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美緒の恩返し

「相沢先輩、おかえりなさい!」


飲み物を買って教室に戻ってきた隆を出迎えてくれたのは、いつもの三人と元気いっぱいのちびっ子一年生、神崎美緒だった。


「なんでお前がそこにいるんだよ」

「相沢先輩にお礼をしようと思いまして!」

「いやいや、そうじゃなくて」


隆が言いたかったのは、『なんで教室にいるの?』ということではなくて『どうして委員長の膝の上に座ってるの?』という意味だったのです。

座られている一花もいつもと変わらない顔で穏やかに、美緒の頭を撫でている。

そのことを美緒に言うと、いつも通り元気いっぱいの返事が返ってきた。


「一花先輩がここに座りなさいって言ったからです!」

「そうよ。私が誘ったの」


なんでもないことを言うような顔で付け加える一花。


「なんでまた・・・」

「ほら。この子ちっちゃくて子どもみたいでしょ? 将来木下君との子どもが出来たらこんな感じか」

「そんなこと思ってたの!?」


一花のセリフを遮って拓馬が叫んだ。一花のまさかの妄想に驚いたようです。


「私はいつでも木下君のことを考えながら生活してるのよ? このぐらい考えなくてどうしますか」

「どうしますかじゃねぇよ。どうもしないからその妄想やめてくれないか?」

「え? やらないか?」

「いや、やらねぇよ」


そんな二人の恒例の夫婦漫才を見ながら、自分の席に座ると置いておいた袋からパンを取り出して一口食べる。

そして隣の席の一花の膝の上に座っている美緒に話しかけた。


「で、お礼ってなんのお礼だよ。俺なんかしたか?」

「この前にジュース買ってもらったお礼です!」

「ジュース? なんかおごったりしたか?」

「隆、忘れたの? 前に届かなくて困ってたじゃん。あのお礼だってさ」

「あれかー」


横から名波が補足をしてくれて、ようやく理解することができた隆。

しかし理解はできたがよくわかっていなかった。


「でもアレのお礼って言われたら、ほとんどの人にお礼してやんないとダメなんじゃないか?」

「いえ! 相沢先輩が押してくれたのにも関わらず、うちの案内ミスで相沢先輩のお金まで使わせることになってしまったので、そのお礼です!」

「でもアレは俺が間違えただけで・・・」

「でもお礼はお礼です!」


年下には少し弱いのか、美緒の勢いに押されていってしまう隆。


「まぁいいじゃん。後輩がお礼をしたいって言うんだからそれを受け取るのも先輩の役目だよ?」


名波に言われて観念したのか、美緒のお礼を受け取ることにした隆。


「わかったよ。で、何してくれるんだ?」

「えっちなお願い以外ならなんでもいいです!」


美緒の言葉に周りがざわついた。


『相沢君ってそーゆー趣味あったの?』『相沢のやつ守備範囲広いなー』『黒木さんだけで満足出来ねぇのかよ』『マジ羨ましい』『クールかと思ってたらただの変態ロリコンだったのねぇ』『小さい子にナニお願いする気だよ』


「隆・・・」

「相沢君ってこの子とそーゆー関係だったの?」

「違う! 断じて違う! 俺にそんな性癖はない!」

「そうですよ! 相沢先輩は名波先輩一筋なんですから!」

「お前は黙ってろ!」


自分のせいでこんなことになっているという自覚の無い美緒を黙らせた隆は、少し腰を浮かせて名波に弁解する。


「名波、俺はそんな趣味無いからな?」

「うん。知ってるよ。そんなに焦って言ってたら余計誤解されちゃうよ?」


なんとも思っていなかった名波に笑いながらなだめられた隆は、顔をカァーと赤くして大人しく座った。

それを見ていた拓馬は、いつもよりテンパっている隆を見て思った。

そのことを美緒に伝える。


「よし、ちびっ子。これからは隆のことをイジメに、ちょくちょく遊びに来るとよい」

「うちは相沢先輩にお礼をしにきただけです!」

「じゃあお礼はいいから、ちょくちょく遊びに来い! これは隆の親友からの命令だ!」

「命令ですか! なら仕方ないですね! お礼は諦めてたまに遊びにきます!」


そう言って一花の膝の上から降りた美緒は、拓馬達に一礼すると教室を出ていった。


「あいつ面白いな」

「私たちの子ども役としてピッタリね」

「いや、そんな役ねぇから」

「拓馬。なんであんなこと言ったんだよ」

「それはもちろん隆の可愛い顔が見れるからに決まってるだろ!」


歯をキラリンと見せて爽やかに親指を立てる拓馬。

その表情にイラっときた隆は、拓馬の弁当から玉子焼きを指で奪い取って口の中へと放り込んだ。


「あー! 今日のは大成功だったのに!」

「んー。確かにうまいな。モグモグ」

「モグモグじゃない! じゃあ隆のパンも一口くれよ!」

「お前が勝手にちびっ子のお礼を決めるから悪いんだ。これはその駄賃みたいなもんだ」

「ぐぬぬぬ・・・」


正論を叩きつけられて手も足も出なくなった拓馬は、美味しそうに玉子焼きを食べている隆を見ていることしかできなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


クラスメイト達は噂話が大好き!


次回もお楽しみに!

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