桜と遥はそれを聞いて、私のことを見てたんだと思う」
「そうなのか?」
「「ごめんなさい・・・」」
拓馬が聞くと、今にも泣きそうな声で双子が言った。
「とりあえず・・・ここじゃなんだし場所を変えようか」
そう言って移動を開始する5人。隆は拓馬の襟元についた小さいマイクを、拓馬に気づかれないように取った。そして自分の襟元にもついているマイクを取ると二つのマイクに向かって小さな声で言った。
「続きは学校で話してやるよ」
マイクをその場に落として、他の4人と共に歩いていった。
さすが隆さん。ファンクラブの存在を知っているのか知らないのかまではわからないが、尾行の尾行を見破るのは得意ですね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。
最近、自分で書いておいてアレですが、名波が可愛すぎてツライです。
次回もお楽しみに!