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雨宿り

一日の授業が終わって、学校から家へと帰ろうとした拓馬と一花は学校の玄関で足を止めていました。

周りには拓馬達と同じように玄関で足を止めている生徒がちらほらといました。

折りたたみ傘をカバンに入れっぱなしにしていた生徒は、これみよがしに目の前で出しては外へと歩いていきます。違う生徒は、雨に濡れながらも歩いて帰るようで、傘も差さずに雨の中へと歩いていきました。

今、外は天気予報が見事に外れての大雨が降り注いでいます。ものすごい音とともに雨と雷が鳴り響いていました。


「すごい雨だな」

「そうね」

「はぁ。こんなことなら折りたたみ傘でも持ってくるんだった」

「私は放課後をこんな風に木下君と過ごせて嬉しいわ」

「一花はどこでも楽しそうだもんなー」

「木下君と一緒だから楽しいのよ」


少し呆れたような顔をして、また外へと視線をやる拓馬。


「これ降り止むのか?」

「降り止まなかったらどうするの?」

「うーん・・・濡れて帰るしかないだろ」

「せっかく木下君の家にお呼ばれしたのに、びしょ濡れで行くのは気が引けるわね」

「ん? そこは気にしないけど」

「私が気にするのよ。タオルとか使うだろうし、それに着替えだって・・・」


そこまで言って一花が止まった。

どうしたのかと思って拓馬が見てみると、顔を赤くして頬を押さえて小さくブツブツと呟いている一花がいた。


「もしかして着替えって木下君の着ちゃうの?そうなったら私どうしたらいいのかしら?それとも木下君はびしょ濡れの制服姿に萌えるタイプ?いや、でもそんなことをここで考えたら変な女だと思われちゃうんじゃない?でもどう考えてもこのまま行くと木下君の服を借りることになるわよね?っていうことはその服を木下君が着るわけで・・・」


ものすごい妄想タイムだったらしく、拓馬はフフッと笑ってまた外へと視線を戻した。

拓馬は、一花の自分への一途な思いとか、ふと見せる笑顔とかにも惹かれたので、こうして付き合っている訳ですが、一番の要因は『一緒にいて楽しい』ということだった。

隆も名波と一緒にいて楽しいと感じるように、拓馬から見ていても隆と名波は楽しそうに見えるのです。

少しはイチャイチャしてるところを見せられる時もありますが、二人を見ていて羨ましいと思ったのです。そして自分も二人みたいな恋をしてみたいと思ったのです。

そうして一花と付き合って、こんな風に一花が暴走するのを見るのも面白いのです。一緒にいて飽きないという存在は大きいですね。


「はっ!・・・そんなわけで木下君の家に行くのはちょっとご遠慮するわ」

「なんでそうなるんだよ。もうここまで待ったんだから来たらいいじゃん」

「これはこれよ。もし木下君の家にびしょ濡れで行ったら、自制心・・・じゃなくて、正気でいられる気がしないわ」

「あんまり変わってねぇよ。大丈夫だって。着替えとかなら姉ちゃんのとか着ればいいし」

「そ、そう? でも・・・」

「何気にしてんだ?」

「なによ。人の気も知らないで」

「一花の考えてることなんて俺がわかるはずないだろ」

「・・・それもそうね」

「それはそれでひどくね?」

「フフフ。あら、雨止んできたわね」


そうこうしているうちに、通り雨だったようで、だんだんと雨が弱まってきた。


「この調子ならもうちょっとで帰れそうだな」

「残念だけどそうみたいね」

「残念って、なんでだよ」

「だってこのまま雨が止まなければ、木下君とこの時間をもっと楽しめるじゃない」

「何言ってんだ。まだ先は長いんだからいいじゃん」

「あらら。私の愛は重いわよ?」

「望むところだ」


ちょっとしたプロポーズのようなやりとりをした拓馬と一花。

それを合図にするかのように降っていた雨が止んで、雲の隙間から光が降り注いでいた。


「さて。雨も止んできたし帰りましょうか」

「そうだな。って俺んち来るんだろ?」

「お、お邪魔するわよ。雨止んだしね」


少し緊張気味に言う一花。

そんな一花を見て『この可愛いやつめ』と思いながら、拓馬が言う。


「なんでいつもそんなに緊張してるんだよ。何回も来てるだろ」

「いいじゃないの。木下君のお姉さん以外にはまだ会ったことないから、もしも会ったらどうしようって考えちゃうのよ」

「別に普通でいいよ」

「ふ、普通ってなんなのよ」

「いつも通りの一花でいいって」

「はぁ・・・」


小さくため息をつく一花を見た拓馬は、周りをキョロキョロとして人が少なく自分たちのことを見てる生徒が居ないことを確認した。

そして一花の後ろから腕を回して抱きしめた。


「ちょっ! き、木下君っ? な、なにしてるのっ? こんなところ誰かに見られたらっ」

「大丈夫だって。一花は俺の彼女なんだから堂々としてればいいって」

「・・・・・・」

「よしっ! じゃあ帰るかっ!」


一花から腕を外して、先に玄関を出ていく拓馬。

そんな拓馬の背中を見た一花は、フフッと笑って拓馬を追いかけた。


「ってうわっ! まだ少し降ってるじゃん!」

「ほんとね。でもこのぐらいがちょうどいいわ」

「結局濡れて風邪ひくなよ」


まだ少し残っていた小雨で、赤くなっていた自分の頬を冷ましながら歩いていく一花であった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただければ幸いです。


・・・コメディだと思って読んでいたら怪我しますよ。

これは『コメディ(笑)』ですからっ!


次回もお楽しみに!

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