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嬉しさ余ってイタズラ100倍

『相沢隆は、同じクラスの黒木名波と友達になった』

言葉だけ並べると対して変ではないが、少し正確に書くと不思議な文章になる。

『相沢隆は、ここ最近仲良く過ごしていた同じクラスの黒木名波とやっと友達同士になった』

全く意味が分からない。

そんなことを考えながら自分の部屋のベッドで隆はゴロゴロしていた。

なんやかんや言っても、ドSだとかイタズラ好きとか色々ある以前に、隆も花の高校生なのだ。

友達ができて嬉しくないはずがない。思わずニヤニヤしている隆を見ているとそれがよくわかる。・・・少しキモイ。

隆はこの嬉しさを誰かにぶつけたかった。もちろんイタズラという形で。

その作戦のことも色々と考えていた。何を考えているかはお楽しみとして、そのイタズラが決行されるのは次の日だった。




「おはよー!」

「おう」

「今日も良い黒タイツだ!」


元気に二人に挨拶をした名波。いつもよりも1割減でめんどくさそうに挨拶をした隆と、名波の黒タイツに挨拶をした拓馬。


「いきなり下から見るのはやめてもらえませんか?」

「だって黒木の足ってなんかこう、スラーっとしてて無駄な筋肉がついてなくて黒タイツが良く映える足って感じなんだもん」

「なんだもんじゃないよ。顔見て。か・お!」

「顔はそんなに興味ないや」

「うわー。ヒドイ」


すごく残念そうに名波は自分の席へと歩いていった。学校中の生徒が『可愛い』と言う、美少女の名波の顔に興味がないのはこの二人だけかもしれない。

しばらくして先生がやってきて、朝のホームルームが始まった。

このあと、謎のテロ事件が起こることはまだ誰も知らなかった。





今週2回目の体育の授業。

今日は担当の先生がいるので、男子もバスケの試合をした。

体育の授業が終わって教室に戻ると若干の違和感があった。

生徒達は皆、カバンを机の横に掛けるか、椅子の背もたれにリュックを背負わせるかのどちらかのパターンが多かった。

まぁ見ればわかるのだが、カバンの膨らみ具合が半端ないのだ。横に縦にパンパンに膨れ上がっている。

しかもご丁寧にカバンの中身は全部机の上に出してある。つまり空のカバンが膨らんでいるのだ。

不思議な光景に生徒たちは、カバンを突っついてみたりカバンの中に入れていた、没収されかねないものを隠している。

隆とともに教室に戻ってきた拓馬が呟いた。


「またなんかやったのかよ」

「俺のカバンも膨らんでるじゃん」

「あ、ホントだ」


自分の無罪を証言するように、隆は自分のカバンを指さした。机の横に掛かっている隆のカバンもパンパンに膨らんでいた。


「じゃあ犯人は誰だ?」


拓馬が考えていると、教室の中で破裂音が鳴った。


「うぉっ! ビビッたー!」


生徒の誰かが自分のカバンの中身を確認しようとして、チャックを開けたときに中に入っていたものが破裂したらしかった。

カバンの中に入っていたのは風船だった。それもご丁寧にカバンを開けた時に破裂するように細工がされてあった。それを見て、他の生徒もカバンを開けていく。そのたびに「パン! パン!」と教室中で破裂音が鳴り続けた。


「なんだこれ! 楽しい!」

「私風船が割る音ダメなんだよね。キャッ!」

「俺のやつ割れないで空気だけ漏れてきたし!」


なんかみんな楽しそうです。その教室の様子を見ていた拓馬が隆の顔を見た。拓馬は最初から最後まで隆が主犯だと思っています。

案の定、ニヤニヤと笑っているので、拓馬の中で隆が犯人であることは確定事項となった。


「やっぱり隆だろ」

「まぁこんなことするのは俺しかいないからな」

「いつやったんだよ」

「さっきの体育でトイレ行った時」

「お前大きいほうだって言ってたじゃん」


体育でトイレに行ったときに、教室に戻ってきて、全員のカバンに風船を仕込んだということらしい。完全に計画的犯罪だった。隆のやるイタズラなので準備と計画の内容に無駄なことは何もなかった。

しかしここで終わらないのが隆だ。


「さて、俺もそろそろ開けるかな」


そう言って自分の席に行きカバンを開ける拓馬。案の定、チャックを開け始めたところで豪快な破裂音が鳴った。

そんな破裂音が鳴り響いた授業間の休み時間はあっという間に終わり、次の授業の先生が来たことによって全員が落ち着きを取り戻して大人しく席に着いた。

次の授業は数学。担当の先生は女の先生です。


「はい。では授業を始めま、キャッ! ・・・今の音は何っ?」


先生が教卓に教科書等の荷物をドサリと置いたときに、またしても破裂音が響いた。

隆は教卓の中にも仕掛けていたのだ。生徒たちは突然の破裂音に笑いを堪えている。先生は何事かと思い、辺りをキョロキョロとしていた。


「先生どうしたんですか?」


一人の生徒が聞いた。


「今なんかパンって音しなかった?」

「え、してませんよ?」

「してないしてない」

「じゃあ先生の聞き間違い?」

「先生疲れてるんじゃないの?」

「幻聴聞くとかちょっとヤバイよねー」


相変わらずのノリの良い生徒たちである。当の先生は、疲れているのかしら?、と首をかしげている。

そんなこんなで隆の設置した風船トラップ事件は無事終了した。






その日の夜。


隆は部屋に戻るといつものようにベッドに横なった。そして一人反省会をする。いつもならこんなことはしないのだが、今日は少し失敗してしまったので反省会である。


『結局、拓馬と黒木は気づかないまま帰っちゃったなぁ』


頭の中でたらればなことを考えるが、今日はいつもより大掛かりなイタズラになってしまったので、隆も疲れていた。そのせいもあってか、すぐに深い眠りへと引きずり込まれてしまった。


拓馬と名波が家に帰ってカバンの中を見ると、拓馬には『黒タイツの種類について』の本、名波には『ドM入門』の本がそれぞれ教科書に混ざって入っていたのはまた別のお話である。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とかありましたら書いていただけると執筆意欲とかが高まります。


久々にイタズラらしいイタズラ(ちょっと大掛かりすぎた)の回でした。

隆はちょっと変わったタイプのツンデレだと僕は思ってます。


では次回もお楽しみに!

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