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黒タイツ成分

「いやー今年もいい季節がやってきましたなー!」

「は?」


いつものように登校していると、隆に向かって拓馬が変なことを言い始めた。


「ほら! 周りを見てみなさい!」


そう言われた隆が周りを見てみたが、特に異常はなかった。


「・・・なんのことだ?」

「まだわからないのかよ! この鈍感野郎め! そんなんだから名波に振られるんだぞ!」

「振られてねぇよ。互いのためを思って別れたの。もういいさ。お前なんか一人で学校に行って委員長のおかずにでもなってろ」

「まぁまぁ。落ち着きたまえ」

「なんだコイツ・・・テンションがキモイ・・・」


笑顔で隆をなだめてくる拓馬は気持ち悪かった。


「ホントにどうしたんだ? とてつもなく気持ち悪いぞ?」

「失礼な。ただ、今年もこの季節が来たんだなーって思ってさ」

「この季節?」


首を傾げる隆に、フッフッフッと気味悪く笑い、前を歩く女子高生に人差し指を向けた。


「アレを見よっ!」


その指先には、スカートから見えている足を覆う黒タイツの姿があった!!


「あぁ、そういうことね」

「なんだよその反応は! もっと喜べよ! 世界中の男子の楽しみが一つ増えてるんだぞ!」

「世界中の男子の何%が喜んでるんだよ。お前の性癖を世界中の男子の性癖にするな」

「つれないなぁ」


そう言って前を歩く女子高生の足を見たり、ななめ前を歩く女子高生の足を見たり、時々振り返って後ろを歩く女子高生の足を見たりと、拓馬はとても楽しそうだった。

黒タイツという要素が加わるだけで、こんなにも世界が楽しく感じるのかー!というような表情で歩いていました。


そして何も事件を起こすことなく、無事に学校へとたどり着いた拓馬と隆。

隆が拓馬と別れて自分の教室へと入っていくと、一花が先に登校しており、席に座っていた。


「おーっす」

「あらおはよう。黒木さんは一緒じゃないの?」

「委員長まで嫌味か」

「冗談だと言って欲しいわ」


隆がカバンを机の横にかける時に、ふと一花の足が見えた。


「おっ! 委員長も黒タイツか!」

「そうよ。涼しくなってきたら、黒タイツを履くのは、木下君と付き合う上での最重要ポイントよ」

「朝も拓馬が大喜びしながら登校してたぞ」

「・・・それはほかの子の足を見てってことかしら?」

「ちょっと顔が怖いです・・・まぁ正確には黒タイツを見てたんだけどってどこ行くんだよ!」


席を立ち上がり、スタスタと教室の入口へと歩いていく一花。

そして振り返って一言。


「決まってるじゃないの」


一花の笑みの裏に隠された怒気を見抜いた隆は、あえて付いていこうとはせずに、大人しく教室の中で席に座って勉強をしていることにした。


そして拓馬が、名波に黒タイツを履いてくるようにお願いという名のセクハラをしていると、教室に一花が入ってきた。


「木下君。ちょっといいかしら」

「うわっ。委員長、怖っ」

「ん? どうした? ってさすが一花! もう黒タイツじゃないか!」

「えぇ。木下君が喜んでくれるかと思って履いてきたの」

「もう一花大好きだっ!」


そう叫んだ拓馬の声に、一花の動きがピタリと止まった。

どうやら思考の処理速度が追いつかずに、フリーズしてしまったようです。


「ん? 一花? どうした?」

「あ、あまりこーゆーところでそういうこと言っちゃダメよ。恥ずかしいから」


顔を赤くして言う一花。

怒気かどこかへ消えてしまいました。


「あーごめん。あまりの嬉しさにテンションが上がっちゃった。てへっ」

「ちょっと委員長からも言ってあげてよー。朝から拓馬が気持ち悪いんだけどー」


名波が一花に助けを求めました。


「気持ち悪くないわ。木下君はいつでも木下君よ」

「えー・・・」


しかし見当違いの答えが返ってきてしまいました。

まるで後ろ姿だけを見てナンパしようと前に回ったら、とてつもなく不細工な顔だった時のような感覚でした。酷い例えですね。


「そんなことより一花は何しに来んだ?」

「もちろん木下君に私の黒タイツ姿を見せるためよ」

「さすが一花だな」


そんな謎トークをしている二人からさりげなく離れると、教室を出て隆の元へと行きました。


「隆ー」

「おう。どした?」

「委員長と拓馬が気持ち悪いから逃げてきた」

「委員長って怒りに行ったんじゃなかったのか?」

「なんか拓馬に大好き!って言われて機嫌直したみたい」

「なんともまぁ・・・あいかわらずだな」

「だね」


アハハと笑いあって、少し変な空気が一瞬だけ流れました。


「な、なんかいつもどおりだねっ」

「そ、そうだな。意外と普通になるもんだな」

「はぁ。よかった」

「何がだよ」

「これで隆と気まずくなったらなんか嫌だもん」

「そりゃ俺だって同じだ」


そして笑顔で見つめ合って言った。


「これからもよろしくね」

「こっちこそ」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


作中では秋です。

拓馬が気持ち悪くなる時期です。


次回もお楽しみに!

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