仲良し三人組
「あ、あんた、私のこと、すすす、す、好きって、ど、どういうことなにょ!」
どもりまくりの噛みまくりで聞きづらかったが、美少女女子高生の名波は顔を真っ赤にして拓馬に聞いた。
聞かれた本人は彼女の間違いに気がついているので、慌てて訂正に入る。
「おいバカ。ちゃんと読んでみろ。俺はお前の足が好きなだけで、お前のこと自体は特になんとも思ってないわ」
ここだけ聞くとただの照れ隠しにしか聞こえないが、木下拓馬は筋金入りの変態である。
彼を見ても呆れた表情でただ訂正しているだけといった感じである。
しかし名波のほうは頭が混乱してしまっている。これだけの美少女でありながら、中身はとても純粋な女の子である。同じクラスの変態だと思っていた男子から急に告白まがいのことを言われたら、それはもう頭の中が真っ白にはなるし、動揺しているもしてしまう。
何をどうしたいのかよくわからない状態に陥っていた。
そんな二人の対照的な表情を見れて隆はとても幸せだった。
「拓馬。黒木、聞こえてないぞ?」
「え? うわっ! ホントだ! おい、目を覚ますんだ!」
何をどうしたらこうなるのかわからなかったが、名波は頭から煙を出さんばかりのショートを起こしていた。
そんな名波の両肩を拓馬が掴んで前後に揺らす。
ぐわんぐわんと首が動いて、外れていたネジが戻ってきたらしく名波が戻ってくる。
「・・・はっ! 気安く触らないでよ、変態!」
正気を取り戻した名波がビシバシと拓馬を叩いて離れる。
「なんなんだよ。相変わらず意味不明な女だな」
「意味がわからないのは木下でしょ」
「どこがわからないっていうんだよ」
「そうだな。拓馬の頭は単純だ。主に黒タイツのことしか考えてない」
「そこが変なのよ!」
若干ヒステリックになりつつある名波。
確かに正論だった。そんな黒タイツのことばかり考えている高校生はどう見ても変だ。
しかしそんな罵倒も真の変態である拓馬には全く通用しなかった。
「変ってなんだ! 人の趣味をとやかく言わないでいただきたい!」
紳士な姿勢で挑む拓馬。まさに変態と言う名の紳士である。
「ねぇ~相沢ぁ~助けてぇ」
間延びした声で少し涙を浮かべた目で、隆を見上げるように助けを求める名波。
隆は拓馬と違って、美少女のそんな姿を見てなんとも思わないわけではない。
黒木名波は学校中を探し歩いても見つからないくらいの抜群の美少女だ。そんな美少女が自分に助けを求めてきている。もの凄い幸せな状態だった。
「黒木」
「何?」
自分の名前を呼ばれて、ついにやってきた助け舟に目を輝かせる。
「耐えろ」
「そんなことだろうとは思ってたよ!」
しかしやってきた助け舟は海賊船だった。
相沢隆はイタズラ好きであると同時に、『かわいい子が悔しがる表情が大好き』という性癖を持っている。
つまるところ本質はドSなのであった。
めんどくさがりでイタズラ好きでドSな隆と、変態紳士で黒タイツ大好きな拓馬。
そんな二人にからかわれているような名波。
周りから見ているとただの仲良し3人組なのだが、現状は名波がいじられているだけなのである。
しかし名波も名波で何度も二人にちょっかいを出しに行っているので、二人の中では『黒木M説』が浮上しつつあった。
隆の中では『いじられてもめげない美少女』、拓馬の中では『黒タイツの似合う美少女』という扱いになっていた。
言い方はアレだが、性的に繋がっている関係だった。
「もういいわよ! あんたたちに声をかけた私が悪かったのよ!」
「「なんで怒ってるんだ?」」
隆と拓馬が名波に対して同時に言った。
「怒ってないわよ! いつも通りですー!」
キーンコーンカーンコーン
チャイムという名のコングが鳴って短い休み時間の闘いが幕を閉じた。
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次回もお楽しみに!