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お土産(名波編)

名波が自宅に向かうバスの中で、桜と遥にもう少しで着くというメールを送信すると、バス停まで迎えにきてくれるという返事が返ってきた。

到着したバスから降りると、そこには久しぶりに見る可愛い妹達の顔があった。


「「お姉ちゃんおかえりっ」」

「ただいまーっ!」


そう言って双子に抱きつく名波。そのまま深呼吸して、久しぶりに嗅ぐ妹達の匂いを思いっきり吸い込んだ。

荷物を持ってくれるという双子の行為に甘えて、キャリーバッグを桜が、お土産の袋を遥にそれぞれあずけて、自分は二人の間に入って、二人と手をつないだ。


「楽しかった?」

「楽しかったよー」

「大阪暑いの?」

「うーん。ちょっと暑かったけど、北海道の6月後半ぐらいかな」

「えぇー。それって暑いじゃん」


暑いのが苦手な桜が苦そうな顔をして言う。暑さが苦手な桜とは対照的に、遥は暑いのは平気です。そこもこの双子の違うところです。

同じような顔をしているのに、中身は全然違うのが黒木家の双子の特徴です。それに比べて相沢家の双子は、あまり外見も中身も変わりません。まぁ望の性格もあるんでしょうけどね。

思い出話をしながら、家までの道を歩いて、敷地に入る門を通る。そして玄関に入ると、家政婦さんが出迎えてくれた。


「おかえりなさいませ」

「うん。ただいまー。あっ、これ、みんなで食べてー」


名波は遥が持っている袋から『みたらし小餅』と書かれた箱を取り出して、家政婦さんに渡した。


「あらあら。私たちにまでお土産なんて。ではありがたくいただきます。お父様がリビングでお待ちですよ」

「名波っ!」


家政婦さんが言った直後、玄関まで駆けつけた父親が顔を出した。

ペコリとおじぎをして下がっていく家政婦さん。


「お父さん。ただいま」

「おかえりっ! そんなことよりも何も無かったか!? 変な奴に街で誘われたりしなかったか!?」

「そんなに気になるならあなたも行ったら良かったじゃないですか」


そんな暴走気味の父親の後ろから母親が顔を出した。


「あっ、お母さん。ただいまー」

「おかえりなさい。楽しかった?」

「うんっ。ありがとねっ」

「お礼はお父さんに言ってあげなさい」

「お父さんってばお姉ちゃんが居ないからってすごい気持ち悪かったんだよ」

「気持ち悪いっ?」

「なんかお祈りとかしててちょっとウザかったよね」

「ウザかった!?」


学年が上がって少し成長期に突入している桜と遥が、父親をボロクソに言った。

そんなことを思われていたなんて知らなかった父親は、その場にうなだれた。


「ほら、桜と遥もこう言ってるじゃないですか。だから落ち着きなさいって言ったのに」

「あれは母さんなりの冗談かと・・・」

「まぁまぁ。はい。桜と遥にお土産」

「うわぁ。お揃いの髪留めだぁ」

「私もお揃いの持ってるから三人でつけようね」

「「やったぁ!」」


髪留めを持ってキャッキャと喜んでいる桜と遥。


「で、これがお母さん。隆と拓馬がコレをお母さんに買うって言ってたから私も買ってみました」

「あら。これ堂島ロールじゃないの。嬉しいわ。今日の夜ごはんのあとに食べましょうね」

「名波っ! お父さんには無いのか!?」


待ちきれなくなって、自分から催促してしまった父親。まるで餌を待っている大型犬のようです。


「ちゃんとあるから。はい。これ」


そう言って、551と書かれた袋からビニールに包まれた甘酢団子を渡した。

冷凍なのでレンジでチンするだけで食べられます。


「おぉ。これは甘酢団子じゃないか」

「あれ? 知ってるの?」

「まぁな。若いときは大阪にも良く仕事で行ってたからな」

「ふーん」

「でもこれは名波からもらったから大事にするからなっ。ちゃんと飾っておくからなっ!」

「いや、食べてよ。・・・あ、あとね。もう一個あるんだ」

「まだあるのか! なんだ?」

「その・・・ちょっと目、閉じてくれる?」


そう言われて不思議に思いながらも、可愛い愛娘(まなむすめ)の願いということで、固く目を閉じる父親。

目を閉じても嬉しそうな父親の顔を見て、名波は一つ深呼吸をする。

そして父親の顔に自分の顔を近づけていき、ほっぺにチューをした。


「はいっ。おしまいっ」

「・・・ハッ! い、今私は何をされたんだ!?」


今記憶が戻った、というような表情で目を開けた父親が母親のほうを向くが、笑いを堪えているのか、恥ずかしいのか、目をそらしてごまかしていた。

そのまま桜と遥のほうを見た父親だが、二人そろって口を押さえて名波のほうを見ているだけで返事は無かった。

そして名波は顔を真っ赤にして玄関で靴を脱いで家の中へと上がっていた。


「な、名波っ! 今、何したんだ?」

「何もしてないって! 恥ずかしいから言わせないで!」

「い、いま、チュ、チューしたのか!?」

「だから言わないでって!」

「お、おとうさん嬉しいぞ! 最後に名波がお父さんにチューしてくれたのは、小学校の6年生の卒業式の時で」

「わかったから! それ以上言ったら嫌いになるからねっ!」


そう言われて少しシュンとした父親であったが、さっきのお土産を思い出して顔が緩んでいます。


「よーし! 今日はパーティだ! 盛大に名波の帰りを祝おう!」


そう言って、呆れながらも料理の仕度やその他の準備をする家政婦さん達と母親であった。

そして名波は、部屋に入って父親にチューをしたことを思い出して、恥ずかしくて枕に顔をうずめていました。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


チューは拓馬と隆が提案しました。


次回もお楽しみに!

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