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「もういいっ! 私、拓馬と付き合うっ!!」

「「えぇっ!!」」


昼休みに教室の中で前の日のカレーパーティのことを、いつものメンバー(拓馬、隆、名波、一花)で話していたときに、急に立ち上がった名波が叫び出した。

そしてそのまま拓馬の手を引いて教室を出てどこかへ走り去ってしまった。

ただ呆然としたまま、パンをかじる手を止めた隆が惚けていた。

そして拓馬は名波に左手を引かれたまま何が起こったのかと同時に、右手に持ったままの弁当の箸をどうしようかと考えていた。

そして手を引かれるままに走っていると、人のいない場所として恒例になってきた例の水飲み場が見えてきた。

名波は、そのまま徐々に足を緩めていき、水飲み場に入る頃にはほとんど止まっていた。


「名波ー。今回はどうした?」


前回に手を引かれて走ったことのある拓馬は、名波に問いかけた。


「拓馬・・・私と付き合わないでっ!」

「言われなくたって付き合わねぇよ」

「そっか・・・それはよかった・・・」

「なんなんだよ。俺なんか箸持ってきちまったぞ?」

「あはは・・・ごめんね」


そう言って、廊下からは四角になる位置の壁によりかかると、そのまましゃがみこんだ。

拓馬は右手の箸をカチカチと鳴らしてから名波の隣に座り込んだ。


「ほれ。おじさんに話してご覧?」

「うー・・・あのさ、ちちょっと自分でも子供っぽいかなーって思うんだよ? そりゃ仲良くなるのは良いことなんだけど、私だってもうちょっとでいいから彼女扱いして欲しいかなーって思うわけですよ。ってこのこと隆には言わないでよ?」

「言わんて。で?」

「でね、隆ってばクラス変わってから委員長の話ばっかりするんだよ! どう思うっ!?」

「そりゃ彼女の名波さんとしてはいい思いはしないですよねー」


どうやら拓馬を連れて飛び出した名波は、愚痴を言いたかっただけのようです。

その愚痴をまるでマシンガンのようなスピードで吐き出していきます。

名波は、どうでもいいことはすぐに口に出すのですが、本当の本当のことは口に出さないで溜め込むタイプのようで、今回こうして爆発してしまったようです。


「そうなんだよ! さすが拓馬! 私のこと一番わかってるのってもしかしたら拓馬なのかもしれないわ! うん!」

「うん!じゃないでしょ。隆とどうすんのさ。あれでも意外と傷つきやすい男の子なのは名波も知ってるでしょ?」

「まぁそうなんだけどさ・・・」

「ほら。戻って仲直りするべ」

「うー・・・」


うーうーと唸ってばかりの名波の腕をとって立ち上がらせると、水飲み場から離れようと廊下に向かった。


「拓馬!」


その時、目の前に隆が現れた。


「おっ! 隆、ちょうどお前に話があって」

「誰が聞くかーーーーっ!!」


近づいてきた勢いそのままに隆が拓馬の顔を殴りつけた。


「拓馬っ!」


そのままの勢いで水飲み場に倒れ込む拓馬。その後ろに立っていた名波が拓馬の元へと駆け寄る。


「やっぱり拓馬と付き合うことにしたのかよ」

「違うって! ってゆーか殴るのはだめじゃん!」

「うるさい! お前が拓馬と付き合うって言い出すから、拓馬が名波を奪ったってことだろ」

「違うって言ってるじゃん!」

「何が違うって言うんだよ!」

「はいっ!そこまでっ!」


隆と名波の口論の間に割って入った一花が両手を広げて制止した。


「状況を整理しましょう。相沢君。あなたも熱くなりすぎよ。落ち着きなさい」

「・・・わかったよ」

「まず聞きたいことがあるの。黒木さん。木下君と付き合うことにしたって言うのはホント? 答えによってはこの場であなたを消さなければならないんだけど」

「怖いって! 私は拓馬と付き合わないよ! あれは言葉のあやってゆーかその・・・」

「勢いで言ってしまっただけってこと?」

「そう! それ!」


一花を指さして叫ぶ名波。名波から正解をもらった一花は、反対側にいる隆のほうを向いて話す。


「そこで木下君が倒れているんだけれども、相沢君。どうしてかしら? 答えによっては私が木下君の代わりに相沢君を」

「やめんか市原」


むくりと起き上がった拓馬が一花に声をかけた。

殴られた顔をさすりながら立ち上がると、隆の元へと歩いていく。


「隆。俺、こうやって隆に殴られるの初めてなんだけど、間違いじゃないよな?」

「・・・多分初めてだな。俺も人殴ったの初めてだったし」

「そんぐらい名波のことが好きなんだろ?」


隆の肩に手を置いた拓馬。その手をギュッと掴んだ隆は、肩を震わせて泣き始めた。

拓馬は名波と一花に向かって水飲み場から出ていくように合図を送ると、さっきまで名波と寄りかかっていた壁に、隆と並んでしゃがみこむ。


「まったく・・・泣くほど悔しいのかよ」

「だって・・・拓馬なら勝ち目ないじゃんか・・・」

「そう思ってるなら殴るなよな。超痛かったし」

「・・・ごめん」

「まぁいいよ。それより、名波が俺と付き合うって言ったのは嘘だからな? 間に受けんなよ?」

「・・・わかってる。でもなんでまた拓馬と付き合うなんて言い出したんだ?」

「最近市原とばっかり話してるからやきもち焼いたんだってよ」

「やきもち? はぁ・・・女心ってわかんね」


ようやく落ち着いてきた隆は、息を吐いて泣いて乱れていた呼吸を整えた。


「俺だってわかるかよ。とにかく、もっと彼女扱いしてほしいんだってさ」

「彼女扱いってなんだよ」

「それは知らん。名波に直接聞くんだな」

「はいよ。それよりも・・・殴って悪かったな」

「まったくだよ。超痛かったんだからなーってこれ二回目じゃね? 別に気にしてないって」

「それだけ悪かったと思ってるんだから謝らせろよ」

「いつも勉強とか見てもらってるんだからお互い様だろ。それでいいよ」

「そっか。俺拓馬と友達でよかったよ」

「俺だって隆と友達でよかったよ」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


隆を泣かせてみました。

隆ファンの皆さん。ごめんなさい。


次回もお楽しみに!

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