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お土産(隆編)

とんでん=北海道で有名な和食レストランです。


大阪旅行から帰ってきた隆は、駅で拓馬と別れて、すっかり邪魔くさい荷物と化したキャリーバッグを引きずりながら我が家へとたどり着いた。


「ただいまー」

「あっ! タカ兄だ! おみやげは?」

「おかえりなさい」


玄関を開けると、ちょうどリビングから出てきていた希と望に出会った。


「いきなり土産かよ」

「ちゃんとたこ焼き買ってきてくれた!?」

「お前は超元気だな。ほらよ。レンジでチンするだけで食べられるらしいぞ」

「うおー! すげー! 最近のお土産はスゲー!」


何故か冷凍たこ焼きに感動している希を放っておいて、隆は望にもお土産を渡した。


「ほらよ。これが良かったんだろ」

「うん。ありがと」


望が隆にお願いして買ってきてもらったのは、ある意味有名な『面白い恋人』というお菓子です。

あまり深くは語れない商品なのですが、まぁ・・・アレと似たような名前ですよね。しかし中身は全然違うお菓子が入っています。

お土産をもらった二人は、そそくさと階段を登って自分たちの部屋へと向かっていった。


「希ー。たこ焼きは冷凍庫に入れておけよー」

「あら、隆。おかえりなさい。どうだった?」

「ただいま。楽しかったよ」

「違うわよ。お土産よ」

「母さんもかよっ。まったく親子揃って俺をなんだと思ってるんだ・・・」


そうぶつくさ文句を言いながら、キャリーバッグから両親へのお土産を手渡すと、目を輝かせて喜んでいた。


「これよ、これ! これが噂の堂島ロールってやつなのね。早速食べましょう」

「あっ! ちょっと!」


そう言ってリビングへと消えていく母親。

隆は小さくため息をつくと、靴を脱ぎ、久しぶりの我が家へと上がった。

そして洗濯物をカゴへと放り込み、リビングへと向かうと、母親がちょうどティーパックの紅茶を入れ終えたところだった。


「あれ? 夕飯は?」


時刻は午後6時。いつもならばテーブルの上にはご飯やおかずが並んでいるはずなのだが、今日はロールケーキと紅茶が並んでいるだけである。


「だってこれ楽しみにしてたら、夜ごはん作るのめんどくさくなっちゃって」

「いやいや、そこは準備しろよ」

「あらま。大阪に行ってツッコミの速度が上がったんじゃないの?」

「変わらねぇよ」

「なんでやねん!」


後ろから現れた希にツッコミという名のチョップを脇腹に喰らった隆は、壁に手をついて悶絶する。


「希ちゃん。ツッコミはチョップじゃなくて手の裏で叩くんだよ」

「裏拳ってこと?」

「なんでやねん」


希と望が小さな漫才師になっているのを、母親が笑って見ていた。

その時、玄関が開いて声が聞こえた。


「ただいまー」

「あらま。お父さんまで帰ってきたのね」


そう言って玄関へと向かう母親。

少し悶絶状態が治ってきた隆は、とりあえず希の頭をバシッっと一発叩いた。


「いたっ! 何すんのさ!」

「うるせぇ。それはこっちのセリフだ。いきなり水平チョップかましやがって」

「チョップじゃないよ! ツッコミだもん!」

「アレをツッコミと呼ぶのなら、暴力は全部ツッコミとして処理されるわ!」

「おう、隆。おかえり。楽しかったか」

「ただいま。結構楽しかったよ」

「いいもんっ! カツゲン飲んでやる!」


拗ねた希が冷蔵庫に向かってドスドスと歩いて行くのを、母親が引き止めた。


「希。夜ごはんの前のカツゲンはダメって言ったでしょ?」

「えー! お母さんだって紅茶飲んでるじゃん」

「夜ごはん残したら怒るわよ?」

「ぶー・・・」

「希ちゃん。諦めよ?」

「望くん・・・」


望が希を抱きしめて頭を撫でた。

それを見ていた隆が父親に言う。


「あいつら見ると、帰ってきたーって感じがするわ」

「そりゃよかった。家が一番だろ」

「まぁ一番落ち着くかな」

「そうかそうか。で、母さんご飯は?」

「え? ちょっと作ってないわ」

「ちょっとどころか何も作ってなかったぞ」

「なんだって? だからあれほどロールケーキのことは考えるなって言っただろう」

「だって我慢出来なかったんだもの」

「まったく・・・仕方ない。今日はゴールデンウィークだし、どっか食べに行くか!」


父親の提案に大喜びをしだす、隆以外の3人。

希と望はもちろんなのだが、母親も両手を上げて大喜びしていた。

隆としては、帰宅してすぐに外食というのは気が進まなかったのだが、これだけ喜んでいる家族の前で反対意見は出しにくいと思い、黙っていました。


「よーし。そうと決まれば父さん着替えてくるから、それまでに決めておけよー」

「スパゲッティがいい!」

「お母さんは回らないお寿司がいいわ!」

「俺はなんでもいいかな。って回らない寿司なんて行ったら父さん泣くぞ?」

「いいのよ。お父さんの奢りだもん」

「えー! スパゲッティがいいー!」

「たまにはお母さんに花を持たせなさい」

「親が言うセリフじゃねぇよ」

「じゃあじゃんけんしようよ!」

「いいわよ! 行くわよー! じゃんけん、ほいっ!」


希がパー、母親がパー、そしてさりげなく参加した望はチョキ。


「やった。僕の勝ちー」

「なんで望がっ?」

「望くんやっほーい!」

「よーし決まったかー」


着替え終わった父親がこれ以上ないタイミングでリビングへと戻ってきた。

そして勝者である望が、父親に外食先を言った。


「とんでん」

「「えぇっ!!」」

「おっ! いいな! たまには和であっさりいいな。よし。じゃあ車に乗れー」


まさかの望の発言に驚いた母親と希ではあったが、じゃんけんの勝者には文句が言えないのか、悔しそうにして望を見ていた。

そして隆は、騒がしいが賑やかな家族の最後尾を歩いて、家に帰ってきたことを実感していた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


賑やかな家族っていいですよね。

幸せそうです。


次回もお楽しみに!

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