締めはたこ焼き
大阪旅行3日目。
4人は、旅館のチェックアウトを済ませて駅へと向かっていた。
「なんか早かったねー」
「だな。久々に遊び尽くした気がするな」
「俺なんか旅行とか超久しぶりだったし」
「私も」
道中、旅の思い出なんかを話しながら歩いていった。
その時、名波が全員を止めた。
「ちょっと待って!」
「どうした?」
「最後にたこ焼き食べたい!」
「お前たこ焼き好きすぎるだろ」
「名波がタコになっちゃうぞ」
「いーじゃーん。だって大阪と言えばたこ焼きなんだからさ」
そう言って、近くにあったたこ焼きの屋台へと駆けていく名波。
隆と拓馬は、目を合わせて肩をすくめると、一花と3人で名波のあとを追った。
「すみませーん。たこ焼き6個入のやつ4つください」
「1人1個かよ」
「はいよ。普通のでええの?」
「普通の?」
そう言われた名波は首をかしげて屋台のおっちゃんを見る。
そんな名波の可愛さにイチコロにされてしまったおっちゃんは、メニューもろもろを教えてくれた。
かつおぶしや青のりがかかっているソースとマヨネーズで食べる普通のたこ焼き。
そしてネギがたっぷり乗っていてポン酢で食べる普通じゃないたこ焼き。
他にも中にチーズ入りやキムチ入りなんかもあった。
「ってな感じで普通じゃないたこ焼きもあるんやけど、おっちゃんのオススメはポン酢で食べるたこ焼きかな。観光客には人気やで」
「へぇ。ポン酢か」
「じゃあそのポン酢のを4つで」
「はいよ。ちょっと待っててな」
そしておっちゃんが手際よく洗練された動きで名波と世間話をしながらもたこ焼きを作ると、それを舟皿と呼ばれる容器に入れて渡してくれた。
「はいよ。お嬢ちゃん可愛いからネギはサービスな」
「そんな。ありがとうございます」
「ええよええよ。気を付けて帰りや」
たこ焼きを受け取って屋台を離れると、近くにあったベンチに座ってたこ焼きを食べる。
ポン酢のたこ焼きはネギと一緒に食べるため、爪楊枝ではなく割り箸を使って食べます。
「「いただきまーす」」
「「いただきます」」
拓馬と名波が元気よく挨拶をして、隆と一花が静かに挨拶をした。
公共の場なので、周りの人の視線は気にしましょう。
「うおっ! うめぇ!」
「たこ焼きなのにあっさりしてるー」
「なんか新食感だな」
「美味しいわ」
初めて食べるポン酢たこ焼きは大好評でした。
たこ焼きを食べ終えた4人は、また駅へと続く道をダラダラと歩き始めました。
そして駅に到着し、関西空港行きの快速電車に乗り込み、ホッと一息つきました。
「ふぅ。なんか3日間って長いようで短かったな」
「だよねー。でもいろんなところ行けて良かったね」
「次、来るとしたら京都かしら」
「なんで関西縛りなんだよ。ってゆーか委員長からそう言うとは思わなかったな」
一花から『次』という言葉が出たことに隆があざとくつっこんだ。
一花もそれだけ楽しかったということなんでしょうね。
「意外と相沢君って細かいこと気にするタイプだったのね。見損なったわ」
「なんだと?」
「まぁまぁ。一花もこう見えて照れてるんだよ」
「木下君まで変なこと言わないでくれる? 私がデレるのは木下君の前だけよ」
「わかったよ。まぁ次に旅行するとすればどこだろな」
「私、外国がいいな」
「英語もしゃべれない奴が何を言うか」
「むー」
名波は唸りながら頬を膨らませて隆の腕をべしっと叩いた。
「細かいことはいいの。じゃあ隆はどこ行きたいのさ」
「俺は・・・九州とか行ってみたいかな。特に熊本」
「なんでまた熊本?」
「いや、俺が好きな小説の作家がそっちのほう出身らしいんだよ。でもまぁ東京出身って噂もあるんだけどな」
「なにそれ」
「じゃあ拓馬はどこ行きたい?」
「うーん・・・食べ物がおいしいところだったらどこでもいいかな」
「そんなんだからフライパンとか鍋つかみとかプレゼントでもらうんだぞ」
「それは関係無いだろー」
「フライパン? 鍋つかみ?」
拓馬の横で頭に『?』を浮かべていた一花に拓馬が、クリスマスプレゼントの話をしました。
すると合点がいったようで、一花は大きく頷いた。
「わかるわ。私でも木下君にはキッチン用具プレゼントしるもの」
「だよねー!」「だろ!」
隆と名波が声をそろえて言った。
「みんなして俺をなんだと思ってるんだ」
「いいのよ。私が働くから木下君は主夫として、家で私の帰りを待っていてくれればいいのよ」
「俺そんなところまで考えてねぇよ」
「ってゆーか簡単に想像出来るのがすげえな」
「じゃあそーゆー委員長はどこに行きたいの?」
「私は木下君と一緒ならどこでもいいわ」
「「「言うと思った」」」
「でもこうやって4人でどこかに行けるならそれはそれで楽しみだわ」
そう言って微笑んだ一花の顔は、とてもおだやかで綺麗だった。
それを見た名波が隆に耳打ちをする。
「なんか委員長がすごい綺麗に見えたんだけど」
「俺も思った。多分拓馬はあのギャップにやられたんじゃないじゃないか?」
「そこ。聞こえてるぞ。そうだよ。俺はこのギャップにやられた可能性が高いんだよ。文句あるのか」
「ないわ」
「一花には聞いてねぇよ」
そんなこんなで電車は関西空港へと到着した。
飛行機の時間まで余裕があった4人は、各自お土産を買い込んでから飛行機に乗り込み、北海道へと帰還した。
そうして4人の大阪旅行は無事に幕を閉じましたとさ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると発狂します。
次回からはお土産編で4人の単体の話です。
次回もお楽しみに!