お誘い(名波と一花)
名波と一花が二人でお出かけしていた。
二人で買い物に出かけることは特に珍しいことではなくて、時々こうやって出かけている。
拓馬と隆も彼女同士が仲良いのは嬉しいことなので、特に止めたりとかということはなかった。
今日は、受験勉強の息抜きということで一花のほうから名波を誘って街中へと来ていた。
そして一通り見終わって、近くの喫茶店でおしゃべりをしていた。
「今日は付き合ってくれてありがとね」
「私だって楽しかったし全然いいよ」
「そうね。結局黒木さんしか買ってないものね」
「そう言われてみればそうだね」
小物がたくさん売っているお店で、名波がケータイにつけるキーホルダーを買っていた。そして一花は、買いたいものがあったわけでもなかったので何も買わなかった。
「木下君、今何してるかしら?」
「拓馬なら夜ごはんの仕度とかしてるんじゃない?」
「ふふっ。想像出来るわね」
「あはは。拓馬っぽいもんね」
全く脈絡の無い会話で笑い合う名波と一花。
会話の内容には特に意味は無いのです。一緒に楽しい時間を共有できればそれでいいのです。
「ん?・・・あっ、花火大会か!」
「どうかしたの?」
急に名波が思い立ったかのように声をあげた。
なんのこっちゃというような表情で一花が名波に問いかける。
「なんかイベントあったような気がしたんだけど、そういえば今週末に花火大会あるよね」
「あー、豊平川の?」
「そうそう」
札幌の街中近くを流れて石狩街道を通り海へと流れているのが豊平川である。
そこの川で行われる花火大会には毎年多くの見物客が押し寄せている。
少し前まではいくつかの新聞社が週末ごとに花火大会を行なっていたのだが、最近では一回だけしか行われていないので、大変な賑わいを見せている。
「花火大会かぁ・・・」
「委員長は浴衣着てくの?」
「そうね。おととしの花火大会は友里恵と一緒に行ったんだけど、その時は着ていったわ」
「ふーん。私も着ていこうかなー」
「・・・やっぱりまた4人で行くのかしら?」
「ん?」
少し困ったような照れくさそうな表情で名波に聞く一花。
その質問の意味を正しく汲み取ったらしい名波は、ニヤリと悪そうな笑みを作った。
「ははーん。そーゆーことねー」
「別に黒木さん達と行くのが嫌ってことじゃないのよっ? ただたまには木下君と2人でイベントとか行きたいなぁって思っただけで」
顔の前で手を振りながら弁解をする一花。
そんな一花に名波は笑顔で答えた。
「たまにはいいんじゃない? 常に4人で行動しなきゃいけないわけじゃないし」
「ほ、ほんとっ?」
パァっと笑顔を浮かべる一花。
「もちろん! だって委員長と拓馬は付き合ってるんだから、二人きりてデートしてたっておかしくはないでしょ。っていってもあとは拓馬次第なんだけどね」
「そ、そうよね」
「というわけで、聞いてみよう!」
そう言ってカバンからケータイを取り出して、ポチポチと文章を作っていく名波。
それを見た一花も、カバンからケータイを取り出してポチポチと文章を作っていく。
そして文章を作り終わって、せっかくなので同時に送った。
「なんて送ったの?」
名波に聞かれた一花は、送ったばかりの文面を見せた。
『件名;デートのお誘い 本文:今度花火大会があるのですが、一緒に見に行きませんか? 今回は木下君と二人で行きたいです。』
「敬語って」
「仕方ないじゃない。木下君に送るなんて緊張しちゃって文章が思い浮かばないのよ。そういう黒木さんはどんなの?」
一花に文面を見せる名波。
『件名:花火大会! 本文:今度の花火大会、一緒に行かない? 今回は久しぶりに二人で行きたいんだけど・・・どう?』
一花のメール画面と決定的に違うのは、可愛いキャラクターたちが動いているのだ。背景もピンクになっていました。
「デ、デコメ・・・さすが黒木さんね」
「妹達とメールしてると自然とね。委員長も使えば?」
「そんなのわからないわよ。それに私のキャラじゃないわよ」
「その前に敬語だよね」
「そこは勘弁してほしいわ」
そうこうしていると、二人のケータイが同時に鳴った。
そして送られてきたメールを見ると、こう書いてあった。
『件名:花火大会 本文:俺も二人きりで行きたいと思ってたところだ!』
「なんて書いてあった?」
「多分同じよ」
「やっぱりか。隆達、今一緒に居るんだねー」
「そうみたいね。じゃあこれは決定ってことね」
「委員長嬉しそうだねー」
「否定はしないわ。もう楽しみで仕方ないわ」
「そうと決まれば待ち合わせ場所とかかぶらないようにしないとね」
「そうね」
そして拓馬と隆に返信をして、楽しそうに話し合いながら当日の予定を決める名波と一花であった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
花火大会は別行動になります。
次回もお楽しみに!