水着評論
「すげー泳いだ」
「来てよかった?」
「おう」
「それはそれは素直でよろしい」
まだ海でイチャコラしている拓馬と一花を置いて、休憩するために先に上がってきた隆と名波。
海に入っている二人よりも体力のない二人は、沖に上がるとどっと疲れが出てきて、そのへんの砂浜に二人で並んで座った。
「うおー・・・やっぱ水の中って疲れるな」
「あれだけビーチボール取りに行ったりジャンプしたら疲れるよね」
「お前はあんまり疲れてるようには見えないんだけど」
「楽しいってほうが上回ってるのかもしれないよ」
「そりゃすげぇな」
「でも家帰ったら速攻で寝ると思う」
「アハハ。お前はそんな感じだな」
海に入っている拓馬と一花は、ビーチボールをトスやレシーブで落とさないようにしながら、何回続くか頑張っていた。
「あっ。そういえばその水着買ったのか?」
「うん。テスト終わった次の日に委員長と二人で買いに行った」
「お前ら二人で出かけたりするのか」
「そりゃ行くよ。だって友達だもん」
「へぇ。なんか意外だわ」
「そう?」
「なんかお前と委員長って、全然タイプ違うじゃん。二人でいるときって何話してんの?」
「それは乙女の秘密だわよー」
「はいはい」
「ところでー・・・」
「ん?」
途中で言葉を切った名波が気になったので、隆が名波のほうを見ると、座ったまま両手を広げた名波がいた。
「この水着どう?」
「どうって言われても・・・似合ってるぞ」
「よかったー。委員長がね、相沢君ならこの水着でイチコロよって言うからこれにしたんだけど、大正解だった!」
「委員長のチョイスかよ」
「だって自分だとなかなか決められなくて・・・。で、何個かまで絞って、そこから委員長に選んでもらったってわけ」
「ふーん・・・」
それを聞いて海でバシャバシャしている一花を見た隆。
「じゃああの委員長の水着は名波が選んだのか?」
「違うよ。あれは委員長が最初から決めてたんだって」
「まぁ確かに委員長ならあーゆーのがしっくりくるよな」
「だよねー。委員長ってスタイルいいもんねー」
「だよなー」
「隆もあのくらいスタイルがいいほうがいいの?」
思わず名波のほうを見る隆。
少しだけ名波のからだを見て、視線を逸らす。
「・・・いや、俺は別に」
「なんで今私のからだ見てから答えたのさー。やっぱり委員長みたいなナイスバディのほうが好きなんだー」
「いやいや、誤解だって。お前がそーゆーこと考えてるからそう思うだけで、俺はお前のからだと比べてみたんだって」
「おんなじじゃん」
「最後まで聞きなさい。で、結果、そんなにからだには興味無いなと思いました。おしまい」
「興味無いって、健全な高校生としてどうなの?」
「いいだろ。そこは人それぞれってことにしとけよ。でも委員長はスタイルいいなぁって思うよ」
「私は?」
「なんで比べたがるんだよ」
「いいじゃん。ねぇ、どうなの?」
名波に迫られて困る隆。
隆としては『スタイルいいなぁ』とは言ったものの、それ以上の感情は持ち合わせていないので、名波にどうだと聞かれてもなんと答えたらいいのか分からないのです。
「んー・・・可愛いと思います」
「んー・・・許す!」
「・・・なんだそれ」
「まぁ私もそんなに気にされても困るしさ」
「そんなもんなのかよ」
「そんなもんですよ」
そう言って、体育座りをしていた足を前に投げ出して座る名波。
「おっ。そういえば、拓馬の影響かどうかはわからんけど、俺も名波の足は結構好きだぞ。なんてゆーの? こう、無駄な肉がついてないというか綺麗な形してるというか」
「ホント? 拓馬に褒められるとちょっと気持ち悪いけど、隆に褒められるとなんか嬉しい。ありがと」
「いえいえ。どういたしまして。まぁお前の事は外見で好きになった訳じゃないんだけどな」
「それは私だって同じだしー」
少し顔に笑みを浮かべながら海を見る二人。
「アレだよね。次にこうして4人で海とか来るのっていつになるんだろうね」
「さぁな。大学とか入ったら必然的に忙しくなりそうだからな」
「なんかゼミとかサークルとかあるんでしょ?」
「そうそう。それも含めて大学生活ってやつだからな」
「そうだよね・・・なんか寂しいね」
シュンとする名波。
「今から寂しがってどうするんだよ。まだ高校生活は終わってないんだぞ。それどころか夏休みだって始まったばっかりじゃねぇか」
「でも勉強ばっかりするんだなぁって考えると大変だなぁって思うよね」
「これからの未来のことを考えると、こんなもんなんじゃね? 今が一番の頑張りどきかもしれないしさ」
名波を励まそうとして、隆が頑張って話す。でもこーゆー場面での励まし方をよく知らない隆は、拓馬や一花のように次々と言葉が出てこないので、名波が早く回復してくれることを祈りながら話していた。
「それに、まだ学祭だってあるし・・・」
それでも名波は海を見たまま、寂しそうな顔をしていた。
「・・・なぁ名波」
「ん?」
「そんなに寂しいか?」
「んー・・・寂しいか寂しくないかって言われたら寂しいけど、こんな気持ちも今だけなんだーって考えると、余計に寂しくなっちゃって・・・」
「ちょっと気にしすぎだ。拓馬だってお前だって、そこまで高いランクの大学に行くわけじゃないんだから、ある程度出来てれば受かるって。俺と委員長だって・・・まぁお前らから見たら高いランクなのかもしれないけど、それなりに実力に見合った大学に行くんだから、大したことないって。ちょっと頑張れば行けるって。そして息抜きみたいな感じで、こーやって遊べばいいじゃん。勉強の合間に休憩は大事だ」
『それに冬はボードにも行くだろうしな』と付け加えた。
ここで隆が自分なりに励ましてくれているのだと気づいた名波は、ハッとして隆のほうを見る。
隆の目は、大丈夫だから、安心しろ、というような意味が込められているようだった。
「・・・ありがと」
「・・・気にすんな。それよりも今を楽しんどけ」
「だね」
「あの二人がお前のそんな顔見たら、気を使っちゃうだろうからな」
「気を付けます」
「だから・・・」
隆が顔をポリポリとかいて照れくさそうにして名波に言った。
「俺にはそうやって心配かけていいからな。一応彼氏だし」
その言葉に驚いた名波は、少し恥ずかしくて小さく笑ったあとに、照れくさそうにしている隆の腕に抱きついた。
「ヘヘっ。隆、大好きっ」
「おう」
「なんだなんだー? 二人してイチャイチャタイムかよー」
「邪魔しちゃ悪いからもうちょっと遊んできましょうか?」
「うるせー。普通に戻ってこい」
拓馬と一花に冷やかされながらも、隆の腕を名波は掴んだままでしたとさ。
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