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忘れ去られた日

「んー・・・」

「さっきから唸っちゃってどうしたの?」


授業と授業の間の休み時間。

となりの席でうんうんと唸っている拓馬に向かって名波が声をかけた。

拓馬は授業中も鼻と唇の間に鉛筆を挟んで考え事をしていたし、手が動いたかと思えばすぐに鉛筆を挟む作業に戻っていた。

そんな拓馬を見て、自分も鼻と唇の間に鉛筆を挟んでみたのですが、どうにもうまくできなくて何回も落としてしまっていました。

そしてそれに飽きたのか、やっと声をかけたのです。

ちなみに余談ですが、隆は授業中に考え事をするときは無心でペン回しをしています。一花は無表情で前だけを見つめます。


「いや、なんか忘れてるような気がするんだよなー・・・」

「あるよねー。でもそーゆーのって思い出せない時は無理に思い出そうとするんじゃなくて、すっぱり思い出さないって決めちゃうのが良いってお母さんがよく言ってる」

「なんか大事なことだった気がするんだけどなー」

「思い出せないぐらいだから、そんなもんだったんだよ。じきに思い出すって」

「そうなのかなー・・・」


そう名波に言われた拓馬は、少しずつではあるがそのことを考えないようにしていった。

そしてその日の放課後。

いつものように拓馬、隆、名波の3人で帰ろうとしていた時、掃除当番で遅くなるはずだった一花が教室から顔を出して3人を呼び止めた。


「木下君!」


正確には拓馬だけを呼び止めてました。


「ん? なした?」

「今度の土曜日って空いてる?」

「ハハハ。俺が毎日のように暇なのは知ってるだろ」

「そうだったわね。じゃあとにかく土曜日は空けておいてね」

「わかったよ。じゃあまた明日な」

「ええ。さよなら」


そこは『さよならなんていうなよ!寂しいだろ!』とか言って欲しい一花でしたが、声にも顔にも出さずに教室に戻っていきました。

そんなことを微塵も考えていない3人はいつものように下校しました。


「それにしても土曜日何かあるの?」

「さぁ? わかんね」

「何か大事なことあるのかな?」

「それは一花のみぞ知るー」

「委員長の考えてることなんてわかんねぇよ。きっと俺たち凡人にはまったく予想もつかないこととか考えてるんだろうよ」

「アハハ。委員長らしいよねー。もしかして誕生日とかだったりしてー」

「いや、一花の誕生日はもうちょっと先、だって、言ってた・・・ような・・・」


どうにも歯切れの悪い言い方をする拓馬に、隆と名波が不思議そうに顔を合わせる。

そしてバッと顔を隆に向けると、隆の両肩を掴んで拓馬が叫んだ。


「思い出したっ! そうだよ! 誕生日だよ!」

「誕生日? やっぱり委員長の誕生日だったの?」

「ちがーう! 隆だよ!」

「あー・・・」

「へ?」

「そうだよ! 隆、誕生日だったじゃん!」

「まぁ色々あったからなぁ」

「そーゆー問題じゃない! うわぁ! 親友の誕生日忘れるとか最低だ!」

「まぁそんなに気にするなよ」


頭を抱えて雄叫びをあげている拓馬を隆はなだめようとした。

隆本人も忘れていたので、そんなに気にしていないようです。

あまりにもうるさい拓馬を鎮めるために、横に立っていた名波にも応援を要請した。


「あぁ、もぅ、うるせぇ! 名波、お前も手伝ってくれ!」

「・・・・・・」

「おい、聞いてんのか!」

「なんで教えてくれなかったのさ!」

「お前もかよっ!」


思わずツッコミを入れてしまった隆。隆のツッコミは大阪に言ってから上達したと、身内からは大好評でした。

そのまま名波が隆にしがみつくように腕に掴みかかってきた。


「なんで教えてくれなかったのっ?」

「俺も忘れてたんだって。もう誕生日はいいだろー」

「良くないって! 隆はいいかもしんないけど、俺たちの気が収まらない!」


両側から腕を引っ張られて、左右に揺らされている隆。まるでお父さんに物をねだっている子どものように、わーわーとわめき散らす拓馬と名波。


「いやいやいやいや。じゃあどうしたいんだよ」

「「祝ってあげたい!」」

「・・・もう好きにしてくれ」


ついに諦めた隆は、二人の強引な好意に甘えることに決めた。・・・埒があかないと思ったので。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


隆の誕生日は4月20日です。

あの時期はバタバタしてましたからねぇ。


次回もお楽しみに!

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