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番外編・プロポーズ

実家のマンションを出て、アルバイトをしながら大学へ通い、市内中心部での一人暮らしを始めた拓馬。

それにくっついてくるような形で、一花も大学2年になってから拓馬のマンションへと引越しを済ませ、同棲が始まった。

そして大学3年になって就活も始まり、だんだんと慌ただしくなってきた。

そんな雰囲気のなか、拓馬は頭を悩ませていた。

未だに自分が進みたいと思う道が見つからないのだ。

一花は、就職先もすでに決まっており、来年からは職場体験ではないが、研修という形で会計士の事務所で仕事を教わっていくらしい。

そんなトントン拍子で物事が進んでいる一花を間近で見ているせいか、拓馬の不安は大きくなっていくばかりであった。

そしてある休みの日に、一緒に朝ごはんを食べていると、その不安が拓馬の顔に出てしまったのか、一花が心配そうに声をかけた。


「拓馬くん? 大丈夫?」

「あー・・・大丈夫・・・じゃないかな」

「最近なんか調子悪そうよ? 風邪?」

「あー、実はさ・・・」


一花に今の心境を話すと、申し訳なさそうに一花が謝った。


「ごめんなさい。私、自分のことばっかりで拓馬くんのことあまり考えてなかったかもしれないわ」

「一花が謝ることないよ。こんなの今に始まったことじゃないし。それになんとなく大学に行ってただけだから、こうなることはある程度予測できてたし。でもいざこうなるってわかっててもこの状況はちょっと情けないなぁって思ってさ」


自分の気持ちを切実に語る拓馬は、一花の目から見ても落ち込んでいるように見えた。

そんな拓馬を見て、一花は拓馬の表情を伺いながら、ゆっくりと口を開いた。


「拓馬くん。聞いてもらえるかしら」

「ん?」

「あのね、私、ずっと考えてたんだけど・・・もしかしたら私の口から言うことではないのかもしれないんだけど、その・・・ちょっと待ってもらえる?」

「え? うん」


そう言うと、席を立って洗面所へと向かう一花。

そしてすぐに戻ってきて、改めて席についた。


「あのね。私、拓馬くんの作るご飯が好き」

「うん。よく言ってるもんな」

「でね、その、これからもずっと拓馬くんが作るご飯を食べたいなぁって思ってるの」

「・・・うん」

「えっと、その、つまりね、何が言いたいかって言うと・・・」

「・・・・・・」

「私と結婚してもらえないかしら?」


顔を全開まで赤くしながらも拓馬のことをまっすぐに見つめる一花。

その視線と覚悟を受け止めながら拓馬も一花を見つめた。

そしてその返事を返すために拓馬が口を開いた。


「えーっと・・・俺は大歓迎なんだ、けど・・・」

「けど?」

「なんかこんな大事なセリフを一花に言わせちゃったなぁって思って」

「じゃあ拓馬くんも考えてたってこと?」

「まぁね。付き合い長いし、そろそろ落ち着いてもいいかなぁって思ってたんだ。でも男が働いてないのってどうなのかなぁとか考えちゃうわけですよ。で、そうなったらそうなったで、今度はなかなか言い出せなくなっちゃって・・・そしたら一花に先を越されちゃったわけよ」


照れ隠しなのか、一花から目線をそらしながら言う拓馬。

そして拓馬は一花の顔を見て続けた。


「一花がそう言ってくれるのは嬉しい。でも俺としては、大学を出てから結婚したいと考えてる。もしかしたら俺も就職するかもしれないし」

「でも私は会計士はやめないわよ?」

「ですよねー。だったら収入が高いほうが働いたほうがいいのかなぁ?」

「そうなんじゃないかしら? 私は好きな職業でやっていくわけだから、多分苦にはならないと思うわ。そして拓馬くんが、家で待っていてくれるなら私はいくらでも頑張れるわ」


笑顔で言う一花は、とても嬉しそうだった。きっと拓馬と過ごす新婚生活を思い浮かべていたのかもしれません。

そんな一花を見た拓馬は覚悟を決めてこう言った。


「わかった。結婚しよう。一花」

「いいの? 本当にいいの?」

「自分から言っておいて何言ってるんだよ」

「あー・・・なんか夢のようだわ・・・」

「でも籍入れたりするのは大学出てからにしような? これは俺からのお願いだ」

「分かったわ。大学を出てからの1年は忙しいだろうから、卒業直後に籍を入れる感じでいいかしら?」

「おう! もう何も怖くないぜ!」


胸を張って偉そうに言う拓馬。


「ウフフフ。こんなに事がうまく運んじゃって大丈夫かしら。これ死亡フラグとかじゃないわよね」

「殺すな殺すな。大丈夫だよ。夢オチだったりとかもないさ」

「だといいわね」

「よし。じゃあ結婚の約束も取り付けたことだし、ご飯食べちゃうか。冷めたらあっため直すの面倒だし」

「はぁ。私今すごい幸せだわ。何が起きても信じられる気がする」

「一花さーん? 現実世界に戻ってきてねー?」


ふわふわと浮いた状態の一花を呼び戻して、朝食を食べ始めた拓馬と一花。

食べ始めたときと今とではまるで雰囲気が違いましたとさ。





そして大学卒業。


一花は予定していた会計士の事務所への就職が確定し、春からはそこで働くことになった。

結局拓馬は就職はせず、一花の仕事が落ち着くまではアルバイトで生計を立てていくということになった。

そして二人は、卒業した次の日に市役所へと向かい、婚姻届を提出して、晴れて籍を入れました。

一花は『市原一花』から『木下一花』へと名前が変わりました。

そしてさらに次の年には一花は妊婦となり、第一子が誕生することがわかったそうです。


末永くお幸せに。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


さてはて婚約しちゃいました。

この辺の裏話は番外編終了後の活動報告にて。


次回もお楽しみに!

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