足
昼休み。
いつものように4人でお昼を食べていた時に、名波が一花に向かって切り出した。
つ
「ねぇ委員長」
「なにかしら?」
「委員長っていつまで黒タイツ履いてるの? 暑くない?」
「・・・暑くないわ」
隆と名波が何かを察したような顔で一花を見る。
その視線に気づいたのか、恥ずかしさで顔をそらす一花。
何も分かっていない拓馬が一花と隆達を交互に見やる。
「えっ? なになに? どういうこと?」
「お前は罪な男だよ」
「そうだよ。拓馬。ちょっと生まれ変わってきたら?」
「名波までなんてことを・・・俺は俺だ。別に迷惑かけてる訳じゃないんだからいいだろー」
「いや・・・」
胸を張る拓馬からお弁当をパクパクと食べている一花へと視線を移す。
その視線につられるように拓馬も一花を見る。そして無意識に黒タイツへと目をやる。
「はい、ストップ。今、どこ見た?」
「黒タイツだけど」
「それが迷惑なんだよ。ホント生まれ直してこい」
「相沢君。いいのよ。木下君は生まれ直しても生まれ変わってもきっと変わらないわ」
「さすが一花。いいこと言うじゃん」
「「「・・・・・・」」」
何も気づいていない拓馬に隆が説明した。
「あのな。委員長がまだ黒タイツを履いてるのって、お前のせいなんだからな」
「俺? そりゃあ黒タイツが好きだけどさ」
「その発想が地味に間違ってるんだよ」
「えっ? 一花って黒タイツ好きなんだろ?」
「そんなわけあるか。自分で言った言葉ぐらい責任持てよ」
「いいのよ。だって私は木下君のものなんだから」
「もしかして暑いのか?」
拓馬にそう言われた一花は思わず黙ってしまった。
それを聞いていた隆と名波は呆れたように顔を見合わせた。
「・・・暑いわよ。でもこれ脱いじゃうと、木下君に気づいてもらえないような気がして・・・」
「なんだよ。別に無くたって一花のことはわかるって」
「そんなこと言って前例があるから怖いのよ」
「あー・・・」
付き合う前のことを思い出す拓馬。
あの時の魔の1週間は大変でしたね。
そして一花が拓馬に向かって話しかける。
「もしもこれを脱いでも分かってくれるっていう証拠があるなら受け付けるわ」
「俺の溢れんばかりの愛を受け止めてくれ!」
「わかったわ。明日から脱いでくるわ」
「意外と簡単だなっ!」
思わずつっこんでしまった隆。無理もありません。強固な城壁かと思って挑んでみたら、実はハリボテでしたーというような状況ですね。
そしてわずかに赤面している一花に、名波が問いかける。
「えっ、いいの? 委員長ってそれでいいの?」
「いいのよ。木下君が大丈夫って言ってくれただけで安心できるわ」
「じゃあ今までのやりとりってあんまり意味なくない?」
「そんなことないわよ。木下君から愛の言葉を聞けたわ。ジュル」
よだれが出てしまい、手の甲で口元のヨダレを拭う一花。
「拓馬はあれで大丈夫なのか?」
「一花の事は好きだけど、俺は黒タイツが好きだからな」
「ちゃんと会話のキャッチボールをしてくれ」
「大丈夫だって。さすがに忘れるはずないだろ」
自信満々に言う拓馬を、少し心配した様子で見る隆と名波。
そして次の日。
朝、拓馬と隆が廊下で話していた。そこへ宣言通り黒タイツを脱いで登校してきた一花。
「おはよう」
「おう」
「おーっす。おはよう。一花」
「おはよう。木下君」
顔を見合わせてニコッと微笑む二人を見て、少し心配していた隆は小さく息を吐いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると発狂します。
ちょっと書きたい話を書いたらいつもより短いのがいくつかできちゃいました。
しばらくは短めが続きます。
次回もお楽しみに!