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しみじみ

隆と名波が並んで帰り道を歩いていました。

二人とも講習がありこの時間まで残っていたのですが、普段なら隆の講習が遅くなるのですが、その講習がいつもより短く終わったのです。そして学校の玄関でばったり会った隆と名波が一緒に帰っているのです。


「結構一緒に帰れるね」

「どういう意味だ? 捉え方によっちゃ俺と帰るのが辛いみたいに聞こえるんだけど」

「そんな意味じゃないですー。このひねくれ者め」

「冗談だ。意外と一緒に帰る機会が多いってことだろ」

「そうそう」

「今日のは(まれ)だろ。しばらくはもうこんなことないだろうな」

「ですよねー」


少し寂しそうに笑う名波。そんな名波の表情を見て、隆の気持ちはちょっとだけ揺らいだが、グっと我慢して明るい話題を提供した。


「そういえば勉強の進行具合はどうだ?」

「うーん、まずまずかな。私ってば要領悪いから、なんでも覚えようとしちゃうんだよねー」

「知ってる」

「だから逆に全部覚えてやろうかと思って」

「はい落第ー」

「冗談だし! いくら私でもさすがにそれは無理だなー」

「俺でも無理だ」


アハハーと笑いながら歩く二人。


「隆はどうなの?」

「俺は順調ー。講習に行っても確認しに行ってるようなもんだから対して一人でやるのと変わらないしな」

「じゃあなんで講習行ってるのさ」

「こんな問題出るぞっていうのを聞けるだろ。過去問とか見てても絶対にそれが出るわけじゃないし、それなら教師間の情報網から得た情報を聞くのが一番確かだろ。学校側としても、うちの高校から北大進学者が出れば、それなりに宣伝にもなるしな。まさに一挙両得だろ」

「一石二鳥だね」

「・・・勉強し直したほうがいいんじゃねぇのか?」

「えっ! 違う意味なの?」

「頼むぜ未来の先生ー」


天然ボケをかましている名波を笑う隆。

意味としてはあまり変わらないのでどちらを使っても間違いではありませんが、根本的な意味が違うので、皆さんも気を付けましょう。


「そんなにいうなら隆が先生になればいいのに」

「嫌だよ。ガキ共に勉強教えるなんて何が楽しいんだ」

「じゃあなんで弁護士になりたいの?」

「悪い奴が調子乗ってて、逆転されて悔しがる顔を見たいんだよ」

「嘘だー」

「まぁ嘘だけどな。なんか人助けみたいなことをしたかったんだよ」

「人助け? 隆が?」


ニヤニヤとしながら聞く名波。


「なんだよ。人がせっかく真面目に答えてるのに。教えてやんねぇぞ」

「ごめんごめん。で?」

「ほら、人助けって言っても色々あるじゃん。ボランティアから超高い金取るやつまでさ。そーゆー意味での弁護士なんだけど、困ってる人っていうのはホントに困ってるんだよ。そんな時に『弁護士に相談してください』とか言われても、金が無かったら相談するだけで終わりじゃん? だから、ちょっと弁護士の常識を覆してやろうかと思って弁護士になるわけ」

「へぇー。ちゃんと考えてるんだねー」

「まぁな。そんでしょうもない事件の弁護とかを受けたり、ちょっと変わった事件を受けたりしてみたいなぁって思ってさ。ちょっと楽しそうじゃん? 人間なんてみんなどこかしらバカなんだし、そんなバカバカしい事件を山のように受けるのが俺の目標ってわけ」


楽しそうに将来の目標を話す隆を見て、名波はフフッと笑った。


「何がおかしい」

「隆ってこんな人だったっけなぁって思ってさ」

「俺はいつもこんなだ。笑いをこらえながら、真面目に相談してきてる人を真面目に対応するのも夢だ」

「それは隆らしいと思う」

「だろ」

「「ハハハハ」」


そうこう話しているうちに駅に到着して、ちょうどやってきた電車に乗り込みました。

座席は空いていなかったので、二人はドアの近くに立って話を続けた。


「こうやって名波と帰ったりできるのももう残り少ないんだな」

「そうかもねー。そう考えると隆と拓馬と会ってから色々あったなー」

「もう回想かよ。さすがに早すぎるだろ。卒業までまだ半年もあるぞ」

「別にいいじゃん。3学期は自由登校なんだから、実際はあと3ヶ月ぐらいしかないよ?」

「だからってそれは反則だろ。回想はもう少し先にしろ」

「えー。ちょっと振り返りたい気分だったのになー」

「せめて受験終わってからにしてくれ。勉強中に色々思い出したら厄介だ」

「厄介って・・・わかりましたよーだ」


笑いながら言う名波はくるりと反転して、窓の外を見ました。

そして隆はその後ろ姿を見ながら思いました。

あと半年で高校生活が終わってしまうのだ。そうなるとこんな会話をすることも無くなるのだろうか?

もしかしたら高校卒業後はあまり会えないのではないか?

色々なことが頭をよぎりましたが、今は名波に言いたいことを言いたいと思いました。


「名波。ブラジャー透けてるぞ」

「えっ!?」

「白いシャツに黒いブラはやめとけ」

「な、なんでそんなこと言うのさ!」

「だって気になったんだもーん」

「だもーんってキモっ! もう、この変態!」

「変態でもセクハラでも結構だよ」


そして隆は心の中でつぶやきました。


『そんなんで他の男に取られたくないからな』と。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とかあれば書いていただけると嬉しいです。


えーと爆弾爆弾・・・みつからない・・・

隆は結構一途なんです。


次回もお楽しみに!

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