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名波を襲う謎の影

黒木名波はほとんどの全校生徒が認めるほどの美少女である。

影では、ファンクラブが存在するほどの美少女である。

そんな名波は、金曜日の帰り道から、土、日、月と謎の視線を感じていた。名波はそういう視線には気づきにくいタイプではあるが、今回の視線は今までのものとは少し違った。今までみたいに『気づかれないように』という隠れている視線ではなく、『気づいて欲しいけどバレたくない』という頭隠して尻隠さずな視線だった。おっちょこちょいと言えばそれまでだが、本人が気づいてしまったために、気になって仕方ない日々が続いた。

名波も気にはなるが誰に相談すればいいのかわからないし、そもそも自分の勘違いだった場合に迷惑をかけてしまうことになるので、家族にもなかなか相談出来ずにいた。

頼みの綱である拓馬と隆に相談しようかと思ったのだが、連絡先もわからないし、土日を挟んでいたために学校で相談することもできなかった。でもこんなしょうもないことに二人を巻き込んでいいものかと名波は考えていた。

そして何も行動しないまま月曜日の昼休みになった。

名波が視線を感じるのは、学校以外の場所に居る時だった。帰り道はもちろん、部屋の中にいてもどこからかの視線を感じるので、怖くて部屋のカーテンは締めっぱなしだ。

日曜日に双子の妹達と買い物に行ったときにも視線はずっと感じていた。その時から名波の疑問は確信に変わった。どう考えてもこれはストーカー行為というやつだ。

この時までは迷惑を掛けたくないと思っていたのだが、真面目で優しい名波は巻き込みたくないと思うようになっていて、なおさら相談しにくい状況に自分自身を追い詰めていた。

そして、月曜日の昼休みに至るまで、学校では隣の席の有紀にあいさつした以外は誰とも話していなかった。

そんないつもとは異なる状態の名波を、この二人が見逃すわけがなかった。

そう。ファンクラブの会長こと吉永春樹とそのファンクラブの女性幹部こと竹中有紀である。

『黒木名波ファンクラブ』を支えている重鎮の二人がこの名波の違和感を感じ取れないわけがなかった。

会長の春樹に至っては、名波の憂鬱な気配を感じて、有紀に定期的にメールをして名波の状態を報告させていたぐらいである。

それに応えた有紀も前回の作戦で改心したのか、春樹の目となって逐一名波の細かい情報をメールで送り続けた。今日の登校直後から昼休みまでで、軽く200件ぐらいのメールが送受信されていた。


そして今。

ファンクラブの緊急会議が、視聴覚室にて行われていた。

視聴覚室の鍵はもう一人の男性の幹部が管理している。生徒会長という表の顔を持つ男性幹部は、学校中のほとんどの鍵を使用することが出来てしまう強者だ。

視聴覚室内には、会長、幹部2人、会員7人の計10人が揃っている。数名は部活の集まりがあったり、放送部の仕事があったり等で集まれなかった。


「さて急な招集に集まっていただき感謝する。時間がないので手短に話すが、我が名波姫の様子が少しおかしい。この中で、名波姫に何かあったか心当たりのあるものはいるか?」


会員達は互いの顔を見合わせるが、知っている人間はいない様子だった。

春樹も幹部の二人を見るが、ただ首を横に振るだけだった。


「そうか・・・皆、どうしたらいいと思う? これは一大事だ。このファンクラブの情報網をもってしてもわからないとなると・・・」

「会長。よろしいでしょうか?」


会員達の前であからさまにうなだれる会長に声をかけたのは女性幹部の有紀だった。


「どうした?」

「ここは相沢隆と木下拓馬にも応援を頼んでみるのはどうでしょうか?」


会員達から賛否の声が上がった。


「どうしてあいつらに頼むんだ?」

「どう考えても俺たちよりも名波姫と仲がいいじゃないか」

「何か事情がわかるかもしれないしな」

「だからって我々の敵であるあの二人に頼むなんて」


その女性幹部の発言を聞いた男性幹部がおずおずと手を挙げた。


「僕もその方がいいと思います」

「お前もか・・・」

「相沢は名波姫を困らせるようなことをたくさんしているが、頭の回転と行動の段取りの良さは目に余るものがある。木下も変態という欠点を抱えてはいるが、人一倍優しいし、相沢と組むことで倍以上の力を発揮することは間違いないと思います」


さすが生徒会長と言わんばかりの名演説だった。ちなみに生徒会長として生徒一人一人のことを知っておくのは常識中の常識ですね。息をするのと同じくらい当たり前のことですね。

そんな男性幹部の発言を聞いて何も言えなくなる会員達。そして春樹が口を開く。


「・・・わかった。今回は緊急事態ということもあり、あの二人に協力してもらうことを承認する。しかし我々のモットーである『清く正しく裏方に』を守ることを忘れるな! どんな時でも我々は影で名波姫をサポートするのだ。黒子が目立ってはいけないのだ」

「わかりました。ではあの二人には私の方から伝えておきます」

「うん。任せたぞ。女性幹部よ」


そう言ってファンクラブのメンバーは静かに視聴覚室を後にした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると踊り狂います。


今回から少し物語が動きます。

シリアスチックですが方向性は変わりません。

コメディ(笑)です。


では次回もお楽しみに!

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