お土産(一花編)
旅行から帰ってきた次の日である、GWの最終日に一花は、友里恵と会う約束をしていた。
そして自分の部屋の中で友里恵が来るのを待っている一花であった。
実は、友里恵には拓馬と付き合っているという事実をまだ伝えていない。
今日は大阪旅行のお土産を渡すこととそのことを話すのが目的だった。
ピンポンピンポン
インターホンが鳴ったので、部屋を出た一花は階段を降りて玄関へと向かう。
「いらっしゃーい」
「やっほー」
玄関を開けると予想通り友里恵が立っていた。
「一花ー。そんなにすぐドア開けて全然知らない人だったらどうするのさ。もっと用心深くいかないとこの先危ないよ?」
「あんなインターホンの鳴らしかたするのは友里恵しかいないじゃない」
「ま、そうなんだけどね。おっじゃまっしまーす」
家に上がり込むなり、リビングへと駆けていき、一花の母親に会いに行く友里恵。
「おばさーん。これ、東京のおみやげー」
「あら、友里恵ちゃん。いつもありがとうね。かわりにこれ、一花と食べてちょうだい」
「うほー。ロールケーキだぁ」
「一花の大阪土産よ」
「おばさん、ありがとー」
「じゃあ部屋にいるから」
そう言って階段を登っていく友里恵と、その後ろに続いていく一花。
部屋に入って、互いの定位置であるクッションの上に座って一息つく。
「今回はなんのおみやげ?」
「東京のなんちゃらなんちゃらっていうお菓子。なんだっけ? 原宿・・・なんとかっていうやつ」
「あいかわらずザックリしてるわね」
「だって目についたやつ買ってるだけだもん」
今回のお土産のアレって目についただけじゃ買えないんですけどねぇ。
「そうそう。お土産といえば、私も友里恵にお土産があるのよ」
「大阪行ってたんだっけ?」
「そうよ。でも友里恵だって大阪には何回も行ってるだろうから、普通のお土産じゃないわよ」
「まぁ何回も行ってるかな。仕事でだけど。って普通じゃないの?」
そう言って一花は用意していた写真を机の上から取ると、友里恵の前に置いた。
「ん? 写真? あーわかった。土産話ってわけね」
「まぁそれもあるんだけど・・・」
「うわー、たのしそー。・・・なんかこの黒タイツ少年の写ってる率高くない?」
「実はね。今その人と付き合ってるの」
「・・・は?」
口を開けてポカンと一花を見る友里恵。
「えっ、ちょっと待って。この人って一花がずっと『好き!超好き!』って騒いでた人だよね?」
「そこまでは表に出してないわ」
「私には見えたのだよ。でも好かれてなかったんでしょ?」
「まぁね」
「で、今付き合ってるの?」
「そうなのよ」
「なんで? ゴリ押ししてたら向こうが折れたの?」
「言い方が悪いわ。やっと私の魅力に気づいたってことにしてよ」
「一花の魅力なんて他人にはわからないじゃん」
小馬鹿にしたように言う友里恵。
そんなことを言い合っても空気が悪くならないのは、それだけ仲が良いってことなんです。
「そんなことないわよ。木下君は私のこと分かってくれてるわよ」
「その割には、まだ苗字で呼んでるんだねぇ」
「だ、だって名前で呼ぶなんて恥ずかしくてできないわよ」
少し顔を赤くして言う一花。
拓馬には『そそるでしょ?』とか言っておきながら、実は恥ずかしかっただけなのでした。
「恥ずかしいって・・・えっ、じゃあいつから付き合ってるの?」
「GWの前だから・・・20日ぐらいかしら」
「付き合い立てホヤホヤじゃん!」
「そうよ。だから今、私幸せなの」
「なんでそんなにOLちっくな感想なのさ」
少し呆れたような顔で一花を見る友里恵。
「いいなぁ。私も彼氏欲しいなぁ」
「でもそれを考えることがダメなんでしょ?」
「そうなんだよねぇ。だから可愛い女の子の彼女とかだったら大丈夫かなぁって」
友里恵の所属している事務所は、先輩達は結婚や恋愛を自由にしているそうだが、20歳を超えるまでは恋愛禁止という約束が定められている。
「それはそれで問題になりそうだけどね」
「早く大人になりたーい!」
「はいはい」
「あっ、ってゆーことは、オタク趣味のこともバラしちゃったの?」
一花の部屋を見渡す友里恵。
部屋の中には、少し大きめの本棚に、一般向けの小説や書籍にまぎれて、ライトノベルやマンガが入っている。
「うん。まぁね」
「普通だったら、『オタクはちょっと・・・』って感じになるのにねぇ」
「木下君の弟がアイドルオタクなのよ」
「あっ! そうそう、思い出した! 前に会ったときに、会いに行ってみるって言ったのはいいんだけどさ、顔がわからなくて探せないんだけど、どうしたらいいと思う?」
「どうしたらって・・・」
「一応私の親友の彼氏の弟なんだし、挨拶しておくのが義理ってもんじゃない?」
「いや、義理は関係ないと思うわ」
「一花、見たことないの?」
「私も見たことないのよね」
「なんでー? 彼氏の家行ったことないの?」
「行ったことあるわよ。でも弟さんも高校生だから忙しいみたいで、なかなか会えないのよ」
「ふーん。そんなもんか。まぁなんとかなるか。そんなことより、そろそろロールケーキ食べない?」
「食べたかったなら言えば良かったのに」
「だって一花のお土産受け取るのが先かと思ったからさ」
「はいはい。どうぞお召し上がりくださいませ」
「では、いただきまーす」
友里恵が美味しそうにロールケーキを頬張っているのを一花は見て、自分もロールケーキを食べ始めた。。
そして一番の親友に色々と報告が出来たり、初めて友達と旅行にも行ったりと大満足なGWだったなぁと思う一花であった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とかあれば書いていただけると幸いです。
今回でお土産編が終了となりました。
また日常編に戻っていったりいかなかったり。
では次回もお楽しみに!