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番外編・隆と芳恵と時々希望

高校卒業後のお話です。

「あー・・・俺と別れてくれ」

「・・・わかった」

「じゃあ元気でな」


そう言って芳恵の元から一人の男が去っていきました。

俯いたまま突っ立っていた芳恵でしたが、街中の歩道ということもあって、邪魔になると判断したのか、脇にそれて壁に寄りかかって悲しみに打ちひしがれていました。


「はぁ・・・また振られちゃった・・・」


大学4年の就活真っ最中の時期に付き合い始めたせいか、なかなか会う時間も作れず、会えたら会えたで芳恵の重すぎる愛を受け止めることができなかったらしく、今度の彼氏も芳恵の元から離れていった。

しょぼーんとしていると、なにやら聞いたことのある声が近づいてきました。


「いくら父さんと母さんが居ないからって、外食するのにこんなところまで来ることねぇだろ」

「だってタカ兄の学校見てみたかったもん」

「だからって建物の中まで入ってくることねぇだろ」

「ケチー」

「ケチじゃねぇ。常識だ・・・げっ! 芳恵・・・」


その声に反応した芳恵がゆっくりと顔を上げると、そこには隆と希と望がいました。


「あっ! 芳恵姉ちゃんだ!」

「芳恵姉ちゃん、こんばんわ」

「こんなとこで何してんだよ」

「まぁちょっとね・・・」


いつもよりも元気の無い芳恵を見て、何かを悟ったらしい隆は、頭をポリポリとかいて財布から千円札を一枚取り出した。


「望。これでちょっと20分ぐらい時間つぶしてこい」

「タカ兄・・・わかった。任せて」

「望くんだけズルーイ! 私にもちょうだいよー!」

「二人で千円だ!」

「希ちゃん。行こう」


ブーブー言いながら望に手を引かれていく希。

その二人が行ったのを見届けてから、隆は芳恵に声をかけた。


「さてと。千円も出したんだから話してもらうぞ。ってゆーか、どーせ振られたんだろ」

「・・・今回は私も結構本気だったのにさ」

「お前、本気じゃないのに付き合うってどうなんだよ」

「そこは大人の事情よ。子どもな隆にはわからないよーだ」

「俺だって高校卒業したんだからそれなりに大人なんだけどな」

「私から見ればまだまだ子どもなんですー。・・・まぁいいんだけどさ。また新しい恋でも探すよ」


立ち直ったのか直ってないのかわからないが、軽口を叩けるレベルには戻ったようで、それに安心してフッと隆は小さく笑う。


「意外と前向きだな」

「隆」

「ん?」

「私と付き合わない?」

「付き合わん」

「えーなんでー? 私と隆の仲でしょ?」

「俺は名波一筋だからだ」

「前の女を引きずるなんてどうなのよ」

「何とでも言えばいいさ。お前みたいにホイホイ他の男と付き合うような軽い男じゃないからな」


エヘンと胸を張る隆を見て、芳恵はうらやましそうにため息を吐いた。


「はぁー。私にも私のことだけを考えてくれる彼氏できないかなぁー」

「そんなやついるのかよ」

「うるさいなぁ。もしかしたらいるかもしれないでしょ? ほら、あそこ歩いてるちょっと背の高い人とか」


街行く人の中を歩いている男性を指さす芳恵。


「お前は外見で選ぶから悪いんだよ。もっと中身を見てから選んでみたらどうなんだよ」

「そのころには告白しちゃうもん」

「この淫乱娘が」

「淫乱言うな! でも隆になら襲われてもい・い・よ?」


可愛らしく言う芳恵。

そんな芳恵を心底気持ち悪そうに見る隆。


「無いわ。友達のねぇちゃんと寝るなんてありえねぇわ」

「そこまで言うことないじゃん・・・ん? っていうことは、私が拓馬の姉じゃなかったら付き合ってくれるってこと?」

「いや、そういうわけじゃ・・・」

「ちょっと戸籍書き換えてくる」

「そんなにホイホイ書き換えれるもんじゃないだろ」


隆が走り出そうとした芳恵を引き止めると、芳恵がエヘヘと笑い出した。


「なんだよ、気持ち悪い」

「気持ち悪いって何よ! 超笑顔で微笑んでたのに!」

「タイミングが悪いんだよ! なんで今のタイミングで笑うんだよ。笑う場面じゃねぇだろ」

「隆の顔見たらホッとしちゃって・・・」

「それこそタイミングちげーだろ」

「おーい! タカ兄ー!」


そうこう話していると、時間を潰していた希と望が戻ってきた。


「望。20分って言わなかったか?」

「ごめん、タカ兄。無理だった」

「おい」


悪びれもせずに言う望に軽くチョップを繰り出した隆。


「望くんを責めないで! 悪いのは私なの!」

「そんなことないよ! 悪いのは言い付けを守れなかった僕なんだから、希ちゃんは悪くないよ!」


そうかばい合って抱き合う希と望。

そんな二人の茶番にめんどくさくなったのか、隆が呆れた顔でため息をついた。


「わかったわかった。芳恵。お前も一緒にメシ食べに行くか?」

「えー。私はいいよ。そんな気分じゃないし」

「芳恵姉ちゃん行かないの?」

「私、芳恵姉ちゃんと一緒にご飯食べたいなぁ」

「そ、そこまで言われちゃ断れないなぁ」


望と希による連続攻撃に芳恵の心が折れたようで、仕方なくといったようで一緒に行くことになりました。

そして4人は仲良く歩いてお店へと行きましたとさ。




そしてお会計。


「おいっ! 誰かこの酔っぱらいにも金を出させろ!」

「そうらぞ!」

「お前は黙って財布を出せ!」

「財布らんて無い! アハハハハ!」

「くそっ! 今度拓馬に請求してやるからな!」


そう言って、両親からもらった食事代で足りなかった分を、隆が払いましたとさ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると大変喜びます。

試しに書いてみたらどうでしょうか。


なんて言いながら、高校卒業後の一発目でした。

実は希望と芳恵の絡みって初めてじゃないですかね?

実際は家族ぐるみでの付き合いがあるので、仲はいいです。


次回もお楽しみに!

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