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通天閣と笑顔

拓馬達4人は動物園の前に立っていた。

しかし、入口は鉄の柵で締め切られており、辺りにはホームレスのおっさん達が群れを作っていた。


「・・・まぁ、仕方ないさ」

「ごめんなさい。まさかこんなに早く締まるなんて・・・」

「いや、一花は悪くないだろ。こういうのも旅のひとつだ。気にすんな」


拓馬に気にするなと言われたものの、少し悲しそうに肩を落とす一花。

どうしてこんなことになってしまったのかと言うと、広大な敷地の大阪城公園から抜け出すのに時間が掛かりすぎてしまったことと、天王寺動物園が午後4時までが入場できる時間ということを知らなかったのが原因となっている。

動物園なんてめったに来ない4人が、営業時間なんてものを知らないのは別に不思議なことでは無いですが、一花が何かミスをするというのはとても珍しいことなので、拓馬と隆と名波は少し驚いていた。そしてシュンとしている一花を見るのも変に新鮮だった。


「まぁこんなところで立っててもしょうがないし、あっち行ってみるか」


隆がそう言って、動物園の入口の後ろに広がっている、飲み屋街を指さした。


「あっ、アレだよ。ほら、アレ!」

「なんだよ。アレじゃわかんねぇよ」

「えーと、なんだっけ。ほら、あの、アレさ!」


名波がアレアレと言って、アレの名前を思い出せなくてその場で足踏みをしています。アレアレ詐欺ですね。

そこに一花が助け舟を出す。


「もしかして通天閣のこと?」

「そうそれ! さすが委員長! ものしりー!」

「よくわかったな。なんの前触れも無くてノーヒントで当てられるとか、マジでエスパーかよ」

「褒めても何も出ないわよ。木下君からのご褒美なら大歓迎よ」

「じゃあその通天閣に行きますか!」


一花の言葉を無視して、先頭を歩き出す拓馬。一花はいつものことのように、あまり気にしていない様子で拓馬の横に並んで、腕にひっついて歩いていた。


「いやー、元気になってよかったですなー」

「もしかして、アレアレ言ってたのは演技だったのか?」

「あれは本当に思い出せなかっただけ」

「・・・さすが名波だな」

「褒めても何も出ないよ?」

「褒めてねぇよ」




そして通天閣の真下に到着しました。

そんなに距離がなかったはずなのに、ものすごい飲み屋への勧誘の嵐で、名波が疲れた顔をしていました。


「何この道。すごいんだけど」

「バカだな。何も考えずに前だけを見て無視してりゃいいんだよ。お前が律儀に一つ一つ断っていくから疲れるんだよ」


そんなやりとりをしている隆と名波の横で拓馬と一花は、通天閣を見上げていた。


「真下からだと何も見えないわね」

「そうだな。どうする? 登るか?」

「別にいいわよ。私、景色とかよりも大きい物を近くで見てる方が好きなのよ」

「そうなのか。俺はただ見てるのは苦手だな。だったらからだ動かしたりするほうが好きかな」

「私の事は?」

「・・・・・・」

「ねぇ」

「わかったよ。好きだよ。なんでこのタイミングで言わせるんだよ」

「全然気持ちがこもってないわ」

「・・・・・・」


一花からしてみればただのムチャぶりではあるが、こんな公衆の面前で心のこもった『好き』という言葉を言うことに、とっても抵抗がある拓馬は考えた。そして考えた末、一花の手を取って片膝をついてこう告げた。


「一花。俺はお前のことを誰よりも愛してる」

「木下君・・・。ぶっ! アハハハハッ!!」

「はぁ!?」


拓馬のプロポーズめいた言葉に耐え切れなくなったのか、それとも笑いのツボに入ってしまったのか、突然吹き出して大爆笑をし始めた一花。

そんな一花の大爆笑を見た拓馬は、片膝をついたままポカンと口を開けて、一花のことを見上げていた。

その変な二人を横で見ていた隆が名波に話しかける。


「あいつらは何してるんだ?」

「さぁ。でも委員長があんなに笑ってるのって珍しいよね」

「そういえばそうだな。いつも『フフフ』とか『オホホ』とかって感じだもんな」

「そうそう。ってゆーかなんであんなに笑ってるんだろ」

「拓馬も膝ついてるし。おい、お前ら。そろそろ行くぞ」


変な行動をしている二人に声をかけると、一花の笑いが徐々に収まっていきいつもの表情に戻った。


「ほら、木下君。行くわよ」

「えっ、なんで笑ったの!?」

「だって・・・なんか面白くて」

「せっかく愛を込めて言えって言われたから考えたのに、それはないんじゃないですかー」


不満全開の拓馬。そんな拓馬に隆が問いかけた。


「お前何したんだよ」

「いや、一花が『愛を込めて好きって言って』って言うからさ、王子様風に片膝ついて言ったら爆笑だよ。ひどいよ」

「うふふ。委員長も幸せ者だねぇ」

「そんなことないわよ。これがもう少し大人になってから言われたら、多分倒れてるわ」

「その時はもうプロポーズだもんね」

「まぁそんなことはいいんだよ。さすがに腹減ってきたからどっか入ろうぜ」


周りの店のほとんどは串かつ屋なのだが、観光客である4人からしてみれば、選びたい放題であると同時に、どこが良いのかよくわからなかった。


「じゃあ・・・あそこにしよう!」


拓馬が適当に選んだ店入って本場・新世界の串かつを堪能した4人だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


一花さんの笑顔って珍しいですね。

今回の旅行ルートが、某アニメのルートと大体一緒だったのは偶然です。


次回もお楽しみに!

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