暑さ全開
7月。
テスト勉強と銘打っての授業はほとんど自由時間となっていた。
今日はとにかく暑い。暑いのが苦手な隆は机の上でヘタっていた。
席替えをしてしまったが、なんでか一花との距離は変わらずで、今日も隆の横には一花が座っていた。
「相沢君。気分悪いの?」
「あぁ? ・・・暑いのダメなんだ・・・もう夏とか無くなればいいのに」
「私も暑いのは苦手よ」
「はぁ? 委員長、全然汗もなんもかいてないじゃん」
「こう見えて我慢してるのよ。暑いって言うから暑いのよ」
下敷きで扇ぎながら、長い髪を揺らした。
「そうだよなぁ。暑いよなぁ。拓馬は暑いの好きだって言ってるんだ。意味わかんねぇよ」
「だってそれが木下君だもの。人それぞれよ」
「マジかよー。委員長って結局それで落ち着くよなー」
「そうね」
「そんなことよりやっぱり暑いなー・・・」
「動くと暑いのよ。私だって今ちょっと走ったら汗だくになれる自信あるわよ」
「俺なんか風が止んだら汗かく自信あるぞ」
窓から入ってくる風だけが隆の命を繋ぐ生命線だった。
「あぁ・・・」
「相沢君。ちょっとうるさいわ」
「・・・スマン」
一花の一喝が決まったー!
そしてシャツの胸元をつまんで、バフバフと空気を送り込んだ。
「はぁ。相沢君が暑い暑いって言うから、暑くなってきたわ」
「そういやそんなに髪長いけど切らないのか?」
「そうね。木下君からOKが出たら切ろうかしら」
「委員長は切りたいのか?」
「どうかしらね。多分短くしたほうが楽だし、ちょっと切りたいかも」
「そんなら切っちゃえよ」
「・・・女子はライバルを減らすために、髪を切るのを勧めたがるみたいよ」
「マジで?」
「相沢君。女の子みたいね」
「やめてください」
一方、拓馬と名波のクラスもテスト勉強と銘打った自由時間だった。
「いやー、あつはなついねー」
「えー、なにそれー。つまんない」
「まぁ夏だからな。仕方ないさっ!」
「拓馬元気だねー」
「俺は夏に生きる夏男だからな!」
「拓馬6月生まれじゃん」
「夏が好きなんだよ! 暑いとなんかテンション上がるんだよ! わかんないのかね?」
「私は別にわかんないけど、でも暑いのは嫌いじゃないよ」
「だよなー。隆なんか夏になると常にへばってるんだぞ」
隆がへばってる様子を再現しようとして、拓馬も机の上に突っ伏した。
それに習って名波も同じように机に突っ伏す。しかしすぐにからだを起こす。
「うわっ! これって突っ伏したほうが暑くない?」
「でも隆はよくやってるぞ? 暑いってよりは、それで体力がどんどん失われていくーとか言ってた」
「ふむ。今度聞いてみよう」
そう言ってまた勉強へと戻る名波。
自由時間と言えども、受験勉強を隆に教わっている身の名波としては、自由時間も勉強するのが常識だと思っています。
それに比べて拓馬は、同じように隆に勉強を教わっているのだが、教科書をめくっているだけで何もしていません。一応受験生なんですけどね。
「また勉強かよー」
「そうだよー。だってそろそろ勉強始めないと、受験とかもあるし」
「そうだけどさ。こう暑いと勉強する気力もなくならね?」
「さっき暑いの大丈夫って言ってたじゃん」
「それとこれとは違うのだよ。勉強はいつでも嫌いです。なにかと理由があればそれを利用したくなるものです」
「うわーサイテー」
英単語を覚えながら、苦い顔をする名波。
それを聞いた拓馬はちょっと申し訳なさそうに名波を見た。
そして名波の英単語の単語帳を横からのぞき込んだ。
「うわー。さすが名波さん。真面目ですなー」
「だってこのぐらいやらないと覚えられないじゃん」
「覚えたやつ外していけば数減ってくじゃん」
「・・・ハハハ。わかってますがなー」
「・・・ですよねー。さすが名波さーん」
名波は今日も真面目ちゃんでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
と、時が飛んだ・・・?
次回もお楽しみに!