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噂の先生

「えー。なので、この数式をこちらの式に代入すると、このXの値が出てくるんですけど、ここのあたりまでは2年生でやったと思うんですけど合ってますか?」

「知ってまーす」


拓馬と名波のいるクラスの3組にも、例のオタク先生がやってきた。

その先生のことは隆からいろいろと聞いていた拓馬と名波であったが、さっき同じクラスの圭子から聞かされた情報によると、前の授業で隆が何かやらかしたのを一花がフォローするという事態が起きたらしい。すぐにでも聞きに行きたかったが、休み時間には限度があり、タイムオーバーのチャイムが鳴ってしまったので諦めたのだ。

一番最初の授業は、友好を深めるためとかなんとか言って、自己紹介や質問タイムなどで穏やかな授業で終わった。そのあとでの2回目の授業が今である。

拓馬は少しワクワクしながら教卓の上に置いてある金髪美少女のカメリアちゃんのフィギュアを見ていた。


「なぁ名波。隆って何したんだろうな?」

「さぁ? 隆のやることはわかんないもん」


授業中なのに暇になってしまった拓馬は隣の席の名波に話しかけたが、真面目ちゃんの名波ちゃんは黒板の内容をノートに写しながら拓馬に返事をした。


「・・・名波?」

「ん?」

「あれって、2年の復習だろ? 別にノートに書かなくても良くない?」

「・・・ハッ!」


言われて気がついたのか、名波は顔を上げて周りを見回した。

寝てる人。先生の話を聞きながら笑ってる人。先生とやり取りしてる人。ノートに何か書いている人。

色々な生徒はいるが、特に黒板の内容をノートに書き写している生徒は、名波を除くと誰も居ないようだった。

ぐるりと周りを見た名波は拓馬に言う。


「どうしてもっと早く教えてくれないのさっ」

「別に教えるようなことじゃないじゃん。もしかして名波って黒板の文字は隅から隅まで書き写すタイプじゃね?」

「それのなにがいけないのさー」

「やっぱりなー。前に隆に言われたんだけど、それやってる人って成績良くならないんだってさ」

「なんでっ!?」

「なんか余計なもんまで書くのが先生の仕事らしいから、それを見極められる人間が頭のいい生徒なんだとか」

「そうなんだ・・・今度隆に勉強教わろっと」


手をぎゅっと握り締めて決意した名波。


「それにしても何も起きないなー」


隆のクラスでは、隆が何かやらかしたということで、自分のクラスでもなにか起こるかと期待していたのだが、現実は残酷なもので何も起こる気配がなかった。

仕方がないので、自分の席から見える範囲での黒タイツ観察をすることにした。

と、その時。


「はい。じゃあこの答えを木下君。お願いできますか?」

「へっ? 俺っすか?」


まさかの変化球が拓馬に直撃した。

なんの脈絡も無しに、拓馬に回答権が回ってきたのであった。


「えーと、もう一回だけ問題読んでもらってもいいですか?」

「聞いてなかったんですねー。もう一回だけですよ?」

「いや、やっぱりいいです。それよりも質問いいですか?」

「えーと、関数A・・・ってよくないですけど、なんですか?」

「前のクラスで何かあったんですか?」


全く今の授業と関係無いことを聞く拓馬。

その質問に、少ししょんぼりとした様子でチョークを置く先生。


「さっきの授業ですか・・・あれは思い出すだけでも恐ろしい事件だったんですが、よろしいですか?」

「「「「よろしいです!」」」」


授業が中断することは、生徒達にとってマイナスにしかならないはずなのに、進んで中断する方向に走っていこうとするのは、教育現場での不思議ですね。


「あれは僕が教卓から離れたときでした。今思えば教卓を離れたことが間違いだったわけですが、生徒の声を聞くのも先生の仕事と思い、教室の真ん中ぐらいの生徒の元へと行きました。たった30秒ぐらいだったのですが、戻ってくると・・・」


妙に病弱そうな先生がそれ系の話をすると、変な臨場感も生まれるわけで、少しタメを作るだけで雰囲気が出てきました。


「なんと僕の愛しのカメリアちゃんが金色のいかついおっさんに変わっていたのです!」


先生の悲しそうな顔とは反対に、生徒たちはポカーンと口を開けて先生のことを見ていました。


「そして必死になってカメリアちゃんを呼んだのですが見つかりませんでした。しかし、クラス委員長さんがカメリアちゃんを救出してくれていたらしく、僕に渡してくれたのです。そしてあの金色のおっさんをどうにかしようと思いそちらを見たところ、その金色のおっさんの姿は無くなっていたのです」


拓馬はその話を聞きながら、笑いをこらえるのに必死だった。拓馬以外にも、事件のことを聞いて知っている生徒は皆笑いをこらえていた。名波も必死に笑いをこらえています。


「先生。もしかしてその金色のおっさんって、カメリアちゃんの怨念か何かだったんじゃないですか?」

「なんだって?」

「だから、先生がカメリアちゃんを置いて行ったから、怒っていた残留思念かなんかだったんじゃないでしょうか?」


ものすごい真顔で一番廊下側の女子生徒が発言した。それを見た拓馬は、一瞬『マジで言ってるのか?』と思ったが、真後ろの女子生徒がその女子生徒の背中の裾をつかんでプルプルと震えながら壁を向いているので、言っていることは冗談の延長なのだとわかった。


「まさか・・・本当なのかいっ! カメリアちゃん!」


ものすごい形相でカメリアちゃんに向かって話しかける先生。しかしカメリアちゃんはいつもの可愛らしいスマイルのまま微動だにしていなかった。

その様子を見た拓馬と名波を含めた生徒の半分以上が一斉に吹き出した。

この事件をきっかけに『カメリアちゃんは怒ると般若になる』という噂が流れましたとさ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


よく試験受かったな・・・


次回もお楽しみに!

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