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お土産(拓馬編)

「ただいまー」


拓馬が家に帰って来たとき、家には誰も居なかった。

休日とは言えども、居酒屋でのバイトをしている芳恵や、シフト制でカレンダーの休日なんて関係なく働いている母親がいないのは別に変なことではない。俊哉はきっと友達と遊びにでも出ているのでしょう。

出迎えが無いのは少し寂しい気もしたが、久しぶりの我が家に帰ってきてホッと一息つくことができてそれはそれで良かった。


「ふぅ。なんか疲れたなぁ」


ソファに腰をかけて一息ついた拓馬は、あっという間に眠りの世界へと誘われてしまいました。



そして目を開けるとそこは、ライブ会場でした。


「ユリちゃーん!!」

「きゃあああ! 可愛い!」

「あ、拓馬。おはよ」

「あれ? なんかまるで夢を見てるみたいだ」

「寝ぼけるな。これが我が家の日常でしょ」


隣に座っていた芳恵が拓馬に話しかけた。

そしてようやくピントがあってきた目で、改めて我が家を見回した拓馬は、再び目を閉じて深呼吸をして芳恵に告げた。


「そんなわけあるか。ってか何時?」

「今? あー・・・12時ぐらい」


カーテンが閉まっているところを見ると、夜中の12時ですね。

つまり拓馬は、夕方の6時に帰ってきてから6時間近く寝ていたことになる。


「マジで。やべっ。お土産とか出さないと」

「あ、お土産なら出しといたよ。美味しかった。ごちそうさま」

「は?」


感想を言われた拓馬は、立ち上がってキッチンへと向かった。

そこには箱と取り皿だけが残されていた。

それを見た拓馬は、芳恵に問いかける。


「もしかして全部食べた?」

「え、うん。って言っても、私はひと切れしか食べてないからね? ほとんどあの二人が食べたんだし」


そう言って芳恵が指を指した先には、テレビの中のユリちゃんに向かって声援を送っている俊哉と母親の姿があった。

それを知った拓馬は、テレビのリモコンを手に取り、テレビの電源を切った。


「「あっ!」」

「そこの二人。どうして全部食べたんだよ」

「だってあれはお土産でしょ? お土産は旅行に言ってない人へのプレゼントでしょ? だったら全部食べても問題ないと思いまーす」

「俺もそう思う。そもそも拓馬がそこで寝てたせいで食べ損ねたんだから、俺たちのせいにするのは変だと思う」

「母さんもそう思いまーす」


互いの意見に肯定しあって、正論としてぶつけてくる俊哉と母親。

そんな二人に少し苛立った拓馬は、『なら俺にも考えがある』と言って、ズカズカと廊下を歩いていって俊哉の部屋へと向かった。


「ちょっと拓馬! 何してんだよ!」

「俊哉にあげたユリちゃんのサインは没収だ」

「「なんだってー!?」」

「俺だって食べたかったんだから少しぐらい残しておいてくれたっていいじゃないか」

「だからってそれとサインとは関係ないだろ」

「アレはもともと俺が貰ったもんだ。だから俺が没収しても問題は無い!」

「問題ある! 俺のモチベーションが上がらない!」

「母さんのモチベーションも上がらない!」

「しるかっ! とにかく、何か代わりのものを俺に差し出すまでは、これは没収します!」

「「ブーブー!!」」


ブーブー言いながら抗議をしてくる俊哉と母親を無視しながら、ユリのサインが入っている額縁ごと取り外すと、自分の部屋のドアを少しだけ開けてそこからサインを投げ入れた。


「あーっ! ユリちゃんの貴重なサインを投げるなんて!」


俊哉はそう言っているが、拓馬にとっては彼女の親友というポジションにユリがいるために、そこらへんの人間よりは強気な姿勢に出ることが出来ていた。拓馬は今、自分が怒っているんだぞということを、俊哉と母親に見せつけるのが最優先だった。


「うるさい。あんなのただのサインだろ」


いい加減に拓馬が怒っているのに気づいた俊哉と母親は申し訳なさそうに目を合わせると、揃ってキッチンの冷蔵庫から何かを取り出した。

そしてラップがかかった皿を拓馬に差し出す。


「別に隠してた訳じゃないんだけどさ」

「その、なんてゆーの? 言うタイミングを逃しちゃって・・・」


皿を受け取った拓馬は、ラップを外して中身を見た。

そこにあったのは、堂島ロールだった。


「いや、さすがに全部食べるのはマズイと思って、二切れだけ残してお姉ちゃんの分と拓馬の分を残しておいたのよ」

「そしたら拓馬がいきなりキレるんだもん。渡すタイミングも無くなるって」

「・・・そっか。ごめん。俺も悪かったよ」

「「そこで!」」


拓馬が謝った直後に、俊哉と母親の二人が声をそろえて言った。


「サインどうしてくれるんだよっ」「サインどうしてくれるのっ」

「あっ」

「あっ、じゃないよ! アレのおかげで成績は上がったし、学校でのユリちゃんとの遭遇率も上がってたのに!」

「あれ? ・・・あ、そっか」

「なんだよ」

「そういえばユリちゃんに前会ったときに、俊哉に会いに行くとか言ってたなぁって思ってさ」

「マジでっ!? 俺にっ!?」

「えーっ! 俊哉ばっかりズルイー! 母さんの職場には遊びに来ないのぉ!?」

「絶対行かねぇよ! だからもしかしたら、探しに来てるから遭遇率高いのかもよ?」

「じゃ、じゃあ話しかけたらいいのかなっ?」


テンションが上がって拓馬の肩にしがみついている俊哉。


「さぁな。そこまでは俺は知らん。自分で頑張ってみろ」

「わかった。俺頑張ってみるよ。拓馬。俺は拓馬の弟で良かったと思ってる!」

「お、おう・・・」


なんかキモイですね。

そんな俊哉と依然うるさい母親を無視して、ソファに座った拓馬は堂島ロールを食べた。

そしてテレビをつけてユリのDVDが流れると、すぐにライブ会場となる我が家の日常を見ていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


ヤッホーイ!って感じで発狂します。


次回もお楽しみに!

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